過去
「お、お爺様?!」
僕の目の前には昔写真で見たことのあるお爺様がいた。
「お前は・・・誰だ?」
事の始まりは数日前についた手紙から始まる。
「唯一。本家から手紙が届いてるよ。」と七海が僕に手紙を渡した。
「本家から?」
つまりは僕のお爺様の家からだ。でも、二年前にお爺様は死んでしまったから、今は別荘と言う形で残っている。
「僕に渡したい物があるから来て欲しいだって。みんなもおいでって書いてある。」
「唯一君の本家か。行くのは久しぶりだね。」と唯がウキウキして言った。
そんなわけで、僕らは本家へと向かった。田舎であるその場所は町並みを変えず昔のまま残っていた。家の門まで来た。門の前で女の人が出迎えてくれた。和風の家に合わないメイド姿の女性は言った。
「ようこそおいでくださいました。頭首唯一様。」
頭を下げる女の人に僕は驚いた。いや、別にメイド姿に驚いてないよ。お爺様が何時も言ってた。和風の家だからといって全て和風なわけではない。っと、おかげで色々苦労してたっけ?
「と、頭首って!?だって夜天家の頭首って父さんのはずじゃ?」
「はい、そうです。ですが、白夜様も昼夜様も行方知れずですので、代理という形で現在の頭首は唯一様になっております。」
とりあえず僕らは家へと上がった。
「おぉ、唯一。それに、唯ちゃんに七海ちゃんも。よく来てくれた。」
お婆様は御爺様が死んでもかなり元気だ。
「後ろにいるお方は死神の方々ですな。」
「はい。ご無沙汰しています。」
「ところで、僕に渡したいものってなに?」
「あぁ、実はこれなんじゃ。」
出てきたのはトランクだった。でも、鍵が掛かっていて開かない。それに、対魔法が掛かっていて魔法じゃ開けられない。
「これは?」
「爺さんがお前のために残していったものらしいじゃが生憎鍵が無くてな。鍵屋に頼んだのじゃが開けられないそうじゃ。まあ、物はここにあるし。問題なかろう。さて、せっかくきてくれたんじゃ今日は泊まっていきなさい。すぐに準備させるから。」
なんだか、成り行きとは言え泊まっていく事になってしまった。
「すまんな。せっかく私の手料理をご馳走してやろうと思ったのに。」
お婆様は料理を作っている最中でぎっくりごしになってしまった。そのため料理は僕達が作った。
「大丈夫ですよ。お婆様は休まれてください。」と唯が笑顔で言った。
「そうそう。料理は僕らに任せていれば安心さ。」と七海が言った。
「お婆様、味見をお願いできますか?」と唯が小皿に入れたスープを渡した。
「お、美味いではないか。」とお婆様は大喜びした。
その日の夜。僕は久しぶりに来た本家を散歩していた。
「ここに来るのは本当に久しぶりだな。お爺様が死んでからあまりきてなかったし・・・お盆の時は幽霊退治で忙しかったし。」
そんなことを言っていると躓いて池に落ちてしまった。
『あれ?なんでこの池、こんなに深いんだ?確か膝ぐらいまでしかなかったはずなのに・・・』
僕は深く沈んでいった。そこが見えない。真っ暗闇の水の中。
「ばあ!」
水面に顔を上げてみるとそこは何時もと変わらぬ屋敷。そして、障子を突き破ってくる一匹の狐。
「こら、妖狐!また、お前は悪戯をして!」
それを追いかける男の人。でも、その声には聞き覚えが合った。
「お、お爺様!?」
「ん?誰だお前?どうやってこの家に忍び込んだ?」
確かに声はお爺様だけど、姿が僕の知っているお爺様じゃない。
「ん?お前?白夜と昼夜の匂いがする。」と狐が喋った。
「なんじゃと?!まさか、あの2人の?いや、まだそのような歳ではないし・・・」
とりあえず僕は池からあがった。
「とりあえず事情を説明したいんでタオル貸してくれます?」
季節が春とは言え池に落ちれば寒い。
「さて、お前さんの名前から聞かせてもらおうかの。」
「僕の名前は夜天 唯一。」
「夜天?俺と同じ苗字だな。一体何処の者だい?」
「えっと・・・未来から来たんです。」
「み、未来だと?!面白い事を言うな。魔法で出来ないものの一つ。時を越える魔法を使ったとでも言うのか?」
確かに、時を越える魔法は死者を蘇らせると同じほど無理と言われどんな優れれた術者でも時間を超えたり魂を生成したりは出来ない。
「面白い。気に入った。今日はここに泊まっていくといい。明日になれば息子達も帰ってくる。」
「ところで、歳はおいくつですか?」
「俺か?俺は46だ。」
よ、46?!お爺様が死んだのが100だから今は54年前?そんな馬鹿な・・・・。まあ、周りをよく見れば色々と古いものが多いけど・・・
『これは夢なのかな?だったらいいんだけど・・・』
しかし、よく朝起きても事態は変わらなかった。
「そういえば唯一よ。」
「はい?」
「お前、魔法のことを聞いて何も驚かなかったな。なんでだ?」
「僕も魔法使いなんですよ。それに、僕にとって貴方はお爺様なんですよ。」
「お前さん本当に未来から来たのか?」
「どうやらそうみたいですね。」
「まあ、いいや。唯一は将棋できるか?」
「一応。」
「なら、やろう。もうすぐあいつも帰ってくるだろうし。」
それにしても、メイドさんが多いな。そこらじゅうにいる。
「ねえ、何でこんなにメイドさんが多いの?」
「メイド?あぁ、家政婦の事か。俺も嫁も家事が苦手でな。だから、彼女達にやってもらってるんだ。もしかしたらお前好みの奴もいるかもな。あの服は西洋に行ったときに見つけた服を採用したんだ。」
僕は苦笑いをするしかなかった。僕らは将棋を指しながら色々な事を話した。
「ほう、未来ではそんな事になっているのか?」
「うん。でも、両親は行方不明だから・・・」
「そうか。それにしても、俺も百まで生きれるか。嬉しいね。」
そういえば小さい頃お爺様が言ってた。わしは百まではどんなことがあっても死なないと。それって僕が言ったから?
「お前の親って、白夜と昼夜か?」
話し掛けてきたのは妖狐。いつのまにか僕の隣りにいた。
「うん。すごい魔法使いって有名なんだ。でも、今は行方知れずで・・・」
「そうか・・・。」
将棋はそろそろ終盤になっていた。どちらも攻め合いでどちらの手が早いかという勝負になっていた。
「これで、王手だ!」
「あ!」
僕は見落としていた。やられた。逃げ道がない。
「どうだ?逃げ道はあったか?」
「・・・ないですね。僕の負けです。」
「中々いい勝負だったぜ。お、そうだ。いい勝負をしてくれた礼だ。これをやるよ。もし、お前が未来に帰ったときに必要になるもんだ。未来に帰るまで開けるんじゃねえぞ。」と渡された小さな布袋。中身は見えない。僕はお礼を言ってポケットに入れた。そんな時ただいまと声が聞こえた。
「お?帰ってきたか?」
部屋に入ってきたのは僕と同じぐらいの年齢の男の子と女の子。
「あれ?めずらしいな。親父がこんなに攻め込まれるなんて。」と将棋板を見て言った男の子。
「この方は?」と女の子が聞いた。
「あぁ、こいつは夜天 唯一だ。未来からのお客さんだ。」
その言葉に2人は驚いた。なんだか男のこの方はすごく目を輝かせている。
「マジか?!なあ、どうやってこっちに来たんだ?未来ってどんな?」
「白夜!まずは自己紹介がさきだろ。」
「あぁ、俺の名前は夜天 白夜。将来世界最強の魔法使いになる男の名前だ憶えとけ。」
「私は、月雫 昼夜。白夜さんの彼女よ。よろしくね。」
この二人、僕の両親だ。そっか、母さんまだ結婚してないから苗字が違うんだ。
「ぼ、僕は・・・夜天 唯一です。一応、お二人の未来の息子です。」
その言葉に、二人とも驚いた。
「未来の息子?!」
「一応・・・。」
「なぁ、未来の俺ってどんな?」
「それが・・・」
とりあえず僕の知っている範囲での事を話した。
「ふ~ん。」
まあ、それなりには楽しめたようだった。
「未来か。俺も行ってみたいぜ。」と言う父さん。
「でも、未来を知っても私達で変えられますよ。」と母さんが言う。
「そうだな。未来に後悔って言うのもへんだけどあるとすればお前を置いて行方知れずになったことだな。」
「でも、いなくならないと未来が変わっちゃう。」
「大丈夫だろ?」
「もう、白夜さんは何時もそうなんだから。」
「そう、根拠無しに物事を言うのは俺の遺伝だからな」とお爺様も言った。
事件が起きたのはその日の午後の事だった。
「親父、協会から手紙が来てるぜ。なんでも大きな依頼らしい。」
「う~ん。お前達で行ってこい。」
「いいのか?」と父さんが驚きと期待の声で言った。
「あぁ、未来の息子に格好良い所を見せてやれ。」
「おう!」
そんなわけで、僕らは協会の依頼を受けてある廃ビルに向かった。
「ところで父さん今回の依頼って?」
「この廃ビルにでるノイズをどうにかして欲しいってはなしなんだか・・・」
「ただのノイズで大きな仕事ですか?」と僕の質問に母さんが答えた。
「ただのノイズじゃないから大きな仕事なの。」
「!!」
僕の目が急に痛み出した。
「お、おい大丈夫か?」と父さんが心配して聞いてくる。
「来たれ光の精霊 大いなる盾となれ!」と母さんが呪文を唱える。光の盾が出現した。そして、その盾に向かってくる無数の矢。すべての矢が弾かれる。まるで聖なるバリ○ミラーフォース。
「このノイズは人工的に起こされてるの。どこかに主犯格が居るはずなんだけど。」と母さんが言った。父さんは
「こういう時は前進あるのみだ。」
僕らは先へ進んだ。
「あ、そうだ。親父からこれ預かった。お前が未来に帰る前に渡しておけって。」
僕は手紙みたいなものを受け取った。
「未来についてから開けろって。」
「はい。」
『雪が居ないから死神化にはなれない。ここは父さん達にまかせよう。』
父さん達は次々とノイズの欠片を倒して行く。すごい、速い上に正確だった。母さんとすごく息があってる。
「ここが最終ステージだな。」
まるでゲーム感覚の父さん。父さんがドアを魔法で打ち破った。普通に開けてもいいんじゃないのかな?
「がぁぁぁ」
目の前にはソールイーターが2体。ホント、タブーとかどうでもいい気がしてきたよ。
「それじゃあ、見せてやるぜ。これが父の力だ!契約に従い我の声に答えよ。常しえの闇、永遠の氷河。全てを安らかなる棺へと誘え。凍りやがれ!」
全てが氷と闇に包まれる。そして、砕け散る。
「契約に従い我が声に答えよ。汝、来るべき所へ行くべし。即刻退去すべし!」
床に闇のゲートが出現し肉片が飲み込まれていく。
「す、すごい。」
「見たか。これが父親の力だ!」
「まだ、結婚はしてないですけどね。」と母さんが言った。
僕は頷いた。でも、なんだか、あのゲートに引っ張られている。そして、僕の足は地面から離れた。
「お、おい!」
「父さん!」
「白夜さん。早く呪文を止めて!」
「私は何もしてないわ!?」
「それじゃあ・・・」
僕の手は父さんの手をすり抜けて闇の中に引き込まれていった。
「は!」
「あ、唯一君起きた。」
唯の声がした。
「ようやく起きたか。この寝ねぼすけ!」
「いて!」
七海にデコピンされた。
「まったくじゃ。池に落ちて風引いて寝込むなんて。」とお婆様が言った。どうやら、そうらしい。
「あれ?唯一。手に何持ってるの?」
「え?」
それは父さんから貰った手紙だった。中を開けて見た。
『よう。これを見ているって事は無事に帰れたみたいだな。さて、未来のお前にじいさんからのプレゼントだ。宝箱を開ける呪文はお前さんの名前だ。』
「お婆様あの箱。くれませんか?」
「えぇが、開け方がわからんぞ。」
「解ったんですよ。」
僕は箱を受け取った。僕は鍵穴(形だけで別に鍵ではない)を手で覆い。名前を言った。
「夜天 唯一。」
カチャ。という音を立てて箱が開いた。
「こ、これって・・・」
中に入っていたのは魔術書だった。しかも、お爺様の字だ。
「これは、爺さんの魔術書。まさか、このようなところに。」
あれ?また手紙が入ってる。
「これは、矢天 唯一にあげる。馬鹿息子に必死に覚えさせた呪文もあるぜ!」
そんなわけで、僕はお爺様から魔術書を貰った。でも、こえが中々難しい。なるほど、父さんが世界最強の魔法使いになった理由がわかった気がする。そして、布袋にはお爺様の魔法書庫の鍵があった。