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天魔



すっかり秋も深まった今日この頃。相変わらずクラストには依頼が来ないで僕らは退屈な日々を送っていた。

「はい、これでチェックメイト。」

「また俺の負け?!」

雪とノワールがチェスをやっている。先ほどから雪の圧勝だ。

「ノワールは攻撃ばっかり考えていて守ろうとしないんだもの。」と雪の指導だ。

「ねえ、依頼も無いからみんなでトランプやろう。」

みんなで出来る大富豪になった。

「出せる人いる?」

雪が一番強い死神の絵が書かれたジョーカーを出してきた。当然出せる(♠3は既に出ている。)人はおらず。みんなパスだ。

「はい、これであがり。」

最後に雪が出したカードは♥3だった。

「すごい。雪ちゃんこれで三回連続大富豪。」

「大富豪は勝ち続けないと都落ちですからね。」

そして、大貧民はノワールだ。雪と勝負して強いカードを出し過ぎるためだ。

「今度は運を使ったゲームにしないか?」とノワールが言い始めた。確かに、実力ゲームだと雪が強い。

「それじゃあ、ジジ抜きでもやるか」

僕の発言でジジ抜きに変更になった。

「わ~い。勝った。」

最初に勝ったのは唯だった。僕はノワールの残った一枚のカードを引いた。

「やった。俺も上がったぜ。」

ノワールは嬉しそうに言った。なんせ負け続けだったからね。今回は七海と僕の一騎打ちになった。

『右か、左か?どっちだ。』

「こっちだ。」

僕は外した。

「どうやらはずれみたいね。まあ、唯一は運無いからね。」と七海に言われてしまった。確かにあまり運のあるほうではない。なんてったって死神がついてますからね

「こっち。」

あっさり七海に当たりのカードを引かれてしまった。僕って本当に運ないな。僕はため息と共に肩を落とした。

「はいはい、落ち込まない。何時かいいことあるさ」と七海言われてしまう。僕は苦笑いで誤魔化した。天魔から電話が来た。

「もしもし?」

出たのは唯だ。

「了解しました。」

「唯、何だって?」

「天魔のお姉ちゃんが新しいゲームを開発したから遊びにおいでだって。それと、唯一君は必ず来る事だって。」

天魔の姉ちゃんは魔法使いの仕事以外にもゲーム開発の仕事もしている。これはおいでといっているが来いという命令である。

「僕に必ず来いと?」

「うん。」

僕は嫌な予感がした。しかし、行かないわけには行かない。僕らは身支度をして向かう事にした。

「私とノワールはお留守番してる。三人で言ってきて。」

雪とノワールに逃げられた。まあ、姉ちゃんが作るゲームも魔法薬同様であまり成功例がない。でも成功するとダイブレイクする。

僕らは天魔の姉ちゃんの所属するラボにやってきた。そこは天魔の姉ちゃん専用のゲーム研究所だ。

「高橋 魔美。ここだ。」

僕は呼び鈴を押した。画面に天魔の姉ちゃんの顔が映し出される。

「さ、入って。」

中に入るとしたがベルトコンベアのように動き出して僕らを運ぶ。自動ドアが開くとそこには天魔の姉ちゃんがいた。

「良く来てくれた。早速だが私の作ったゲームを体験して欲しい。今回はバーチャルゲームだよ。それじゃあみんなこの機械に入って。」

そこには卵のような機械があった。僕らはそれに入り座る。一人一つあった。

「それじゃあ、上にあるヘルメットをかぶって。」

メットをかぶるとドアが閉まった。

「みんな聞こえる?」

通信だ。僕らは返事をした。

「それじゃあ始めるよ。」

このゲームは自分が飛行機や戦車、ロボットのパイロットになって敵を倒すバーチャルゲーム。卵内部に設置されたモニターにフィールドが映し出せれる。操縦する為のハンドルはなくヘルメットについている機械がその人の脳波を読み取り思ったと通りに行動が出来る。つまり素人でも可能だ。

「中々面白そうじゃん。」

ステージは地上。敵は全てロボット。その数485体。

「結構数が多いな。」

「それじゃあ。3・2・1・GO!!」

戦闘内容を書いているとページが増えるばかりなので省きますがこのゲームは結構面白い。ゲーム終了。卵の扉が開いた。僕らはヘルメットを取った。

「ふ~う。結構疲れるね。」と七海が言う。書いてはいないが七海は僕や唯をはるかに超す数の敵を迎撃した。敵は全て人の乗っていない機械となっているので叫び声も悲鳴もないのでその点の安心もある。

「まあね、頭をフル回転させての戦闘だからね。当然だよ。」と上のモニタールームから降りてきた天魔の姉ちゃんが言った。

「でも、面白かったぜ。」

「それは良かった。でも、これは実用化するにはちょっと無理かもね。システムに経費がかかりすぎるもの。販売するとなったらもっと経費を落として消費者が買える値段にしないと・・・」と天魔の姉ちゃんが悩んでいた。

「でも、これだけ面白ければケームセンターで大人気になるよ。」と僕は言う。さすがに家庭でするのは無理だけどゲームセンターでやったら大儲けできそうだ。

「そうなんだけど。もう少し手を加えたほうがいいわ。ヘルメットが子供専用に設計してあるから。」

確かに、みんな頭の大きさ違うからね。その点は考えないとね。たしあに実用化にはもう少し時間が掛かりそうだ。

『しかし、今回は結構まともだったな。嫌な予感がしたんだけど僕の考えすぎか?』

僕は安堵のため息を心の中でした。しかし、僕の安堵は音を立てて壊れていった。

「ところで、唯一。」

「いやな予感がする・・・。」

いや、確実に何かある。そしてそれは断言できる。ろくでもないものの予感がする。

「で、今度は名に作ったの?」と七海が尋ねると天魔姉ちゃんは不敵に笑い

「ジャじゃジャーン」と子供みたいにうれしそうに出したのは赤と青の飴玉のようなものが入ったビンだった。

「これは?」と唯が尋ねる。前回は年齢詐称薬、これは体をその歳見合う分だけ幻術がかかってその歳に見える。この白玉を飲むと年齢が上がって、この黒玉を飲むと年齢が下がる。でも年齢は乱数決定されるからそれにその年齢になってもその形に成長するとは限らない。というものを作った。説明が長くて悪い。

「これは、性転換玉といってその名の通り、性別が変わるのだ。赤の球を飲めば女に青の球を飲めば男になるんだ。」

そんなもの造って大丈夫なの?色々と面倒な事態になりそうな・・・

「それで、今回君達に来てもらったのは・・・唯一君。」

天魔の姉ちゃんの目つきが変わった。この目つきは前にもあった。僕に魔法薬を飲ませた時と僕に自作のコスプレ衣装を着せたときだ。天魔の姉ちゃんは錬金術以外にも表世界の顔としてゲームを作っている。その関係上そういったものも販売の特典としてやる場合があるのです。

「・・・・」

僕は無言で後ずさりした。

「戒めの鎖よ奴を捕らえよ。」

僕は魔法で出来た鎖にがんじがらめにされた。こんな所で魔法なんて卑怯だよ。しかし、そんな願いは二秒で却下された。

「新しいコス(コスプレの略)の衣装できたからきていかない?」

顔は笑っているのに声に全く笑みがない。これは完全に命令だ。逆らったら魔法でどうなるか・・・

『魔法薬飲まされるよりもましか。』と考えておく事にした。そうでもしないと僕の身と心が持たない。僕は衣裳部屋に強制連行された。衣裳部屋には今まで僕に着せられた数々の衣装がある。どれにもあまりいい思い出はない。

「今回は上からの命令でね。今度発売したティンクベルってゲームのイベントがあるんだよ。そこでコスプレしてもらうと思ってね。あ、勿論クラスト全員ね。」

七海と唯が苦笑いした。僕はもう呆れ顔だ。

「あった。これ、これ。」

例によって天魔の姉ちゃんが用意したのはボックス。しかも二つ。

「この中にはみんなの名前が書いてあるボールがはいってるの。選ばれた人がこの衣装選択ボックスからボールを引いてそれを着てもらうからね。」

命令である。しかも拒否権無しときた。

「じゃあ最初は唯ちゃん引いて」

唯は少しドキドキしながらカードを引いた。

「えっとね、七ちゃんだ。」

「ぼ、僕?!」

驚き自分のことを指さす七海。天魔の姉ちゃんが衣装選びのカードが入ったボックスを七海に差し出した。

「さぁ、引いて。」

「主人公って書いてある。」

ほっと胸をなでおろす七海。確かにその気持わからなくもない。

「ちなみに主人公は男の子だからね。でも七海ならきっと似合うよ。」と天魔の姉ちゃんが言う。そういえばそんなゲームあったなと僕は思い出した。何でもファンタジー学園もので魔法の使えないダメダメの主人公が一生懸命勉強して卒業試験に合格するって奴。

「これが、主人公の服。」

青をベースとした制服だ。ブレザーで緑色のマントがついている。背中には大きな杖を背負っている。胸が膨らみすぎだが七海の男勝りな部分が出ていて結構格好良い。

「七ちゃん格好良い。」と唯が褒める。七海は杖を取り出してポーズを決めた。

次は七海が引いて誰を決める番だ。七海はボールを引いた。

「あ、唯だ。」

「え、私?」と驚く唯。

種目のボールを引いた。

「主人公の相棒の黒猫。」

「はいこれ。」

天魔の姉ちゃんがセット一式を渡す。案の定ご丁寧な事にネコ耳と尻尾まであるよ。

唯は顔を真っ赤にしていた。

『しかし、猫のコスプレまでするとは。天魔の姉ちゃんの上司って一体何を考えているんだろう。普通コスプレするキャラクターって人だろう。』

「でも、これってノワールにやらせたほうが。」と僕が言う。

「それは、無理ね。流石に、喋って空中浮遊する黒猫は変だから。それに、この猫、擬人化できるから唯ちゃんで丁度いいのよ。ちなみに、この魔法薬を作ったのもこれが目的だしね。七海には後でクスリを飲んでもらって男の子になってもらうから。」

「って!そんなの聞いてないよ!」と七海が言った。

「まあ、細かい事は気にせず。」

さてさて思考をまわしているうちに準備が出来たようです。その姿はこの世の男子を魅了するがごとくの可愛さ。その愛らしい声と容姿に他の男子がほれるのも無理はない。僕も一瞬胸がキュンとなんてしまった。てこれじゃあどっかの変体親父じゃん!と心中突っ込みを入れて理性を保った。ムチャクチャ恥ずかしそうにする唯。ここは秋葉原ですか?猫耳&尻尾なんて持ってる天魔の姉ちゃんが魔法使いなのか怪しくなってきた。

「すごい、唯とっても可愛い。」

七海が拍手しながら言った。

「これなら、そっち系でバイトしても儲かりそうだね。」と天魔の姉ちゃんが言う。

こらこら。唯を勝手にそっち系に引き込むんじゃない。売れるだろうがかなり不安ありだ。

「さてと、・・・というかここにいるのは唯一だけだから決定してるんだけどね。」と天魔の姉ちゃんが僕に衣装のボールを引かせる。

何だろう?一瞬寒気がした。

「えっと、ヒロインのライバルのメイドさん。ちょっとまってよ。僕男何にメイドなんて。」

「ありだよ、はいこれ。」

渡されたのは白と黒の支給服つまりはメイド服。嫌な予感は見事に的中してしまった。僕は渋々着替える事にした。

『あれ?これってどうやって着るんだ?』

複雑な順番で上手く着れない。そんな時後ろから唯の声がした。

「唯一君大丈夫?着られる?お姉さんがこれは着るのが難しいから手伝ってあげてって。」

「それじゃあお願い。」

服の上から着る事にした。まさかこの歳になって唯に服を着せられるなんて思いもよらなかった。なんだかとっても恥ずかしい。

「そういえばこのパッドをつけてくれだって。やっぱり女性キャラには胸が無いと困るからって。」と唯が僕にパッドを渡した。僕はつけるのには抵抗があったが唯の服を見ると確かにそのぐらいしないと不公平な気がして仕方なく着けた。僕は唯に手伝ってもらいメイド服を着た。

「どうせ、後で魔法薬を飲まされるにつけるの?」

「まあ、小さい可能性もあるから・・・。」と唯は少し顔を赤らめて言った。

「それと。このカツラをつけて」

僕はカツラを装着した。それを唯が紙を見ながら指定されているキャラの髪型にしていく。唯は楽しそうだった。別にコスプレに興味があるわけではないのだが髪型を決めたりするのが楽しいのだろう。

「あとは、メイクして。唯一君、ちょっと動かないでね。」

僕は唯の好きなようにやらせた。そして完成した。

「これで、よしっと。それじゃあみんなの所行こう。」

僕は唯に手を引っ張られた。メイド服って走りにくい。

「唯、その子誰?唯一はどうしたの?」

七海と天魔の姉ちゃんが驚いている。

「何言ってるの?このメイドさんが唯一君だよ。」

2人は目を丸くした。

「だって、唯一男だよ。その子どう見ても女の子じゃん。さては唯ちゃんに頼んで逃げたな。」

天魔の姉ちゃんが疑った。

「僕だよ。夜天 唯一。みんなわからないの?」

声を聞いて二人がさらに目を丸くした。

「本当に唯一なの?」

案の定まだ信じられないと言う顔をしながら七海が言った。僕は唯に言って鏡を出してもらう事にした。

「来たれ 現世を映す水鏡よ。」

現れた鏡を見て僕は驚いた。確かにそこには僕が映っているはずなのに映っていたのはなんとも可愛らしい女の子。いくらカツラをつけているとは言え栗色の髪があるとは言え・・・確かに2人が間違えるのも無理は無い。僕ですら鏡に映った自分が信じられないもの。

「まさかここまで女装が似合うとは・・・」

天魔の姉ちゃんがあごに手を当てて考えた。僕は嫌な予感のメーターの針が振り切れそうなぐらいなモノを感じた。

「他のコスプレも試してみましょう。」

『もう勘弁してくれ!!!』

そんな心の叫びが聞こえるわけも無く僕は三人にもてあそばれた。男なのに女装が似合うって・・・かなりショック。

「それじゃあ男じゃなきゃいいの?」

僕は一瞬青ざめた。しまった・・・天魔の姉ちゃんの手には先ほどの薬。僕は逃げだしそうとした。しかし、魔法であっさり逮捕。僕は無実です。

「観念しなさい。」

ゴックン、体が熱くなってきた。

「な、何だこれ。」

その場にうずくまった僕。体が熱くなっていきなり白い煙が出た。煙が消えたころ。

「え!」て、驚いてる唯

「やった、実験台成功!」と喜んでいる天魔の姉ちゃん。

「な、唯一?」と七海起き上がって近くにあった鏡を見てみると。

「これが、僕?」

顔が何か女っぽくっていうか色っぽくなってるし胸があるし(七海ほど大きくないけど)下に手を当ててみると。やっぱり無かった・・・。まて、待て。落ち着け。冷静になれ。取り乱すな。僕は一度深呼吸した。

「これで問題ないでしょ?女装じゃなくてただのコスプレになったんだから。」

いや、そういう問題じゃないと・・・。あぁ、もう・・・・

「僕、本当に女になっちゃった。」

天魔の姉ちゃんが青い玉を飲んでも赤い玉を先に飲んでしまったから効果が無いって。

「大丈夫、数時間で治るから。」

「それじゃあ唯一君。もとい、唯一ちゃんが女の間に色んなコスプレを試しましょう」

その声に七海が不適な笑みを見せた。

『もう、誰か助けてーーー』

そんな心の叫びが聞こえるわけも無く僕は三人にもてあそばれた。男なのに女装が似合うって・・・かなりショック。余談だがイベントは大成功だ。ノワールと雪のコスプレは想像しておいてくれ。僕は疲れた。




ハロウィン


魔法使いといったらやっぱり10月31日に行事ハロウィンをやらないとね。日本にはあまり馴染みが無いけれど海外だと学校では先生まで仮装して誰が一番の仮装かを競うんだそうです。

「は!」

僕はこの日は目覚しがなる前に目が覚めた。この日は七海も唯も大好きだ。事務所に行くと既に七海と唯がいた。

「遅いぞ。早くお菓子作っちゃおう。」と七海が急かす。

事務所内はハロウィン風に飾り付けしてある。七海は魔女の姿。黒いトンガリ帽子に真っ黒いマントをつけている。なんだかいつもの仕事スタイルと変わらないような気がする。唯は前回のコスプレが置きに召したのか黒猫のスタイルだ。なんかノワールとかぶってるんだけど・・・

「ノワールは何もしなくても黒猫だな。」と僕が言う。

「なんなら変身して吸血鬼にでもなってやろうか?」

「いや、別にいいよ。」

僕の姿になられるのはなんだかな。

「さて、僕は何を着ようかな・・・」

僕が衣装を選ぼうとする。しかし、僕の手を掴んで

「唯一の衣装は僕が選んであげるよ。」

「え?あ、そ、そんな?!」

魔法で捕獲されたあげくまた勝手に服を着せられた。

「って!これはなに!!!!?」

「なにって、ミニスカート風猫娘だよ。」

また女装かい!?唯は僕の姿を見て窒息しそうなぐらい笑っている。

「お願いだからもっと別なのにして。てか猫娘は妖怪でしょ?」

僕は涙目になりながら頼んだ。

「あ、そっか。それじゃあ・・・」

また、七海がニヤリと不敵な笑みを浮かべた。僕は逃げようとしたけれどこの服じゃ何所にもいけないし。

「ガヤア」

声にならない叫びが衣裳部屋に木霊した。

「こ、これは!!!」

「狐娘だよ。勿論ミニスカ」

だから女装は止めて。てか、また妖怪だし。雪まで笑いすぎて窒息しかけてる。

みんなが笑いすぎでもだえてる。そんなに笑わなくても。でもさすがにこれでは営業に支障が出るのでドラキュラに変更しました。まったくそんなに女装が似合うかな?僕、一応男なんだけど・・・・

『やっぱりお客さんこないな。』

クッキーにかぼちゃのパイ。色々なお菓子を作った。事務所のほうに戻るとちゃっかり天魔の姉ちゃんがいた。何時の間に?

「お邪魔してるよ。あ、今日はハッピーハロウィン。ちゃんとお菓子も持ってきたぞ。」と挨拶をした。手にはバスケットがありその中には飴玉が入っていた。ちなみに格好はケルベロス。中々イメージに合っている。

「ハッピーハロウィン。」

僕らも挨拶を返した。しばらくはお菓子とお茶で楽しい会話をした。しかし、天魔の姉ちゃんが新作を持ってきたといった瞬間に場の雰囲気が変わった。

「今度は?」

僕はもう呆れ半分で聞いた。

「ジャジャーン」

いまどき小学生でも言わない効果音をつけつつ見せたのはスケッチブックだ。

「これってスケッチブック?これのどこがすごいの?」と七海が聞く。

「これはただのスケッチブック。本命はこっちのインク。このインクで書いた絵は実体化するのよ。でも一つ弱点があるの。」

なんか姉ちゃんが作るものって毎回弱点がないか?

「絵の上手い人じゃないとダメなのよね。別に下手な人が書いても実体化しないわけじゃないけどそのままでるから・・・」

そんなわけで誰が一番、絵が上手いか実際に書いて見ることにした。お題は自画像。

45分後。みんな絵を完成させた。

「はい、これが自分の自画像。」と僕は自分の書いた絵をみんなにみした。割と上手く書いたつもりだ。

「うん、結構似てるね。でもこの眼帯の部分がもうちょっと工夫があったらよかったな。」と唯先生からのコメント。確かに眼帯は苦労した。上手く書けないのだ。2人目は雪だ。雪も上手く掛けていた。でも、もっと上手い人物がいた。

「これが僕の自画像。」

七海だ。かなり上手い。僕らは圧倒された。同様に唯の腕前も上々だ。しかし、一番上手かったのは意外な人物だった。

「ノワールすごい。てか、その肉球でどうやって鉛筆持ってるんだ?」

実は手ではなく尻尾で書いていたのだ。そんなわけでノワールに絵を書いてもらう事にした。しかし、これが悲劇の始まりだった。

「まずはハロウィンらしくジャコランタンでも書くかな。」

書いたジャコランタンは実体化した。ちゃんと色までついている。ついでにゴーストやコウモリなど色々出てきた。

「あ、動くんだ。」

唯がはしゃいでいる。確かにハロウィンらしい。しかし、なんだか様子がおかしいぞ。ジャコランタン達が暴れ出した。

「姉ちゃん、これは演出だよね。魔法のプログラムだよね。」

「ご、ごめん。自我設定(命令されて動くようにする)してなかったから暴走してる。」

最悪だ。だから毎回天魔の姉ちゃんの作るものはろくなものがないんだよ。

「あ、こら。暴れるな!」

僕らは逃げるジャコランタン達を追いかけて、てんてこまいだ。

「ぐへ」

飛んできたジャコランタンに頭を踏まれた。七海と唯が魔法で捕まえようとするけれどすばやくてなかなか捕まらない。

「そうだ。もしかしたらスケッチブックを破れば消えるかも。」

ノワールはスケッチブックに絵を書いたページを破った。どうやら姉ちゃんの言ったことは本当らしく消えた。

「姉ちゃん今度はまともなものにしてくれ。」

「アハハハ。ごめんよ。それでは、良い夜を。」

天魔の姉ちゃんは出て行った。


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