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輪廻の風  作者: 夢氷 城
第2章
35/158

2-4

現場検証

ポナパルトとバレンティノが火柱の上がった現場に到着すると、そこには既にモスキーノがいた。


モスキーノの眼下には、半径10メートルほどの焼け跡が円を描いていた。


「おうモスキーノ、お前も来てたのか!」

ポナパルトが野太い声で言った。


モスキーノは焼け跡をじーっと見ながら考え事をしていた。


ドアル解放軍が根城にしていた塔の上層階が炎上したこと。


インドラの破壊光線が謎の爆炎によって相殺された事。


この2つの既成事実を思い出し、何やら深刻な表情を浮かべていたのだ。


「あれ!?3人ともここで何を!?」

すると、エンディも現場に到着した。

走ってきたのか、少し汗をかいて息を切らしていた。


「フフフ…君も来たのか。」

バレンティノが小さな声で言った。


「はい、この辺から火柱が上がったのがみえたので…あの、何が起きたんですか?」


「フフフ…分からないねえ。この焼け跡以外何も残ってないからね。この辺りは人も滅多に通らないし。」バレンティノは不敵に笑いながら言った。


「ねえエンディ、カインがどこにいる知らない?」

モスキーノがゆっくり後ろを振り向いてそう言った。

いつもニコニコしているモスキーノが冷徹な表情をしていたため、エンディは思わず萎縮してしまった。


「俺も分からないんです。最近全く見かけてなくて…あの、カインが何か?」


「疑ってんだろ?カインのこと。」

ポナパルトがモスキーノの顔を見ながらそう言った。


「え?まさかこれがカインの仕業だって言うんですか!??」

エンディは驚いた様子でそう言った。


「やっぱりあいつを野放しにするべきじゃなかったな…これからカインの捜索にあたる。エンディ、お前にも協力してもらう。」

モスキーノのこの言葉に、エンディはムッとした。


「ちょっと待ってくださいよ!どうしてカインを疑うんですか!?」


エンディの問いかけに、モスキーノは何も答えなかった。


すると、現場にジェシカとモエーネが来た。

何やら2人とも、この上なく深刻そうな表情をしていた。


「おう!何の用だ!?」

ポナパルトが怒声にも似た大声で尋ねると、ジェシカが喋り始めた。


「一応報告しておこうかと思いまして…火柱が上がる少し前に、ノヴァ団長がこの辺りを1人で歩いているのが目撃されています。ノヴァ団長はそれ以降、行方がわからなくなっています。それから…」


「それからなんだ!さっさと言え!」

ポナパルトがイライラした様子でそう言うと、今度はモエーネが喋り始めた。


「つい先程、演習場付近でラベスタ副団長が血を流して倒れていると報告が入りました…。幸い命に別条はなく、今はラーミアが治療にあたっているそうです。」


「え!?ラベスタが??ついさっきまで一緒にいたぞ…何があったんだ!?」

エンディはひどく取り乱していた。


「それが…報告によると、意識を取り戻したラベスタが"アルファにやられた"って証言していたみたいで…。」


「アルファが…?嘘だろ??」

エンディは愕然としていた。


「フフフ…アルファって誰なの?」

バレンティノが冷静に尋ねた。


「最近王室で働き始めた新人の給仕です。私は彼と面識があるのですが、とても鈍臭くて、常にオドオドしている男の子ですよ。ラベスタがあんなのにやられたなんて、とても信じられません…。」

ジェシカは怪訝な表情でそう言った。


「そもそも、アルファはどうしてラベスタを…?」

モエーネは、アルファの目的が何なのか、皆目見当がつかない表情をしていた。


「くそがっ!一体何がどうなっていやがるんだよ!?」

ポナパルトのイライラがついに爆発してしまった。


情報量が多すぎて、理解が追いつかないといった様子だった。


「フフフ…これはただならぬ事態だねえ。」

バレンティノはまるで他人事のような口ぶりだった。


「すぐにカインとアルファってガキを探した方がよさそうだね。」


「フフフ…それも大事だけど、まずは王宮近辺の警備を厳重にするべきでしょ。」

バレンティノがなだめるようにそう言うと、モスキーノの顔がいつもの笑顔に戻った。


「…たしかに!さすがバレンティノ、冷静だね〜!」


「とにかく!まずは国王様とロゼ王子、そんで市民たちの安全を最優先に動くぞ!エンディ!おめえはラーミアを守ってやれや!」

ポナパルトが喝を入れるように言った。


「はい!」

エンディは大きな声で返事をした。


「俺とバレンティノは王宮の警護にあたる!カインとアルファって小僧の捜索はモスキーノに任せる!」

ポナパルトは大きな声で仕切るように言った。


「エンディ、私たちはあなたと一緒にラーミアを守るわ。」

ジェシカとモエーネがエンディに駆け寄り、優しく言った。


「いや、お前らはロゼ王子のそばに居てあげた方が良くないか?」


「若にはエスタが付いてるから平気よ!それに、若はああ見えてすごく強いからね!」

ジェシカはそう言ったが、モエーネからは内心、ロゼのことを心配している様子がひしひしと伝わってきた。


「いや、ラーミアとラベスタは俺が責任持って守るから大丈夫だ!モエーネ、ロゼ王子のことが心配なんだろ?そばに居てやれよ。ジェシカはノヴァを捜して欲しい!」

エンディは2人を気遣うようにそう言った。


「エンディ…あなた1人で平気なの?」

モエーネが言った。


「俺は大丈夫だ!」エンディは自信満々に答えた。


「おいてめえら、いつまでお喋りしてやがる!さっさとそれぞれの持ち場へ向かえや!」

ポナパルトは痺れを切らした様子で言った。


そして各自、現場を離れようとした時だった。


なんと、ラーミアが血相を変えて走ってきたのだ。


隣にはラベスタがいた。少し顔色が悪いが、傷はだいぶ回復しているようだった。


「えぇ!?ラーミア!?何してるの!?」

エンディは動揺していた。

ジェシカとモエーネも驚いている様子だった。


「みんな…大変なの…落ち着いて聞いてください…。さっき、演習場の近くにいた…騎士団の方達が…大騒ぎしてて…。」

ラーミアは今にも消え入りそうなか細い声で喋っていた。

走ってきた疲れもあるが、それ以上に頭の中が混乱しすぎて、事の顛末を上手く言語化出来ていない様子だった。


「なんだ!?なにがあった!?」

ポナパルトが大きな声で急かすように尋ねた。


「それが…レガーロ国王様が…何者かに襲撃されたみたいで…!」

ラーミアは両手で口を覆い、涙をボロボロと流してそう言った。


エンディ達は耳を疑い、唖然としていた。


全身からサーッと血の気が引いて、顔は一気に青ざめていった。





国王に何が!?

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