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輪廻の風  作者: 夢氷 城
最終章
150/158

今を生きる光

エンディとラーミアは、蘇った500年前の記憶に縛られ、互いを見つめ合った。


トルナドとルミエルの生が鮮明に甦ったが、数秒で夢のように薄れた。


鮮烈な夢が朝に溶けるように、記憶はぼやけた。

だが、運命を知った二人は、言葉を超えた感慨に浸った。



「私…夢を見ているみたい。」


「勝手に夢なんかで終わらせるなよ、これはれっきとした現実なんだから。」


言葉を交わし、再び見つめ合った。

やるべき使命が、心の深奥に刻まれた。


魔界城一階では、数万の連合軍が魔族の残党と激闘を繰り広げていた。


光を取り戻す連合軍が優勢だった。


500年前の天生士が討ち損ねた冥花軍は壊滅し、蝿の王ベルゼブはノヴァとエラルドに倒された。


魔族は種の存亡を脅かされるほど追い詰められていた。


ナカタム王国の戦士たちの奮闘が、人々の心を動かしたのだ。

その中心には、常にエンディがいた。


残る敵は、ヴェルヴァルト冥府卿のみ。


倒す未来が見えぬほどの強さを誇るが、エンディは不思議と、ちっとも怖くなかった。


背に仲間。


双肩に殉死者の想い。


ユラノスに託された力。


トルナドから受け継いだ意志。


そして隣にラーミア。


恐れるものなど何も無かった。


一向は、魔界城の最上階に辿り着いた。


エンディとラーミアが先頭を歩いた。


英雄たちの一糸乱れぬ行進は壮観そのものだった。



今というかけがえのない時代を生きる誇り高き戦士達は、巨悪を討つべく、それぞれの想いを胸に抱き、全ての準備を整えた。


最終血戦は、遂に終幕を迎えようとしていた。


陰と陽。光と闇。


相反する力が、世界の命運を分けた。


ヴェルヴァルト冥府卿は、闇の空に浮かび、不遜な笑みを浮かべた。


「また立ちはだかるか…愚かなる天生士共よ。世界など既に我が領土。郷に入ったら郷に従うべきだぞ?お前達はとうの昔に敗北しているのだからな。また犬死にしたくなければ、大人しく余に跪けばいいものを。」


悍ましい声が響いた。


エンディはヴェルヴァルト冥府卿の巨体を直視し、叫んだ。


「屈しないさ、俺たちは誰も。敗ける事に慣れて、戦うことをやめて、声を上げることすらせず、服従の道を選べば生存権も保障されるし、楽かもな。だけど…そんなもんは本当の自由じゃない!人はまやかしの中じゃ、心から笑うことも幸せを見つけることもできない!だから俺たちは…また生きてみんなで太陽の光を浴びるためにお前と戦い続けるんだよ!おいヴェルヴァルト、俺たちの覚悟をみくびるなよ?お前を倒すと決めた時から、命なんてとっくに捨ててんだよ!」


ヴェルヴァルト冥府卿はエンディの決意を嘲った。


「命を捨てる…か。聞こえは良いが、所詮は愚者の自惚に過ぎない。そんなものは崇高な精神でもなんでもない。弱者が語る理想論ほど無価値なものは無いと知れ。そもそも、世界など元より、救いようのないほどに汚れているではないか。余はこの空虚な空間を少し血染めにしただけ。この取るに足らぬ下らぬ世界で退屈そうに生きている人間どもに、ささやかな余興を与えただけだ。どうせなら、お前達も最期まで愉しめば良いものを。」


だが、エンディは折れなかった。



「汚れた世界?くだらない世界?ああ、大いに結構だ!生きるって事は綺麗事だけじゃ済まされない。だからこそ楽しいんだ!何も無いなら、自分で何かを見つければ良い!そこから何かを生み出せたなら、誰かに分け与えれば良い!毎日自分に恥じないよう真っ直ぐガムシャラに生きてれば、心から笑えるはずだ!なんにだって成れる!」


清々しい笑顔が闇を裂いた。


カインは愛娘ルミノアに視線を向け、慈愛の眼差しを注いだ後、ヴェルヴァルト冥府卿を鋭く睨んだ。



「命は産まれる…。今こうしている間にも、どこかで新しい命が誕生しているんだ。つい最近までガキだった俺たちも、気が付けば護られる側から護る側になっていた。俺たちは、繋いでいかなきゃならねえんだ。だから生きなきゃならねえ。何がなんでもこの戦いに勝たなきゃならねえ。一端の大人ならよ、右も左もわからねえガキどもの背中を何回押してでも"生き抜け"って教えるもんだろ?」


18歳とは思えぬ貫禄で、カインは未来を願った。


ヴェルヴァルト冥府卿は理解に苦しんだ。


「お前達をそこまで駆り立てるものは何だ?一体何をそんなに護りたいのだ?国か?世界か?人か?未来か?」


エンディは即答した。

「今。」 と。


一点の濁りもない目で、澄んだ答えを放った。


「今の時代を生きる俺たちが戦わないで、一体誰が戦うんだよ!!」


カインが横に並び、続けた。

「お前は絶対に未来に遺さねえ。刺し違えてでも、ここで確実に潰してやる。」


ヴェルヴァルト冥府卿は冷笑した。

「どうやら、お前達とはまともな議論すら出来ぬようだな。人間とはつくづく脆くて弱い、哀しい生き物だ。良いだろう…2度と生まれ変われぬよう、魂諸共滅してくれる!まずは貴様だ!」


ラーミアに狙いを定めた。


彼女の光が最も厄介であり、エンディの心を折る鍵と踏んだ。


30メートルの巨体が羽根なき翼を羽ばたかせ、急降下した。


エンディたちは緊迫感に身構えた。


エンディがラーミアを護ろうと咄嗟に前に出たが、ラーミアはさらに一歩進んだ。


ヴェルヴァルト大王を相手に臆することなく立ち向かおうとするその姿勢に、エンディは肝を冷やしてしまった。


ラーミアは、自身の両手を急降下してくるヴェルヴァルト大王に翳した。


「隔世憑依 聖なる祈り(オーブプリエール)」


両手から朝靄のような白い光を放たれた。


光に浴したヴェルヴァルト冥府卿は思考と動きを停止し、頭を押さえて苦悶の呻きを上げた。



「貴方の闇の力の一部を消滅させたわ。これでもう、自慢の超速再生能力は使えない…!」


冷や汗を垂らし、ラーミアは勝ち誇った。


ヴェルヴァルト冥府卿は怒り狂った。



「おのれぇ…貴様…小癪な真似を…!許さん!絶対に許さんぞ!!」


全身の血管が浮き、怒りは頂点に達した。

硬い皮膚と超速再生を誇ったヴェルヴァルト冥府卿だったが、超速再生能力は封じられた。


エンディたちに微かな勝機が訪れた。


エンディは目の前で起こった事象に驚き、呆然とした。



すると、カインがエンディの肩に手を置き、囁いた。


「行けよ相棒。この戦い、先陣切るならお前しかいねえだろ?」


「おれが…?」


心はまだ揺れていた。


すると、次はノヴァが背中を叩いた。


「ほら、ぼさっとしてんじゃねえよ。お前の他に誰がいんだよ?」


ラーミアがエンディの手を握った。

「エンディ、大丈夫だから…。」


その言葉が火を灯した。


エンディは深呼吸し、凛とした顔で振り返った。



「みんな…やるぞ。準備は出来てるか??」


問いかけは不要だった。


仲間たちの士気は漲り、闘気が迸った。


サイゾーとエスタ、ジェシカとモエーネはロゼの護衛を決意。


アマレットはルミノアを抱き、ラーミアを援護。


ダルマインとクマシスは震えながら隠れた。


エンディは笑顔で頷いた。

「よし…いくぞーー!!」


金色の風を纏い、ヴェルヴァルト冥府卿へ飛び立った。


誇り高き風の戦士が先陣を切り、最終血戦の狼煙が上がった。


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