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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

閑話 怪物グラウ・クレーエの誕生

作者: アマダス
掲載日:2026/04/30

グラウ・クレーエは、ミル=セナ王家の血を引く高貴な生まれだった。


何不自由ない暮らし。

誰もが頭を垂れ、彼の前にひざまずいた。


彼には二人の姉がいた。


姉たちは毎夜、宮殿で開かれる舞踏会へと出かけていく。


その光景が、永遠に続くものだと――

誰も疑っていなかった。


壊れるはずがない。

あり得るはずがない。


そう、思っていた。



グラウが八歳のときのことだ。

今から二十五年前。


ミル=セナに“変革”が起こった。


王家の縮小と、分家の廃絶。



もともと、商人たちの力が強い土地ではあった。


だが慣習として、

彼らは王家を立て、自らをその下に置いていた。


――それが、崩れた。


協商連合の巨大化。

魔導帆船の導入による海運の発展。


それは急速に商人たちの力を肥大化させ、

やがて彼らは判断した。


“王家は不要だ”と。


他国との体裁のため、

王家そのものは残された。


だが、それはもはや――

必要最小限の飾りに過ぎなかった。



当然、一族は反発した。


父も、母も、誰もが。


だが――


惰性に甘え、ただ消費するだけだった王家に、

商人たちへ対抗する力など、残されてはいなかった。



身分は剥奪された。


平民へと落とされる。


父は怒り、嘆き、そして恨んだ。

血の涙を流さんばかりに、周囲を罵り、当たり散らす。


母は笑った。

壊れたように、笑いながら泣いた。


姉たちは受け入れなかった。


「そんなはずはない」

「私は姫だ」


わずかに残った使用人に、なおも傲慢に振る舞う。


だが、残された財産が尽きるにつれ、

使用人たちは一人、また一人と去っていった。



家は変わった。


住む場所も、空気も、すべてが。


かつての王族の屋敷は、

今やあばら家にも劣る有様となり――


そこにいるのは、もはや人ではなかった。


亡者だ。


怒りに縋る父。

狂気に沈む母。

過去にしがみつく姉たち。


それを――


グラウは、ただ見ていた。



金が、地位が、立場が奪われていく。


強く頼もしかった父は、

矮小な男へと成り下がり。


優しかった母は、

もはや正気を保っていない。



そのすべてを見て――


グラウは、心の底から思った。



――なんて。


――なんて、面白いんだ。

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