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ある魔法使いのお話

冬!寒くて何もしたくない季節です。こんな日はコタツに入ってぬくぬくしていたいですね。しかし、残念ながら寒い事務所にいなきゃいけないんですね。夏同様に暖房を使いまくっていたらまた壊れてしまいました。おかげでここは装備の無い南極探検基地のように寒いです。

「しかたない。ここは倉庫にあったコタツでも出すか。」

その発言にみんなは頷くけれど誰も動こうとしない。この寒いのに廊下に出て暖房もない冷たい倉庫に行きたくは無いからね。

『仕方ない。僕が行くか。』

僕は席を立った。外に行くわけでもないのにダウンジャケットを着て廊下に出た。吐く息が白い。僕はコタツを出す為に倉庫へ向かった。倉庫内には色々なものが積まれている。それがどう言った物なのか全ては知らない。たまに意味不明なものが出てくる。

「あった。これだ。もう三年も使ってないけど使えるよね?」

僕はコタツを代車に乗っけて運び出した。エアコンを買って以来使っていないコタツはすごく重かった。昔はよく父さん達お世話になったらしい。

「ただいま。はい、コタツ取ってきたよ。」

セットしてつけてみる。どうやらまだ生きているようだ。唯、七海、雪がすぐにコタツに入った。ノワールはコタツの中で丸くなっている。時計を見るとそろそろお昼だ。

「そろそろお昼だけど何食べたい?」

「僕、寒いからおでんがいいな。」と七海が言った。

おでんと言う意見が出たのでおでんに決定。丁度ダウンジャケットをきているから買いに行かされるのは僕だろう。それを察して僕は外に出た。外は中よりもさらに冷たい。冷たい空気が体温を奪う。僕はおでんを買いにコンビニへ行く事にした。

『そういえば、コンビニでから揚げとかはいつでも売っているのにおでんだけは冬限定なんだろう?両方とも温かい物には変わりないのに・・・』

そんな疑問がでた。まあ、そんなことはどうでもいいんだけどね。そんなわけで最寄のコンビニに着いた。中に入ると外とは違いとても暖房が効いていて暖かい。僕はカウンターで一通りのおでんを買った。

『確かからしはあったから問題ないと。』

事務所に帰ると一人増えていた。きたのは協会の方だ。やっぱり寒いのかジャンバーを脱ごうとしない。僕はおでんを鍋に移し変えだしを入れてカセットコンロに掛けてテーブルに置いた。案の定協会の人までもが食事している。

「それで?何で協会の人がこちらに?」

僕は七海に聞いた。協会の人は食事に夢中で話を聞いてくれそうにない。そんなにお腹が空いているのか?

「ひぃらいほってひてふへたほ。」

「何言ってるかさっぱりわからん。というか口にものが入っている状態で喋るなお行儀悪い。」

七海に代わって説明してくれたのが唯だった。

「依頼持ってくれたの。今回も出張任務といってもまた月の魔法だけどね。」

なるほど。そのぐらい低レベルならクラストで十分と判断されたわけか。なんだか悲しいね。

「今回の場所はこの雪山です。別荘はこちらで手配しますのでよろしくお願いします。」

協会の人は資料を渡した。

「解りました。この依頼クラストがお引き受けいたします。」

引き受けないとエアコンの修理代がまずい。協会の人は再びおでんへと箸を伸ばした。そんなにお腹が空いているんだろうか?

そんなわけで任務に向かう為電車でユラリと揺られている。荷物は既に送って今は軽い手荷物だけである。

「着いた。」

既に周りには雪がある。

「とりあえず、今日は遊び倒していいみたいだから、別荘に行って荷物おいたら滑ろう。」

そんなわけで僕らは別荘へと急いだ。別荘内には既に協会の人が色々してくれたらしく既に荷物は各自の部屋に入り口にはスノーボードとスキーセット一式が置いてある。僕はスノーボードに挑戦することにした。

「俺と雪は別荘で待ってるよ。俺、寒いの苦手だし。」とノワールが言った。雪はノワールの相手をするそうだ。

「了解。それじゃあ僕らは滑って来るね。」

「唯一、転ぶなよ。」とノワールが言う。

「用心するよ。それじゃあ行ってきます。」

僕らは外に出た。ゲレンデには誰もおらず僕らの貸切だ。太陽に反射する雪がまぶしい。

「わーい。僕らの貸切だよ。」と七海がはしゃぐ。

スキーウェアーの完全装備で全く寒くない。これなら事務所よりましだ。

「スキーなんて久しぶりだね。地元じゃ温暖化の影響でほとんど降らないし。それじゃあまずは中級者コースでも滑る?いきなり上級じゃ無理だろうし。」

確かに運動の苦手な唯には上級者は難しい。僕も感覚を取り戻すのに少し練習したい。

「それじゃあリフトに行きましょう。そうだ唯一リフトまで競走しない?」

「え?」

「用意スタート。」

七海が勝手に始めてしまった。僕はスノボーに乗り七海を追う。ここなら唯もあの症状を起こす事もあるまい。ここには僕らしかいないのだから。

「お、なかなかやるね。でも僕を追い抜けるかな?」

僕は唯のことも気にしながら下へと降りて行く。しかし、気にしすぎたらしく足を滑らせ転等。その勢いでゴロゴロと転がっていく。漫画みたいに雪玉になっていく。

『め、目が回る。』

リフト乗り場に着いた時には僕はふらふらしていた。

「唯一君大丈夫?」

七海と唯が僕の肩を支えながらリフトに乗せた。

「珍しいね。唯一がこけるなんって。」と七海が言う。

「ちょっと今日の運勢を占ってみようか?来たれ星の加護、汝の道を示せ。」

唯の呪文と共に一枚のカードが出てきた。

「あ、スノーの逆位置。」

「そういう意味?」

「水難の相あり。しかも主に熱いもの。」

「でも今はものすごく冷たいよ。」

中級者コースに着いた。坂が先ほどよりも急になっている。唯がスキーセットを外して雪に突き刺した。

「唯は普通のスキーより魔術スキーのほうが好きだよね。」と七海が言う。魔術スキーとは召喚師や魔法使いなどが魔法を使ってスキーをするものだ。まあ、文字通りだから説明要らないよね。

「うん。来たれ 夜空を駆け抜ける白き翼よ。召喚。」

魔力量を調節してミニサイズの銀色の羽が唯の靴についた。

「それじゃあ、お先に。」

唯が滑りだす。魔法の力によってスキー板無しでも滑れるのだ。ちなみに中級者コースにはジャンプ台がある。唯はジャンプ台を利用して空中三回転を決めた。

「来たれ。氷結の精霊。大気を凍らせ壁をおりなせ。」

氷で出来たスノーボードが完成した。

「それじゃあ唯一僕も行くね。」

七海が滑り出す。雪に氷なのでかなり滑りが速い。ジャンプ台では空中で板を真ん中で割ってスキー板にした。

「七ちゃん格好いい。」と唯が褒めている。

『2人とも魔法すごいな。僕が魔法を使おうとすると暴発して大変な事になるからな・・・』

でも少しぐらいならと言うよこしまな考えが浮かんでしまう。まあ、そんなことしたら大変な事になるのは解っている。だからしない。

「唯一も降りておいでよ。」と言いながら七海は氷のスキー板を元のボードへと戻した。

「うん。今行くよ。」

そんな時地震が起きた。この展開はもうわかるだろう。雪崩発生だ。

「ヤバ!?」

僕は急いでボードに乗り坂を駆け下りた。

「唯、急いで。」

七海が唯を急かして下らせる。魔法で何とかしたいけど規模がでかい。詠唱に時間が掛かって無理だ。僕は唯たちに追いついた。

「唯一君、私に捕まって。」

僕は唯の手を掴んだ。

「銀月に映えし漆黒の闇よ 我 星野 唯の名のもとに命ずる。来たれ 漆黒の戦士。召喚!!」

召喚されたのはコウモリのような翼の生えた騎士。まるでアニメのヒーローのようだ。

「いって!」

唯の命令と共に行動を開始する。召喚獣は僕と唯を抱えて飛び上がった。七海はロットを出して空へと脱出。みんな無事だ。

「来たれ風精。その大いなる力を使い。西の災いをはぎ払え。」

雪崩は一瞬で吹き飛ばされる。

「すごい・・・・」

改めて七海の魔法のすごさを実感した。

「しかし、雪崩とはついてないね。」と唯が残念そうに言う。

僕らは仕方なく別荘へと戻った。

「ただいま・・・」

僕は立ち止まった。みんな立ち止まった。いたのは雪、ノワール。そして天魔の姉ちゃんだ。何故貴方は毎度毎度我々の行く先々でいるのですか?僕らに発信機でもつけているのか?と疑った。まあそんなことはないのだろうけど・・・多分。

「やあ、諸君。先ほどの雪崩は大丈夫だったかね?」

「もしかしてあの雪崩は天魔のお姉ちゃんの仕業じゃないですよね?」と唯が聞く。天魔の姉ちゃんはあっさりと答えた。

「私の仕業だよ。実はねさっき雪だるま作ったんだけどさ・・・魔法掛けたら失敗して爆発しちゃったの。」

だから雪崩が起きたのか。その前の地震は上の雪が降りてくる振動だった。

「まったく、僕よりも魔法使いの期間長いんですから失敗しないでくれよ。」と七海が言った。天魔の姉ちゃんはごめんねと舌を出して謝った。話は盛り上がって。クリスマスの話になった。

「今年はクリスマス一緒に祝えるといいね。」と天魔の姉ちゃんが言った。

「確かに去年は唯も七海も仕事でいなかったからね。ついでに天魔の姉ちゃんも。」

「あたしはついでかい!!」と天魔の姉ちゃんからの突っ込み。タイミングはばっちりだ。

「大丈夫だよ。今年、クリスマスは仕事入れないように協会に連絡しておいたから。」と唯が言った。さすが唯である。

「それじゃあ今年は盛大にパーティーしなくちゃな。」

みんなが頷いた。

「そうだ、みんな仕事は夜だよね。それじゃあ良い所教えてあげる。この近くに温泉があるの。ちゃんと管理されているんだけど無人なのよ。みんなで行かない?」

七海は頷いた。でも唯が

「でも、唯一君は・・・・」

一応男なんでね。ノワールだったらペットとして入れそうだけど・・・

「大丈夫。男女別れて入れるようになってるから一つの露天風呂を二つに区切っただけのものだけどね。」

そんなわけで僕らは温泉へ向かう事にした。

「ノワールは本当に寒がりだな。」

ノワールは僕の服の中で暖を取っている。僕も温かいからいいけどね。

「しょうがないだろ。俺夏毛だし。」

そうなのか。それは知らなかった。早く生え変われよ。

「着いたわ。ここよ。」

「それじゃあ早く入りましょう。」と七海がはしゃいでいた。

撮影の為バスタオルを使用しておりますが実際の入浴の際にはご使用をお控えください。作者からの注意だ。

「ノワール。お前入るときは人間の姿なんだな。」

「まあな。猫の姿ではいると足が届かなくてな。それ以前に水は苦手だ。」

なるほど。確かにあの足じゃあ溺れるな。でも自分の過去の姿で入られるのはちょっと変な気分だ。

「ふ~」

僕らは温泉に身を沈めた。外が寒いためいつもより身にしみた。はいはい、解ってますよ。女湯のほうでは実はこんな事があったんですね。

「それにしても気持ちいいね。」と唯が言った。

「そうだね。僕ら以外の人もいないからなんだか貸し切り気分だね。」と七海のコメント。

「この温泉は、美肌効果のある美人の湯って言われてるのよ。」と天魔の姉ちゃんが説明した。

「それじゃあ長く入ってお肌をつるつるにしないといけませんね。」と雪が言った。

周りにはまた雪がちらついてきた。

「あ、雪だ。なんか風流だね。」と唯が言った。確かに結構良い雰囲気だ。

「でも、雪のせいか少しお湯がぬるいね。魔法で暖めようか?」と天魔の姉ちゃんのコメント。

「いいけど、ちゃんと調節してよね。」

七海が心配そうな顔で言った。唯は相変わらず微笑んでいる。

「大丈夫よ。ちゃんと市販の魔法薬使うから。」

「なら安心だ。」と七海が胸をなでおろした。

天魔の姉ちゃんは魔法薬を取り出した。試験管のような筒に飴玉のようなものがいくつか入っていた。

「それじゃあ一つ入れればいいよね。我願う 烈火の炎よ 今ここに力を示せ。」

これによって魔法薬に温度上昇の魔法がかかる。魔法薬を入れようとしたその瞬間。

「ハックシュン」

天魔の姉ちゃんが寒さのせいか大きなくしゃみをした。言わなくとも結果はわかっているだろうが、そのはずみで魔法薬は大量にお湯の中に入っていった。

「みんな退避!!」

天魔の姉ちゃんが命令を出した。唯、七海、雪はまるで忍者のようにその場を離れた。しかし、男湯ではノワールがはしゃいでいるせいで声が聞こえない。

「!!!」

ノワールは何かを察したように猫のスタイルになって空を飛んだ。

「ノワール?」

僕が話しかけたまさにその時だ。お湯の温度が上昇し人の入っていられるレベルを優に超した。

「あっち!」

僕はその場で飛び上がった。しかし、追い討ちを掛けるように垣根かきねが倒壊し僕を再び熱い湯船へ押し戻した。その際気を失った。

目が覚めると別荘のベッドの上にいた。

「ここは・・・・別荘。」

時計を見ると僕は数時間気を失っていたようだ。

『唯が占った未来ってこれか。』

僕はため息をついた。さて、なんやかんやで夜になったわけなのだが・・・

七海が時計を見てみる。

「魔法の開始まで後5・4・3・2・1」

一面が真っ青に染まった。

「満月の始まりよ。」

しかし、時間になっても何か異変と呼べる異変は起こらなかった。ちらちら雪がまだ降り続いているだけだ。まあ、こういうこともあるのは知っていますけど・・・

「我 願う 何人なんびとも近づくことなかれ 月の女神の加護を」

人払いの結界をはった。これで目撃される事は無い。まあ、貸しきりの場所に結界を張らなくてもいいような気はしますが・・・保険はあるに越した事はないですからね。後は時間が過ぎるのを待つだけ・・・・

「風が出てきたな。吹雪にならなければいいけど」

しかし、そんな僕の心配をよそに風はさらに強くなり案の定、吹雪になった。僕が何か悪いことしたか?恨むよ神様。

「風が強いわね。みんな、一旦別荘に戻って様子を見ましょう。」

僕等は別荘に戻った。異常もなさそうだしいいだろう。

「それにしてもすごい吹雪ね。」

外は三メートル先も見えないくらいに吹雪いていた。

「それじゃあ、夜が終るまで昔話でもしてあげようか?」と天魔の姉ちゃん。

「昔話?」

七海と唯は首をかしげた。

「どんな?」

「君の両親の昔話。」

天魔の姉ちゃんは僕を指差した。

「僕の両親の?」

「そうよ。それじゃあ、始めるわよ。」

その事件は僕が十年前の事だ。この頃天魔の姉ちゃんは10代前半だった。当時の僕の両親は世界を回って色々な魔法の事件を解決していた。そして、今回はその一つだ。

「しかし、この寒い季節に敵さんもよくやるな。」真っ黒なダウンジャケットを着た短髪の男性が言った。見知らぬ山奥。真冬で雪が降っている。かなり寒い。

「しょうがないんじゃない。敵さんも必死なんだし。」と髪の一部が水色の女性が言う。

僕の両親はこの事件の犯人を追い詰めていた。そして、ようやくここまできたのだ。

「それにしても数が多すぎるでしょ!」

天魔の姉ちゃんが叫んだ。目の前には数百体ものホムンクルスがいた。ホムンクルスとは錬金術によって生成される擬似生命体(人工生命体とも言う)。現在ではホムンクルスを作る事はタブーとされている。ついでに作成方法は闇の中で誰も知らない。理由、命は人の手で簡単に作ってはいけないと言う事だ。

「これだけいるとタブーとかどうでもでもいい気がしてくるぜ」と男が言った。そろそろ名前を明かそうか。皆さんお察しのとおりこの人が僕の父 夜天 白夜。そしてその隣りの女性が僕の母で名前を夜天 昼夜。姉ちゃんの名前はいいよな。

「この、数を相手に私を追い詰められるかな?」

出てきたのは赤い髪の男だ。オッサンンというにふさわしい年齢だろう。正直いって吸っている葉巻よりもタバコのほうが似合いそうだ。

「キュルゼ。お前を追いかけてたらこんな冬山に来ちまったよ。寒いしよ。もうちょっといい場所無かったのか?」

ホムンクルスを大量生産した罪で協会から捕獲命令が出ていたのだ。まあ、最悪殺しても問題ないんだが・・・。

「ふん、たった三人でこの軍勢を倒せるか?」

お父さんは笑っていた。

「忘れたか?俺達は氷結の使途だぜ。」

氷結の使途とは両親の通り名だ。その名を知らないものはこちらの世界ではいないと言われるほど有名だった。

「その名声も今日で終わりだ!」

一斉にホムンクルスが襲い掛かってくる。しかし、大量生産されたホムンクルスなどの実力は両親の前では意味をなさない障害だ。

「一気に倒すぞ。高橋は魔法薬で魔法の威力上げを昼夜さんは俺と一緒に詠唱を。」

「フォーメーション凍る世界。古の契約に基づき我の前にその真の力を示せ。全てを凍える息吹を 凍る世界!!」

父さんと母さんは手を繋いで同じ詠唱をした。

「来たれ、宿木の加護北の息吹を崇めよ」

魔法薬を投げた。その瞬間、両親の前の景色全てが凍りついた。全てのホムンクルスは時が止まったように氷に閉じ込められていた。

「砕けろ!」

指を鳴らした瞬間に全ての氷が砕け散り小さな欠片へとなっていく。それは死に行く者が見せる魂の煌きのごとく。

「さすが史上最強この程度では準備運動にもならないか。」

キュルゼは少し笑った。

「どうした?お前の手下ってのはこんなものか?もっと楽しませろや。散々逃げ回ったんだからな。もっと面白いことが無いと退屈で寝ちまうぞ。」

なんか楽しそうなんですけど僕のお父さん。なんか、イメージと違っていた。もっと、紳士みたいな魔法使いを想像していたけれどなんだか七海と天魔の姉ちゃんを足してさらに何かかけたような感じだ。

「それじゃあ、これはどうだ!!」

なんとキュルゼは雪を錬金術で無機生命に変えてしまった。

「この雑魚どもは二人に任せた。俺はあんにゃろうをぶっとばしてくるぜ。」

返事を聞かずに突っ走っていった。

「相変わらずですね。白夜さん。」

「あの人に夜(休み)はありませんからね。」

2人とも笑っていた。

「ようやく、2人っきりになったな。会いたかったぜ。」

「その変な言い方をやめろ。読者が誤解する。」

父さんは突っ込みを入れた。たしかに。これはBL本ではないのでね。あ、BLの意味が解らない十八歳以上方は殴られるの覚悟でお姉さんに聞いてみよう。また、十八歳以下の子達は・・・

うむ、君達は生涯知らなくていいことだ。そして、よい子は意味がわからなくても決してお父さん・お母さんに尋ねてはいけない。読者と筆者の約束だ。いいね?

「そんなことはどうでもいい。俺の真の力見せてやるぜ。」

キュルゼはなにやらうめき声のような声をだして自分の中の何かを解放しようとしている。

「何やるか知らないが、俺にはかてねえぜ。」

「これでもか?!」

キュルゼは左腕がムチのようなものが何本も出ている状態で口が出っ歯になり全体が巨体になった。いや、これはバ○オハ○ード3の追○者の姿にそっくりじゃん。おい、大丈夫か?色々な意味でゲームが違うぞ。

「これは、ホムンクルス・・・・まさかお前ホムンクルスと融合を!?」

「そうだ。これで俺が最強の魔法使いだ。」

「バーカ。何度も言わせるなよ。最強は俺だ。だいたい顔からしてなってないぜ。ヒーローは格好良いってのが大前提だ。」

「ほざけ。」

左手のムチが何本も伸びてくる。

「秘術 氷鏡。」

鏡に撃った攻撃が鏡を通してキュルゼへと向かっていく。

「甘い!!!」

キュルゼは体を回転させてムチの向きを無理矢理変えた。ムチが横回転する。

「とう!」

まるでヒーローみたいな声を出して上へ飛んで回避した。さらに背中に装備していたらロケットランチャーで

「喰らいやがれ!」

ドッカーン。(おいおい、魔法使いなのに科学兵器使うんかい!!)凄まじい音を立てて攻撃した。

「きたないぞ!お前、仮にも最強の魔法使いだろ!魔法使いなら魔法で勝負しろ!!」とキュルゼが叫んでいる。幸い障壁で護っていた為重傷は避けれた。

「アハハハ。やーなこった。俺、本当は魔法苦手なんだよ。覚えてる魔法も二桁行かないからな。勉強苦手なんだよ。ついでに魔法中学校も中退してるしな。どうだ、驚いただろ。」

なんだか僕の中での父さんのイメージが徐々に音をたてて壊れ始めてる。

「な、なんじゃそりゃあ!!」とキュルゼ

「そ、そうなんですか?!」

下のほうで聞いていた天魔の姉ちゃんが目を丸くしている。

「オホホ。お恥ずかしながらそうなのよ。あの人本当に勉強嫌いだから。あ、ちなみに私は魔法小・中・高校主席卒業生よ。」

『この夫婦、色々な意味ですごい・・・』

「でも、強いから大丈夫。」

ロケットランチャーを捨てて今度は手榴弾を投げ始めた。ちなみに雪崩が起きないのはさっきの氷の魔法で大地ごと凍らせたから。

「あぶねえな。手榴弾の雨なんて聞いた事無いぞ!」とキュルゼが突っ込みつつ逃げる。

「ハッハハ。逃げやがれ。ボケっとしてると当たるぜ。」

「この、降りて戦いやがれ!」

「うっせえな。」

今度はマシンガン。あの?魔法使いですよね?父さん?

「しっかたねえなあ、そんなに五月蝿く魔法で戦えて言うなら戦ってやるよ。」

「ようやくまともに戦う気になったか。」

これじゃあどっちが悪者かわかんないや。

「それじゃあ、面白いもの見せてやるよ。左手に雷・左手に風。」

父さんの左手には青白い雷撃が走っており右手には風の球がある。

「この二つを上手く合成すると。」

ものすごい衝撃波と共に父さんのスタイルが変わった。父さんのあたりを雷撃と風が渦巻いている。ついでに髪が跳ね上がっている。

「これは俺のオリジナル技疾風迅雷。速さと威力は桁違いだぜ。」

風のように速く、雷撃のように鋭く。キュルゼの背後に回りこみ雷撃の一撃を放つ。

「ガァァアァ」

確かに桁違いのレベルだ。最強の魔法使いと名乗るにはふさわしいのかもしれない。でもなんか・・・ちょっとイメージが違った。ちなみに疾風迅雷は発動するだけで肉体強化・加速に加えて耐寒・耐熱・耐毒。さらには魔法・物理防御がつくというまさに最強技だ。あ、弱点は己の魔力が切れると効力もなくなること。

「馬鹿な。こんな基本魔法も無茶苦茶な奴に俺が負けるだと。」

「だからいってるじゃねか。基礎だの勉強だの俺はそういったことがでぇっきらいなんだよ。」

ポケットから手帳を出して読み始めた。

「幾重織り成す雷の光よその大いなる力を使いて迸れ千の稲妻!!」

広範囲攻撃系魔法だ。威力自体はさほど無いがそれでも敵を倒すのには十分な威力だった。

「ガァァァ」

「ほい、一丁上がり。」

父さんの勝利だ。

「やりましたね。白夜さん。」

母さんが近寄った。

「あう、こいつ気絶しちまったから担いでこの山下りるぜ。」

そんな時山から嫌な音がした。

「あ、ちとやりすぎたかも・・・」

「もう。やりすぎです。」

雪崩である。先の戦闘で凍りが砕け散ったのだ。まあ、あれだけ重火器を使ったのだから当たり前である。

「急げ!!」

三人は一気に山を駆け下りた。かっこいいけどなんか抜けている僕の父さんだ。

「ま、こんな感じだったかな。」

時は現在。

「もしかして、僕らが解決したホムンクルスの事件、父さん達の残した置みあげ?」

「多分そうだろうね。あの後アジトの処理を忘れちゃったから。」

そんなわけで夜が終った。今回は特に何も無かった。でも、通さんの昔話が聞けたのは嬉しかったかな。父さん、一体何所でどうなったのか。今は普通失踪で死亡扱いだけど・・・僕はどこかで生きている気がする。

「それにしても父さんて・・・。色々な意味ですごい人と言う事は理解しました。」

さて、一体何処で何をしているのやら。父さんが居なくなってからクラストは閑散としてますよ。おかげで利益は平行線。まったく、どうしたらそんなに依頼が来るのか教えて欲しいね。


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