表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

第一話 売れないアイドル

第一話は少し現実味がある、苦しい話なので、苦手な方は注意してお読みください。

コンサートホールに響き渡る、無数の音。サイリウムを振る、観客たちの熱。そして、その思いに応えるかのようにマイクから共鳴する、アイドルの歌声。

私、水島海波は、初めてアイドルのライブに行ったその時から、アイドルに強い憧れをもっていた。

私もステージに立てば、あのアイドルたちのように輝けるかもしれない。観客たちに、笑顔を届けられるかもしれない。

そのような切実な希望をもって、私はアイドルを目指して日々努力した。そして、アイドル事務所のオーディションに受かり、私は念願のアイドルになった。

私は、名前の[海波]から[波]をとって[なみりん]と呼ばれた。ライブやシングルも出して、これで私はキラキラ輝くアイドルに...と思っていたけど、現実はそう甘くない。

私はグループで活動するのに向かないらしく、ソロアイドルをやっている。そのため、後輩たちのグループにどんどん置いていかれ、事務所では[売れないアイドル]とまで呼ばれるようになってしまった。

たしかに、ソロではグループと比べてできることは限られてくる。でも、ソロでしかできないことも、きっとあるはずだと、日々模索して努力を重ねた。

しかし、そんな日々にも、限界が近づいてきた。

先輩たちからは『早く売れろ。事務所に迷惑かけてるの、分からないの?』と言われ、後輩たちからも『先輩、自分たちより売り上げないってほんとですか?』と遠回しに罵られる。事務所も『水島さん、いつになったら私たちに利益をもたらしてくれるのですか?』と問い詰めてくる。


私、何のためにアイドル目指してたんだっけ?


こんな辛い思いがしたくて、アイドルになった訳じゃない。アイドルになって、ステージの上で輝き、みんなを笑顔にしたくて始めたのに、実際はこの様。その時私は、次のライブの売り上げが悪かったら、アイドル事務所を辞めようと決めていた。

そして運命のライブ当日、観客は500人ほどだった。後輩たちのライブでも観客は10000人はいるのに、私のファンはたったの500人。この数字は事務所のどのグループよりも低い。半年前の前回のライブが400人弱だったから、増えた方ではあるが、それでもまだ少ない。

私はその日のライブを、卒業ライブに変更し、アイドル事務所を辞めた。


『はぁー、やっぱり私じゃ無理なのかな?』

自分で立てた夢にも関わらず、自分から逃げ出すなんて、私はなんて卑怯なんだろう。自分の不甲斐なさに、今すぐに泣きそうになる。このまま苦しむくらいなら、いっそ...。

私は歩道橋の上にのぼり、下の道路を見下ろした。私がどうなろうと、普段と変わらず、忙しなく車は通り過ぎていく。私は車たちに思いを馳せ、歩道橋の手すりに立った。

『どうか来世では、もっと、人間らしい生活をさせてください。』

私は手すりから飛び降り、車にぶつかる感覚とともにこの世を去った。

第一話、読んでくださりありがとうございます。

第一話は少しむごい話ですが、これからハッピーな展開になると思われますのでよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ