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『悪役令嬢に仕立てた結果、王都が滅んだ件』 ― 追放された令嬢は北方で花開く ―  作者: ゆう
第四章:揺らぐ王国と目覚める意志

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第45話 ゼノの宣言

第45話 ゼノの宣言


 翌朝。

 グレンヴィル城の中庭には多くの騎士と文官、そして村の代表たちが集められていた。


 昨夜の刺客襲撃は既に噂になり、

「何者かがエレノアを狙った」という情報だけが先に広まっていた。


 人々は、不安を押し殺した表情でざわついている。


「まさか……本当に魔術師団が……?」


「エレノア様が狙われたと聞いたぞ」


「辺境が戦場になるのか……?」


 張りつめた空気が満ちたその中心へ、

ゼノとエレノアが並んで姿を現した。


 ゼノの顔は静かだが、

その気配は昨夜よりもずっと鋭い。


 エレノアは、刺客の件で眠れぬ夜を過ごしたが、

その表情には一切の弱さを見せなかった。


(……わたくしが動揺したところで、誰の助けにもなりませんわ)


 ただまっすぐ前を見つめる。



 ゼノが一歩進み、全員を見回した。


「昨夜、魔術師団所属の暗殺部隊がこの城に侵入した」


 ざわめきが一気に広がる。


「狙われたのは――グレンヴィルではない」


 その一瞬、皆の視線がエレノアへ向いた。


「狙われたのは、エレノアだ」


「……!」


 あまりにも明確な宣言。


 エレノアは思わず息をのんだ。


(ゼノ様……公の場で、そこまで……)


 騎士たちは怒りに満ち、

民たちは恐れと同時に強い保護の意志を見せた。


「そんな……エレノア様を……!」


「許せん……!」


「王都はそこまで堕ちたのか……?」


 エレノアは唇を固く結んだ。


(わたくしの存在が、ここまで領に重くのしかかるのなら……

本当に、ここにいてよいのでしょうか)


 その迷いが胸をかすめた時――


 ゼノがゆっくりと振り返り、

エレノアの手を取った。


 


 ――え?


 エレノアは瞬きをした。


 手を取られるなど、

ふたりの関係ではほとんどなかったことだ。


「ゼ、ゼノ様……?」


「よく聞け」


 彼は、皆の前では決して見せないほど鋭い瞳で周囲を見渡した。



「エレノアは、俺が守る」


 


 その一言で、空気が凍るほど静まり返った。


 まるで戦場で指揮官が軍を鼓舞したように

強く、迷いのない断言だった。


 騎士たちも民も息を呑む。


 その瞬間、

エレノアの胸の奥で何かが大きく跳ねた。


(……皆の前で……。

ゼノ様が……これほどはっきり……)


 頬が熱くなる。

視線を落としたいのに、ゼノが手を離さない。



「昨夜の刺客は、魔術師団の上層によるものだ。

王都の腐敗は極限に達している」


 ゼノの声は低く、しかし人々の心に響く強さがあった。


「俺は、この地を守るためなら王都を敵に回す覚悟がある!」


 叫びではなく、誓いだった。


「エレノアを奪いに来るなら――

王都だろうと、魔術師団だろうと、すべて斬り伏せる!」


 


 そのあまりの強さに、

騎士たちが膝をつき、拳を胸に当てた。


「ゼノ様に従う!」


「エレノア様を守り抜く!」


「王都の腐敗に、このグレンヴィルは屈しない!」


 民たちさえも声を上げる。


「エレノア様は……希望だ!」


「あなたがいてくれれば、どんな敵とも戦えます!」


 その言葉に、エレノアの視界がにじんだ。


(……わたくしが……希望……?)


 ただ追放され、逃げ込んだはずの地で――

こんなにも多くの人に求められている。



 だが、ゼノの宣言はまだ終わらない。


「エレノア」


 ゼノが、彼女だけに向ける柔らかな声で囁く。


「お前が望む限り……

俺は一生、お前の味方だ」


「……っ!」


 その言葉に、膝が少し震えた。


(ゼノ様……皆の前で……そんな……)


 胸が熱く、苦しく、そして愛おしい。



 集まった人々は、

ゼノとエレノアを中心に、

まるで“新しい国の核”を見ているようだった。


 その中心で、

エレノアは暖かい手の感触を感じ続けていた。


(わたくしは……ひとりではありませんわね)


(この地が、わたくしを支えてくれる……

そして――ゼノ様が)


 


 涙に似た熱を胸の奥に閉じ込め、

エレノアはゆっくりと顔を上げた。


「皆さま……

必ず、この地を守り抜きますわ」


 その声は決して揺れていなかった。



 こうして、

グレンヴィルは王都に対して正式に姿勢を固めた。


“エレノアとゼノを中心とする、新たな共同体として立つ” という姿勢を。


 そして人々は知ることになる。


 この日を境に――

王国の歴史が、大きく動き始めたことを。



次話


第46話「王都からの最後通告」


皆さま、第45話までお読みいただきまして……本当にありがとうございます。


 わたくし、エレノア・フォン・アウグストは、

本章にてゼノ様が“皆の前で立場を明確にしてくださった”という、

とても大きな転機を迎えました。


 あの場でのゼノ様は……

ふだんの冷静さとは違い、

まるで冬を押し返す炎のような迫力がありましたわね。


 正直に申し上げますと――

わたくし、少しだけ、胸が苦しくなりました。


 それは恐れではなく……

ええ、もっと別の……言葉にしづらい感情でしたわ。


(……まあ、ゼノ様が公の場であれほど宣言なさるとは思いませんでしたけれど)


 ともあれ。


 わたくしは今後、王都との対立の中心に立つこととなります。

その中で、どれほど揺れようとも、

自分の誇りだけは失わぬよう努めてまいりますわ。



そして少しだけ……他作品のご紹介を。


 噂によれば、

わたくしやエリザベート様のような令嬢たちが活躍する世界とは別に、

**“異世界ダイナリー”**という物語があるそうでして。


 過労死した男性が異世界へ転生し、

前世で読んだ異世界作品の知識を武器に世界を変えていく……

という、とても興味深いお話だとか。


 わたくし自身は、異世界に転生する予定はございませんけれど、

あの方――ユウ様、と仰いましたか?


 彼のように

「過去の経験を武器に、未来を切り拓く」

その姿勢は、わたくしとしても学ぶところが多いと感じております。


 もしお時間がございましたら、

わたくしの物語とあわせて、そちらも覗いてみてくださいませ。


 どちらも、“沈まぬ誇りを持つ主人公”が描かれておりますので……

きっと楽しんでいただけるかと存じますわ。


最後に


 次回、王都はとうとう“最後通告”を突きつけてまいります。

わたくしとゼノ様が選ぶ道は、決して容易ではありません。


 けれど――

誰かの悪意に押し流される人生を、もう選ぶつもりはございません。


 どうか、この先も見守っていただけましたら嬉しく思います。


 それでは、また次のお話でお会いしましょうね。

 ごきげんよう。

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