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アウト・オブ・スクリプト ―世界の想定外―  作者: ぱんちゃん
二章 氷禍編
13/17

◆ 第12話:世界の想定外(アウト•オブ•スクリプト)

氷禍の猛攻に晒される戦場は、

もはや“戦場”というより“処刑場”だった。


修造、倍返死に続き、

前線の圧が消えた穴を、ライナひとりで塞いでいる。


「……っ、まだだ……!」


氷禍の刃が、ライナの肩を掠める。

血が凍り、動きが一瞬鈍る。


それでもライナは、退かない。


「絵音……私達、みんなに生かされてる……」

美咲が静かに呟く。


美咲と絵音は、ただただ立ち尽くしていた。


――何も、できていない。


美咲は、自分の手を見る。

治癒の光はある。

だが、瞬殺されるこの戦場では、

“戦線離脱=死”。


浅い傷を治そうにも、前線に近づいたら

かえって足手纏いになる。



絵音は、必死に氷禍領域に対抗すべく

暖をとれるものを生成していた。


だが、氷禍の圧倒的な凍気の前では、

現実に存在する“道具”など、

大して意味を持たない。


「……私たち、足手まとい……?」


美咲の声が、かすれる。


「……違う……と思いたい……」


絵音が、歯を食いしばった。


「……僕達だってオルタリンクの一員だ。

団長が役に立つと思ったから、今この場所にいる。

“意味のない能力”なんて、ない!……はず」


その時、

氷禍の一撃が、ライナの足元の地面を凍り砕いた。


「……っ、足場が……!」


ライナの体勢が、わずかに崩れる。


――その“わずかな隙”が、死に直結する戦場。


「ライナさんっ!?」


美咲の身体が、勝手に動いた。


「絵音……っ、お願い……!」


「……わかった」

絵音は、空中に筆を走らせる。


現実に存在するものだけ。

だが、今この瞬間に

確実に“必要なもの”。


――簡易発熱装置。


空気を震わせるように、

いくつもの発熱器が即席で具現化され、

ライナの周囲の地面に突き立てられる。


凍結した地面が、わずかだが“緩む”。


その瞬間。


美咲の治癒の光が、

砕けた地面の構造そのものを“修復”する。


氷に侵される前の形へ、

無理やり“戻す”。


ライナの足元に、

一瞬だけ“踏み込める地形”が生まれた。


「……美咲、絵音。これは嬉しいほうの誤算だな」


ライナは、その一瞬を逃さなかった。


踏み込み、斬る。


氷禍の装甲に、再び亀裂が走る。


「……やった……?」


美咲の声が、震える。


ほんの一瞬。

ほんの数秒。


だが確かに、

“戦場を動かした”のは、美咲と絵音だった。


「……無駄じゃなかった……」




その背後で。


蓮と透は、必死に戦場を駆けていた。


「……くそっ、どこだよ……マテリアル……!」


透は、姿を消しながらも、

氷禍の“広域攻撃”は、無差別の範囲攻撃のため、被弾する可能性があった。


氷の刃が、頬を掠める。


「……っ、狙われないってだけで……全然安全じゃないっ……!」



一方の蓮は、前に出られずにいた。


――怖い。


自分が“当たらない”のは、

必然なのか、偶然なのか。


仮に"ただの人間"が、被弾したとしたら

その先に待ってる未来は、確実に【死】


「……っ、俺は透と違って氷禍に認識されるし…前に出たいのに……足が動かない…」


その時、

氷禍の広域攻撃が、

蓮の“いたはずの場所”を貫いた。


――だが、当たっていない。


また、ズレた。


蓮は、自分の足元を見る。


「……違う」


胸の奥で、あの言葉が微かに響く。


――《世界の想定外アウト・オブ・スクリプト》――


「……俺の動いた“軌道”だけ、

 世界が……ズレてる……?」


理解が、繋がる。


偶然じゃない。

“当たらない”という結果が、

必然的に“選ばれている”。


「……試す価値はある」


蓮は、覚悟を決めて前に出た。


透が、蓮の動きに気づく。

「ちょ、蓮っ‼︎無茶しすぎ――」


――《世界の想定外アウト・オブ・スクリプト》――


透が声を掛けている、まさにその瞬間。

蓮は確実に範囲攻撃を喰らっていたはずだった。

だが、無傷で前へ前へ進む、蓮。


「透!心配かけてわりぃ!!

 でも、試したいことがある!!」


「意味わかんないって。

 なんで無傷でいられてるんだよ…」

透は、呆然としながらつぶやいた。


「俺は避けなかった。

 一歩も、動かなかったんだ。

 なのに当たらなかった。

 これは偶然なんかじゃない…


  ……"行ける"‼︎ 」

 

蓮は確信を持ち、再び走り出した。


氷禍の範囲攻撃が、再び繰り出される。

真正面から突っ込む、蓮。


――《世界の想定外アウト・オブ・スクリプト》――


蓮には一切当たらず、

後方の地面に当たって、砕ける氷の刃達。


その瞬間、


「!?……痛ってぇえ」


砕け散った後の、

氷の刃の破片が、蓮に刺さっていた。


「なんでだ!?

 なんちゃらスクリプトは??

 いや、聞こえなかった…。

 確実に発動していない……」


蓮は死ぬかもしれない恐怖で、

分泌されまくっているアドレナリンごと

ひたすらに、脳を回転させた。


「無条件ではないってことか…


じゃあ、違いはなんだ。

発動する時と、しない時の差は――


即死級のダメージではなかったから?

あくまで偶然刺さっただけで、敵意がなかったからか?

それとも…クールタイムみたいなのがあるのか。」


蓮は、その後も検証しながら、

ただひたすら、走る。

マテリアルを探しながら、

自分の可能性も探していた。


「なんとなく読めたぞ…世界の想定外っ!!

 俺が間違えてなければ…

俺の“当たり判定”だけ消えてる。


だいたい発動してから、2秒間はダメージを受けていない。


そして、再び世界の想定外が発動するまで

約5秒の、クールタイムが必要ってとこか…


無敵時間の2秒を加味したら、

3秒間は無防備な状態ってところだな…


にしても、痛ってえええ‼︎

さっきから、カスってるだけでコレは、

直撃なんかしようもんなら、即お陀仏コース」



透が範囲攻撃を掻い潜り、蓮に追いつく。


「蓮っ‼︎君、さっきから無茶が過ぎる!

 生きてるのが不思議なくらいだよ。」


「透!?

お前こそ…喰らったら終わりなのに

よくこんな、深くまで上げてきたな」


そんな会話をした時、

2人が同時に気づき、動きが止まる。


氷禍の凍結範囲の“歪み”。

確かな、エリアの"違和感"。


「……あった」


二人の視線が、同じ一点に重なる。


氷禍の胸部と同じ光を放つ

わずかに“凍りの質が違う”場所。


――マテリアル。


「……見つけた」



その瞬間。


氷禍の視線が、

前線のライナへと“最適化”される。


――死の最短距離の完成ーー

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