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『悪役令嬢に仕立てた結果、王都が滅んだ件』 ― 追放された令嬢は北方で花開く ―  作者: ゆう
第二章:王都の影

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第11話 王都の影――沈黙の令嬢と裏切りの証

 国境で見つけた影は、

 外敵ではなく、王都の内から伸びた手であった。


 沈黙の令嬢はその意図を読み解き、

 見えない敵を“裏切り”として認識する。


 これはただの不穏ではない。

 王権の歪みが、辺境へと形を成して迫り始めた証である。

第11話 王都の影――沈黙の令嬢と裏切りの証


グレンヴィル城に戻ったのは、日が落ちきる直前だった。


 偵察隊の面々は疲労を滲ませながらも、誰一人として気を緩めてはいなかった。

 森で見た“あの影”が、全員の脳裏に焼きついている。


 ゼノはすぐにロイドを呼び、作戦室を封鎖させた。


「今からの話は、この部屋の外には一切漏らすな」


 低く、鋭い声。


 扉が閉まり、重たい沈黙が落ちた。


 テーブルの上には、回収した雪のサンプル、魔力残滓の痕跡、

 そして――エレノアの視線が最も強く向けられている小さな布片。


 森で拾った、あの黒ローブの一部。


「……やはり、間違いありません」


 エレノアが静かに言った。


 布の内側に縫い込まれた、淡く光る紋章。

 それは王都の魔術師団にのみ許された印だった。


「王都の正規紋章だな」


 ロイドが歯噛みする。


「では、あの術師は確実に“内部の人間”……?」


「ええ。ただし――」


 エレノアは視線を落とし、指で布をなぞった。


「この縫製、魔術加工の精度が低い。

 王都の第一魔術団レベルではありませんわ」


「下位団か?」


「おそらく、第二か第三……

 あるいは、王命を偽装した私的行動の可能性も」


 ゼノの表情が険しくなる。


「王都が正式に動いたのか、それとも一部の貴族の暴走か……

 どちらにせよ、面倒な話だな」


「ですが――」


 エレノアは視線を上げた。


「今回の件で、ひとつだけ確実になったことがあります」


「何だ?」


「王都は、“辺境を制御下に置きたい”と考えているということ。

 それも、表向きの命令ではなく……裏から」


 ロイドの拳がきしむ。


「……裏切りだな」


「ええ」


 その言葉を、エレノアは否定しなかった。


「しかもこれは、“試験的介入”です。

 どこまで抵抗するかを見ている段階」


 ゼノは黙って腕を組んだ。


「でなければ、氷狼王のような“段階的威圧”は行わない」


「その通りです」


 エレノアはさらに書き留めた紙を差し出した。


「こちらは森で検出された魔力波長の推移です。

 王都の訓練記録と照合すれば、使用者の個性まで特定できる可能性があります」


「……そこまで読めるのか」


「王太子殿下の失政処理をしていた頃、

 魔術師団の書類にも目を通す立場でしたので」


 淡々とした口調。

 けれど、その内容はあまりにも重い。


 ロイドが小さく呟く。


「この方を追放した王都は……本当に正気か?」


 ゼノは答えなかった。

 ただ静かに、布片を見つめていた。



 その夜。


 エレノアの部屋に、一通の書簡が届けられた。


 封に刻まれた紋章は――王家直系。


「……来ましたわね」


 彼女は静かに開封する。


 そこに書かれていたのは、簡潔な命令文。



〈王都より正式に通達する

 元公爵令嬢エレノア・フォン・アウグストは

 国の調査に協力する義務を負う〉



「協力……ですって……?」


 侍女が息を呑む。


「実質的な“召喚”ですわね」


 エレノアは静かに紙を折った。


 ゼノの言葉が脳裏をよぎる。


“お前の誇りは、ここでは武器になる”


「調査とは名ばかり……

 真意は、牽制か、あるいは拘束」


 窓の外では、冷たい風が吹き抜けている。


 彼女は目を伏せた。


(王都は、まだ私を“道具”として見ているのですね)


 だがもう、かつてのエレノアではなかった。


 守るべきは、王家ではない。

 この地で信じてくれた者たちだ。


 彼女はゆっくりとペンを取る。


 そして、返書を書いた。



〈招集の件、承知いたしました。

 しかし私の身は現在、グレンヴィル領に預けられております。

 よって、対応は辺境伯令息ゼノ・フォン・グレンヴィルを通して行われたく存じます〉



 それは服従ではなく、明確な線引き。


 王都に依存しないという、静かな宣言だった。


 そして――


 沈黙の令嬢は、

 初めて王家に対して“拒否の意思”を示した。





次は


第12話


「魔術師団の暗号文書」

へ進みます。


このまま続けてよろしいですか?

 王都からの召喚状は、

 協力という名の支配だった。


 だがエレノアは、

 もはや従う存在ではない。


 次に語られるのは、

 王都との直接交渉と、

 辺境が試される“政治の戦場”。


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