私と行為と吸血鬼
掲載日:2025/09/18
自傷行為を終えて構内のトイレを出ると、身綺麗なホストに声をかけられた。
「やあお嬢さん、その美味しそうな血を飲ませてくれないだろうか」
……キモい。
無視して電車に乗り込んだ。
「また会ったねお嬢さん」
私は別に会いたくなかったな。
「ところでね、私は吸血鬼なんだ。ぜひその血を飲ませてくれないかな」
とりあえずまた無視して通り過ぎようとする。
「つれないなあ。どうせ流す血なら自分で切ろうが、僕が飲もうが同じことじゃないか」
ハッとしてやたらと整っている顔を眺める。
まさかこいつホストじゃなくて、本当に吸血鬼なのか。
「どうだろうか。僕は血が飲めるし、君は血が流せる。お互いにウィンウィンじゃないか」
パチリと片目をつぶる様子は、自称吸血鬼だけあって妙に蠱惑的な表情だった。
まあ、いいか、どうだって。生きてて別にやることないし。
結論から言うと奴は本当に吸血鬼だったらしい。
私の腕から実に美味しそうに血をすする。
この頃は、私の家に住み着き料理なんぞを作っていたりする。
「もっと美味しい血を作るんだ」などとほざいて、にこやかに笑う様子を見ていると、自分で腕を切る理由そのものが変質しているような気がするのが不本意だ。




