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小さな誓い


そこは、見たことも無い村だった。

「あれ?ここは・・・僕ら確か依頼を受けて・・・・」

事の始まりは今から3日ほど前になる。

「あ、いらっしゃいませ。ようこそクラストへ」

その日は珍しくお客さんが来た。よくみると依然依頼を受けた事のある近くの神社の宮司さんだった。

「どうされました?」

僕は彼を席に着かせた。唯が気を効かせてお茶を持って来てくれた。

「おっと、これはどうも。」

「それで、今日はどのようなご用件でこちらに?」

僕は再び質問をした。

「あぁ、実は一つ依頼をしたくてね。」

「依頼ですか?一体どんな?」

隣りに座った唯が聞いた。

「これなんだが・・・」

懐からなにやら人形を取り出した。ずいぶんといたんだ人形だった。人形といっても儀式などで使われるようなやつだ。

「これは・・・形代かたしろですね。」

「お、よく知っているね。そう、これは形代といって儀式なんかで人の身代わりや厄除けとしての身代わりに使われることが多い。基本的に木彫りの人形が多いんだがこれはどうやら布で出来ていてね。それも大分古い布なんだ。何度か修復を施した後があってね。巡り巡って私の所に来たというわけさ。」

僕らは頷いた。

「それで、この人形を本来祭るべき場所に祭って欲しいんだ。」

「祭るべき場所?」

少し前に帰ってきた七海が聞いた。

「うん。この人形はどうやら山神を静める為の人形らしい。何処の山かの特定も出来ているんだ・・・なにぶん神社の宝物庫の整理があっていかれないのだよ。そこで君達に依頼する。」

「解りました。この件、クラストがお引き受けいたします。」

最初はただ山に人形を返しに行くという単純な依頼だと思っていた。でもその判断が甘かった。

翌日、僕らは調べてもらっていた山へ向かう事にした。しかし、目的地はかなりの距離がある為二日掛けて行くことになった。

「こういう時に車が無いってのは不便だよね。」と七海がぼやく。

「しかたないでしょ。そんなに沢山依頼が無い上に低報酬なんだから。車買ったら税金で大変だし・・・」

すみませんね。なんせクラストは依頼が本当に少ない会社ですから・・・そんなわけで僕らは今電車に乗っています。ちなみに目的地は東北方面です。

「まあ、場所まで時間あるからゲームでもしてのんびり待ちましょう。」

何処から出したのか雪がUNOを手に持ていた。

「よし、それじゃあやるか。」

そしてしばらくして・・・

「えっと、合計で・・十六枚引きだね。」

ノワールにドローが重なってなんと十六枚も引かなければならにという事態に。

「ぎゃああ!」

ノワール撃沈。山札が一気に減った。そして、この後のノワールは大量の手札を処理できずに深く静かに沈んでいった。

「本当にノワールは実力ゲームになるとだめですね。」と雪がクスリと笑いながら言った。

「ん~どうやったら勝てるかな?」

結構真剣に悩んでいた。

まあ、1日目はこんな感じでした。そして、いよいよ目的地に着いた2日目の事です。

「この山だね。」

割と標高は高くなくでも道がくたびれていて整備もあまりされていない山だ。

「とりあえず、魔法で一気に駆け上がるとしますか。」

七海の提案にみんな賛成した。僕らは魔法を使って一気に山の上に上がった。今回は登山しに来たわけじゃないんでOKです。

「そろそろ、桜が咲く時季だね。」と山にあった桜の木を見て七海が言った。

「そういえばもうそんな時季だな。速く春になって暖かくなるとあの寒い事務所から解放されるのだけど・・・・」

そんなわけで僕らはほこらのある場所までやって来た。

「後はここに人形を置いて完了だね。」

僕が人形を置こうとしたその瞬間。突然体をねっとりとした膜が張り付いた感覚になた。

『これって、ノイズ!!』

あまりに突然で僕は目をつぶってしまった。そして、目を開けると

そこは、見たことも無い村だった。

「あれ?ここは・・・僕ら確か依頼を受けて・・・・」

七海があたりをキョロキョロしながら言った。そこは村だった。人気が無くまるでゴーストタウンだ。

「さっきのってマジックノイズだよね?」

唯が聞いてきた。僕らは頷いた。

「ここは一体何処なんだろう?ノイズって事は核を潰せば元に戻るんだろうけど・・・」

何処に核があるのかわからない。

「助けてくれ!!」

突然後ろから声が聞こえた。後ろを振り返ると少年がこちらに向かって走ってくる。その後ろには真っ黒な犬が・・・

「違う!あれは犬なんかじゃない。式神!我の上に在りし 月の女神よ 聖なる光の名のもとに 災いの闇を 切り裂け!」

七海が呪文を唱えて杖を振った。その瞬間、杖から光の粒が数発放たれた。その弾は見事に式神に当たった。

「大丈夫?」

少年は僕らの前で止まった。

「あ、貴方達は・・・」

「僕達は魔法使い。君はどうして追われていたのかな?」

七海が優しい声で聞いた。

「山神様の祟りだ。山神様が怒ってるんだ!」

ん?今一話が見えない。山神の祟り?

「一体それはどういうことだい?」

「ね、猫が喋って浮いてる!!」

うん、突っ込む所は正しい。

「まあ、それはいいとして、祟りってどういうこと?」

「お前さんたち旅の人かい?だったら早くこの村から出て行ったほうがいい。山神様に殺される前に。」

「話をきかせてくれ。それから考えるから。」とノワールが言った。

「わかった、話すけど、話したら山神様を静めてくれるか?」

「やってはみるよ。ね、社長?」

「あ、うん。」

「解った。話す。実は、この村はほんの二年ばかり前はのどかでいい村だった。でも、都市開発の奴らが僕らに秘密で山の裏を削ってたんだ。それに気がついた山神様が祟りを起こしてこの村に居る全ての人間を殺し始めたんだ。」

「ずいぶんと無茶苦茶な神様だね。」

僕の言葉に唯が説明した。

「山神って意外と気が短くて暴力的なのが多いんだ。だから山神の祭りを怠ってはいけないんだ。」

「へ~天魔の姉ちゃんみたいでね。」

七海が笑った。

「ハハハハ。確かに、遊びに付き合ってあげないと魔法で怒るって。」

「わかりました。この件クラストがお引き受けいたします。」

そんでもって僕らは山へやって来た。

「まさか、簡単な依頼を受けてノイズに会うなんて思わなかった。」

七海が歩きながら言った。

「まあ、そうぼやかないの。この仕事終ったら温泉に連れて行くから。」

「本当?!」

「うん、この仕事終ったらみんなで行くつもりだったから。」

「なら、さっさと終らせて帰ろう。核は山神だろうし。」

子供のように純粋でキラキラした目になる七海。唯もお仕事モード入りました。2人とも温泉目当てです。そんな2人の前に先ほど見たような式神が現れました。真っ黒な狼。それに、白い狼もいた。

「色の配分悪いね。」

雪が突っ込みを入れた。そして、狼達はお仕事モードの七海達によって式戻し(召喚前の状態に戻す事。基本的には紙に戻る。)

「次いくよ。」

しばらく山を登ると湖があった。しかし、水は足首ほどしかなく乾きかけていた。

「な?!地震?」

大地が揺れ水中から十八メートルほどの巨大な鬼の様な者が現れた。

「これって、まさか山神!」

「いかにも我は山神だ。」

かなり低い声で言った。遠雷のような声は一声で僕らを吹き飛ばしそうだった。

「こりゃあ倒し応えのありそうな・・・」

「我を倒すだよ。ふん、西洋の魔術師などに神が倒せるはずもなからろう。」

僕は言った。

「西洋魔術師だけじゃなかったらどうだ?」

「なに?」

「実は僕も神様が着いていてね。雪、ノワールいくよ。」

僕は眼帯を外した。真っ白な服に銀の髪。背には赤いコウモリのような羽。手には真っ黒い鎌が握られている。これが魂を狩る者の姿。

「その力!まさか貴様死神か!?」

「ようやく気付いたね。」

「さすがに死神相手では分が悪い。式神召喚」

って!式神と言いつつ鬼ばかりじゃないですか。あんたは妖怪召喚するんかい!!あんた一応は神だろが!!と突っ込み全開で戦闘ははじまった。

『召喚された鬼の数は千って所でしょうか?』

雪が心の中で話してきた。

「そんなところだろうね。でも、そんな数みんなには関係ないみたい。」

2人ともとっても楽しそう。だって2人ともこの頃暇を持て余していたから言いストレス発散になるんだもの。二人とも戦いたくてウズウズしている。別に普段こんな事は無いんですが・・・ここのところ依頼も無くて暇だったから・・・・

「なんだ、久々に呼ばれたと思ったら相手はまだ幼いガキじゃねえか。」

オ二達は僕らの実力を知らないからなんだか余裕の表情だ。

「悪いな。呼ばれた以上手加減はできない。死んでも恨むなよ。」

「お互いにね。」

僕はせめてものはなむけで笑顔をとった。そして、戦闘は始まった。

「最初から全力全開でいくよ!!来たれ風の精霊 集え雷の精よ 嵐となりで全てを打ち砕く力となれ 逆巻く嵐!!」

全てを粉砕する強力な魔法、魔力は有り余るほどあるのでこう言った殲滅せんめつ戦は大の得意。全てを破壊しても問題ないしね。

「すご!百体は喰われたか!!」

全てが粉砕された。七海は天空から火の玉を何発も打ち落としている。おかげであたりは火の海だ。結果張っといてよかった。張っておかなかったら今頃山火事ですよ。唯はこれでもかというぐらいに召喚し続けている。かなり怖いです・・・

「僕だって修行して強くなったんだ。父さんの呪文、幾重織り成す雷の光よその大いなる力を使いて迸れ千の稲妻!!」

広範囲攻撃系魔法だ。威力自体はさほど無いがそれでも敵を倒すのには十分な威力だった。十五分ほどでほぼ全ての鬼どもが片付いた。

「なあ・・・・」

鬼達も最初はいきがっていたが圧倒的な強さの前に言葉も無かった。

「これで解った?クラストは怒ると怖いんだよ。」

別に怒ってはいないが早くこの無料仕事(タダ働き)を終らせたいだけだ。

「後は、神様倒して終わりだよね?」

もう鬼達は無気力ですから。

「それじゃあ、来たれ風の精霊 集え雷の精よ 嵐となりで全てを打ち砕く力となれ 逆巻く嵐!!」

それに続けて七海が

「うたかたの 闇より来たりて 闇の精よ その強大なる力 龍の姿に変え 闇夜に現る 龍となれ 闇神龍」

七海が強力な呪文の唱えた。それに続くように唯が言う。

「うたはがの 雲より 来たりて 風の精霊よ その強大なる力 龍の姿に変え 嵐を起こせ魔界の嵐 風神龍」

真っ黒な龍と全身が嵐でできている風の龍が出現。さらに嵐がダイレクトヒット。神は崩れていった。そして、まばゆい光が放たれた。目を開けると。最初にいた山に戻っていた。

「お、どうやら戻れたみたいだね。」と僕は言った。

「それじゃあ、人形も置いたことだし温泉いこう。」

七海が楽しそうに言った。僕らはその足で温泉へと向かった。


「さすがに今回は疲れたね。」

男湯で僕とノワールは話していた。あたりに人はいなかった。丁度お昼時でみんなが食事しているからだろう。

「そうだな。魔法も死神の力も使ったし。でも、唯一は倒れなかったな。それだけ強くなってるってことか?」

「どうだろう?自分ではあまり自覚がないんだけど。ただ、父さんみたいなすごい魔法使いにはなりたいなって思ってる。あ、勿論魔法使いとしてね。」

父さんは魔法使いって言うよりも人生を魔法で楽しんでる感じだからね。

「そうか、まあ、夢のためにがんばってくれ。」

一方女湯では。

「ふう~いいお湯だね。」

「疲れが抜けていくね。」

三人ともくつろいでいた。

「それにしても、唯一君、強くなったね。」

「前はあんなに頼りない社長だったのに・・・」

七海と唯の会話に雪が説明を入れた。

「毎晩夜遅くまで資料室で唯一のお父さんに関する資料を熱心に読んでましたから。」

「へえ~。唯一勉強してるんだ。」

七海が関心を持った。今までの僕は魔法が使えないからって魔法の勉強をしていなかったからね。やっぱり父さんが勉強嫌いだと僕もそうなるのかな?でも憶えはいいみたい。これは母さん譲りかな?

「でも、なんだか、護ってあげていたのが遠くなるってちょっと切ないな。」

唯が呟いた。雪も頷いた。

「人は成長する者。それは、生きている限り永遠さ。だから、僕らも唯一に負けないくらい強くなろう。」

「うん」と唯達は強く頷いた。

ここに小さな誓いが生まれた。その誓いは小さくとも硬く決して破れる事の無い誓い。


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