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輪廻の風  作者: 夢氷 城
第1章
17/158

1-16

ついに謁見、レガーロ国王!


ロゼはものすごい剣幕で玉座の間に向かって歩き出した。


エンディ達もその後ろに続いた。


「どうして私たちまで呼ばれたんだろう…?」

「さあ…私なんだか胃が痛くなってきたわ?」

ラーミアとジェシカは緊張している様子だ。


玉座の間は、大変豪華な雰囲気に包まれた部屋だった。

シャンデリアの輝きが眩しかった。


天蓋付きの豪華絢爛な椅子に、国王はドンと構えて座っていた。

バレラルク王国第83代国王、ウィルアート・レガーロは、いかにも厳格そうで威厳と貫禄のある男だった。


ロゼ達が玉座の間に入ると、高い天井からレッドカーペットがヒラヒラと舞い降りてきた。

まるで彼らを歓迎するかのように、入り口から玉座にかけてレッドカーペットがひとりでに敷かれた。


「なんの用だよ、クソ親父」

ロゼはレガーロを睨みつけながら言った。


「放蕩息子よ、貴様には呆れて物も言えん。何ゆえミルドニアまで赴いた?」


「生憎、俺ははアンタみたいに人を顎で使う生き方は性に合わないんでね」

ロゼは皮肉混じりに言った。


そんな光景を見ていたエンディ達は気まずい空気に包まれたが、カインだけは気怠そうな顔をしていた。


「貴様のような半端者とは話すだけ時間の無駄のようだな。そんなことよりラーミア、無事で何よりだ」

レガーロはラーミアに労いの言葉をかけた。


「は、はい!ありがとうございます!」

ラーミアはオロオロしていた。


「私が向かわせた編成部隊が到着する前に、お前達が助け出したと聞いたぞ。一体何があったのだ?」レガーロはエンディとカインに視線を向けて尋ねた。


「レガーロ国王、私が説明致しますわ!」

ジェシカがハキハキとした口調で言った。


「いいだろう。"その者達"にも聞かせてやってくれ」

レガーロがそう言うと、玉座の間に3人の豪傑が入ってきた。


「おお〜。魔法族最強戦力、騎士団長のおでましか!イカついな?」ロゼはニヤニヤしながら言った。


団長と呼ばれるこの3人は凄まじいオーラを放っていた。

エンディは圧倒されていたが、カインは相変わらず涼しい顔をしていた。


「え、何?世界最強?騎士団長…?」

エンディはオドオドしながら言った。


「団長は、王室近衛聖道騎士団の中で最も高い階級よ。そして、最強の魔法族にのみ与えられる称号…」

ジェシカは固唾を飲んで言った。


「え、じゃあこの3人…めちゃくちゃ強いのか!?」


「ええ…彼らの戦闘能力は人智を超えているわ?」


「かっけぇ…おれも団長になりてぇ〜!」

エンディは気持ちが昂って、思わず叫んでしまった。


「おいコラ、図に乗んなよクソガキ!」

3人の団長の1人、ポナパルトがエンディに向かって怒鳴り声を上げた。

腹にまで響く野太い声に、エンディは縮み上がってしまった。


ポナパルトは身長2メートルを越える色黒で、筋骨隆々の大男だった。


「まあまあ、落ち着きなよ!ここは玉座の間だよ?」


「うるせえよモスキーノ!ヘラヘラしてんじゃねえ!!」


ポナパルトに怒鳴られた男の名はモスキーノ。


そんな2人のやりとりをクスクスと不気味な笑いながら見ているのがバレンティノ。

2人とも団長の1人だ。


モスキーノは青色の長髪で、女のような顔をしている。ニコニコしていたりヘラヘラしていたり、一見すると、弱々しそうな優男だ。


バレンティノは長身細身で、髪型は派手なドレッドヘアで、口元に黒色のスカーフを巻いた切れ目の男だ。

腰には刀を差していて、何やら不気味な雰囲気が漂っていた。


「静粛に。それではジェシカ、話を聞かせてもらおうか」

レガーロがそう言うと、玉座の間は一気に張り詰めた空気に包まれた。


ジェシカは皆の前で、スパイとして活動していた期間の事やミルドニアでの出来事をハキハキと話した。


そしてエンディも、ラーミアとカインとの馴れ初めや、自身がミルドニアで何をしたかを皆に説明した。


「なるほど、そんな経緯があったとはな…エンディとカインとやら、大義であったぞ。礼を言う」レガーロがそう言うと、"こんな偉そうにお礼を言う人初めて見た…"と、エンディは心の中で呟いた。


「おめえら中々良い根性してるじゃねえか!俺がバチバチに鍛えてやったら、もっと良い男になりそうだな!!」

ポナパルトはエンディとカインを見ながら言った。


「ははは…それはありがたいなあ」

エンディは引きつった顔で言った。


「なるほどねー、話は分かったよ!だけど1つだけ気になる事があるなー!」

モスキーノはニコニコしながらそう言うと、カインの前まで歩いて行った。


「ねえねえそこの金髪くん。おめぇ何モンだよ?」

モスキーノは、さっきまでニコニコしていたのがまるで嘘のような、とてつもなく恐ろしい表情をしてカインを睨みつけた。



その豹変ぶりに、玉座の間は一気に凍りついた。


ポナパルトはこの上なくめんどくさそうな表情をして、大きな舌打ちをした。


レガーロとロゼは冷や汗をかいて困っている様子だった。


ラーミアとジェシカはひどく怯えていた。


エンディは、モスキーノにたいして底の知れない恐怖心を抱き、寒気がした。

今自分がいるこの玉座の間の、その空間の全てにモスキーノの殺気が張り詰めていて、まるでモスキーノの体内に閉じ込められているような感覚だった。


モスキーノとカインは互いに視線を外さず向かい合っていた。

カインは眉ひとつ動かさず、一切動じていなかった。


「フフフフ…」

バレンティノは楽しそうに、静かに笑っていた。


瞳孔が開いた恐ろしい目つきで、モスキーノはカインを直視していた。


「何が言いたい?」カインが尋ねた。


「エンディの事情は分かった。だがお前の行動には信念が感じられない。無人島でひっそり暮らしてたお前が、どうして出会って間もない、恩義もなければ素性も知れないエンディに協力した?何が目的でバレラルクに来た?答えろ」酷薄な表情でモスキーノは尋ねた。


「違うんです、カインはその…なんて言うか、俺が無理矢理連れ回しちゃって…」

カインを信じ切っているエンディは、なんとかして誤解を解こうとしていたが、うまく言葉が出さずしどろもどろしていた。


「塔の上層階も、随分と都合の良いタイミングで炎上したみたいだね?」

モスキーノは畳み掛ける様に続けた。


「誰かが火でもつけたんだろ?めんどくせえ勘繰りはやめてくれよ。これ以上突っかかってくるようなら、俺も出るとこ出るぜ?」

カインは強気な態度で言った。


「貴様らいい加減にしろ。ここをどこだと思っている?」

見かねたレガーロが一喝しすると、モスキーノは再びニコニコし始めた。


「ごめんなさーい国王様!つい、いつもの悪い癖が出ちゃいました〜!カイン君も、突然ごめんね?」モスキーノが軽快な口調でそう言うと、カインはプイッとそっぽを向いた。


「勘弁してくれよモスキーノ…お前本当にイカついぜ?」

「ったく、タチの悪い奴だぜ」

ロゼとポナパルトが呆れた様子で言った。


エンディとラーミア、ジェシカは呆気に取られていた。


「フフフ…顔色ひとつ変えないとはねえ」

バレンティノはカインを見ながらボソッと言った。

モスキーノ相手に一切物怖じしないカインに、感心している様子だった。


「みんな、エンディとカインは俺が預かることになったんだ。責任持って面倒見るから心配しないでくれ!こいつらにはさっそく動いてもらう!」ロゼが言った。


「え!もう任務ですか!??」

エンディはワクワクしていた。


「ああ。おそらく、ジェシカの裏切りはノヴァファミリーに既にバレてる。奴らは研ぎ澄まされた警戒心とその用意周到さで、騎士団や保安官が総力をあげて調べても全くシッポを掴めない。そこでだ!お前らに連中のことを調べてもらいたい!どこにも属してないお前ら2人なら怪しまれずに動けるだろ?」


ロゼがそう言うと、エンディは勢いよく手を挙げて返事をした。

「はい!お任せください!!」


「カイン、エンディが1人で突っ走らねえようにしっかり見てやってくれよな?」

ロゼは念を押すように言った。


「ああ、分かった」


すると、玉座の間にサイゾーとクマシスが、ダルマインを連れて入ってきた。


「国王様、ただいま戻りました!」

サイゾーは緊張している様子だった。


「ゲッ!国王様との謁見なんてただでさえ緊張して気が重かったのに、団長共までいやがる!勘弁してくれよもう!」

クマシスはびっくりして、いつもの如く心の声を大にして上げた。


「おお、早かったなお前ら。そいつはダルマインじゃねえかよ」ロゼが言った。


ダルマインは両手に手錠をつけられていた。

顔には全く生気がなく、憔悴しきっていた。

どうやら自分の人生を完全に諦めているらしい。


「ほう、その男がダルマインか。たしかラーミア誘拐の主犯格だったな。そんな外道を王宮に連れてくるな!早急に処刑しろ!」

レガーロはまるで汚物を見るような眼差しでダルマインを見ながら言った。


「お任せください国王様!こいつは俺が殺してやりますよ!」ポナパルトが言った。


「待て待て落ち着け。こいつもこっちの手駒にしちまおう。ゴミだってリサイクルすれば役に立つだろ?」ロゼが言った。


「何が言いたい、放蕩息子よ」


「うっせえよクソ親父。なあダルマイン、お前今夜エンディ達とパニス町にいってノヴァファミリーを探ってもらえないか?」


「お待ちください若、この男は信用できません!」ジェシカが言った。


「いくらこいつでも、首の皮一枚でつながってる状況で下手な真似はしねえだろ。ギャング共に顔が割れてるこいつは逆に利用できる。なあダルマイン、お前が役に立つ男だって事を俺に証明してみせてくれよ。そうすりゃ俺が免罪符切ってやってもいいぜ?」

ロゼは、へたり込むダルマインの顔を覗き込みながら言った。


「貴様…勝手なことを言うな!」

レガーロは、ロゼのやり方が気に入らないようだった。


「飾り物の国王様は黙ってろよ。ただ殺せば良いってもんじゃねえ。そんなんだから世の中争いが無くならないんだせ?」ロゼは言った。


ダルマインの顔には、どんどん生気が戻っていた。


「ロゼ王子、今ここに永遠の忠誠を誓います。この命尽きるその時まで、貴方様の手となり足となり戦う所存でございます。手始めに靴でもお舐めしましょうか?」ダルマインは希望に満ち溢れた顔で、舌をべろべろさせながら言った。


「はあ〜…こいつは」

エンディは呆れてため息をついた。


「よし!じゃあ今夜19時にパニス町に集合な。あ、サイゾーとクマシス、お前らも来いよ。どうせ暇だろ?」


「承知しました!」

サイゾーは元気よく返事をした。


「暇じゃねえよふざけんなンモゴゴォ…」

ロゼの前でうっかり心の声を口にしたクマシスの口を、サイゾーは命懸けで塞いだ。


「勝手にしろ。お前達、もう下がってよいぞ」

レガーロがうんざりした様子でそう言うと、3人の団長を筆頭に、みんな玉座の間を後にした。


「エンディ、カイン。気をつけてね?」

ラーミアは心配そうに言った。


「大丈夫だよ。よ〜し!やってやるぞお!」

エンディはとても気合の入った様子だった。


ノヴァファミリーを探るため、奴らの目撃情報の絶えない歓楽街へ!

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