◆ 第8話:氷禍の“縁”
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氷禍領域の“縁”に近づくにつれ、
空気が、目に見えて変わっていった。
息を吐くたび、白い霧になる。
「……寒っ」
俺が腕をこすると、修造が鼻で笑った。
「この程度で弱音か!
氷禍の“縁”は、まだ前菜だぜ!!」
「前菜でこの寒さは、胃もたれ確定だろ……」
セリアは端末を確認しながら淡々と言う。
「外気温、マイナス二十度。
ここから先は、人間の耐久領域を超える」
ライナが一歩前に出る。
「大丈夫だ。
“縁”まで来りゃ、ノエルが空間を開けてくれる」
その言葉と同時に、
空間がゆっくりと歪んだ。
空気の膜が押し広げられるように、
目の前に“壁のある通路”が形成される。
中は、かろうじて人が呼吸できる温度だった。
「……これが噂の空間構築ってやつか。
反則すぎるだろ、これ」
俺は思わず呟く。
通路の奥で、ノエルが手をかざしていた。
「ようこそ。
ここから先は、僕の“部屋”の中だよ」
ライナが肩をすくめる。
「久しぶりだな、ノエル。
拠点に顔出さねーから、凍死したのかと思ってたぜ」
「相変わらず言い方が雑だね、君は。
僕と修造しか、ここに長時間いられないんだよ?
修造に偵察が務まると思う?」
「おう! 寒さは発熱して乗り切れる!!」
「そういう問題じゃない」
ノエルはため息をついてから、真顔になる。
「冗談はここまで。
知らない間に増えた仲間も気になるけど
とりあえず、氷禍の観測結果を先に話すよ」
空間に、氷禍の映像が浮かび上がる。
不気味な“氷の人型”。
その周囲一帯の地形が、ゆっくりと凍結し、
街区単位で“死んだ空間”に変わっていく様子が映る。
「……範囲がえげつねえな」
修造が低く唸る。
ノエルは頷いた。
「氷禍は、雷禍、灼禍とは“タイプが違う”。
雷禍は一点突破型。速くて、個に対しての殺意が鋭い。
灼禍は殲滅型。圧倒的な破壊力で場を制圧する。
でも氷禍は――
環境ごと殺しに来る“支配型”だ」
「近づくだけで、殺されるってことかよ」
「正確には、“近づく前に詰む”」
ノエルが指を鳴らすと、
氷禍の凍結範囲が強調表示される。
「縁にいるだけで、体温が奪われる。
長時間いれば、融合者でも動けなくなる。
つまり――」
セリアが言葉を継ぐ。
「“戦う前に負ける構造”をしている、ということね」
「そういうこと」
ノエルは淡々と続ける。
「強さの方向が違うだけで、
他の七禍より“上”とか“下”とかじゃない。
ただ……攻め方を間違えると……一瞬で詰む」
美咲が息を呑む。
「……怖い……」
ライナは腕を組んだ。
「で、今の出力はどうだ?」
ノエルは少しだけ視線を伏せる。
「昨日より……氷禍の侵食範囲が広がっている。
縁の後退速度も、上がってる」
「……止まってるのは人間の時間だけ、か」
ライナの呟きに、場の空気が重くなる。
ノエルは続ける。
「もう一つ、気になる点がある」
空間に別のデータが浮かぶ。
「君達が氷禍の縁に入ってから
氷禍の行動パターンが、微妙に変わってきている気がする。
氷禍は、
こちらの人数や能力
僕の空間構築、
全部を“観測”して、最適化しようとしているように感じる」
修造が眉をひそめる。
「……学習してるってことか?」
「うん。
“壊すために、構造を理解している”」
セリアが小さく息を吐いた。
「破壊プログラム……
ただ暴れるだけじゃない、理性を持った災厄」
ライナは腕を組んだ。
「つまり——
様子見してたのは、向こうも同じってことだな」
ノエルは頷く。
「今の氷禍は“攻める準備段階”に入っている可能性80%」
セリアが眉を寄せる。
ライナは小さく舌打ちした。
「……面倒な兆候だな」
ノエルは視線を上げる。
「今のうちに出力チェックだけはしておいた方がいい。
本格戦闘に入る前に、
どの程度“触れたら終わり”なのかを把握しておくべきだと思うよ」
美咲が不安そうに聞く。
「……それって、安全なの……?」
ライナはニッと笑った。
「安全な七禍なんて、存在しねぇよ。
でもな、“知らずに踏む地雷”より
“踏むと爆発する地雷”ってわかってる方が、マシだ」
セリアが静かに頷く。
「……軽く、刺激するだけ。
あくまで“出力チェック”」
俺は喉を鳴らした。
「軽くって言葉が、一番信用できねぇんだけど……」
遠くで、氷禍の放つ凍気が揺らいだ。
この時、誰も知らなかった。
この“様子見”が、
想定よりもずっと深いところまで踏み込むことになるなんて。
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