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輪廻の風  作者: 夢氷 城
最終章
120/158

星堕つる刹那と金風の孤誓

大パニック!


魔界城の一階は、血と鋼の嵐に呑まれていた。結界が砕け、冥花軍の猛将、ルキフェル閣下、ジェイド、メレディスク公爵が解き放たれた瞬間、希望は絶望に塗り潰された。


「アベル君!!」ラーミアの悲痛な叫びが響いたが、アベルは血溜まりにうつ伏せ、微動だにしなかった。


「あなた…一体何をしたの?なんの能力なの…?」

アマレットは青ざめ、ルキフェル閣下に問うた。


だが、ルキフェル閣下の冷酷な眼光は答えを拒み、闇の刃だけを返した。


結界の崩壊は、ナカタムの魔法戦士たちの心を折った。


動揺が波のように広がり、士気は地に落ちた。

対照的に、魔族たちは勝機を掴んだ喜びに沸き、獰猛な笑みを浮かべた。


ラーミアは混乱に呑まれ、両手で口を覆い、呆然と立ち尽くした。


その隙を、魔族の大群が見逃さなかった。


「この女どもをぶっ殺せぇー!!」


「オラァ!死ねやコラァ!」

怒号と共に、闇の破壊光線がラーミアとアマレットに迫った。


だが、その刹那、バレンティノが立ちはだかった。


両手で剣を振り抜くと、鎌鼬のような斬撃が大群を一掃した。

「呆けている場合じゃない!今すぐ逃げて!君達2人は何がなんでも死なせない!」

彼の声は、いつも冷静な彼らしくない切迫感に震えていた。


ラーミアとアマレットは、正気を取り戻し、動き出した。


「フフフ…早くアベルを連れて逃げなよ。ここは俺が食い止めるからさあ…!」

バレンティノはいつもの軽やかさを取り戻し、二人に背を向けた。


ラーミアはアベルを背負い、アマレットはルミノアを抱え、死地を脱した。


「ヒャハハッ!おいおい!逃すわけねえだろぉ!?」ジェイドが血に飢えた笑みを浮かべ、追撃を仕掛けた。


だが、12人の誇り高き魔法戦士が、命を賭して立ち塞がった。


「ちょっと…何してるの!?」ラーミアが叫んだ。


「行け…ラーミア、アマレット!こいつは…俺たちが食い止める!」

一人の戦士が背中で語った。

その誇り高き背中は、まるで史実の英雄のように聳え立った。


「ああ!?おいおい冗談やめろよ!てめえらみてえな雑魚どもが何匹群がったところでよぉ!この俺を止められるわけねえだろぉ!?天地がひっくり返っても無理だぜぇ!?」

ジェイドは戦士たちを嘲笑した。


「ダメ!やめて!」ラーミアは涙を流し、叫んだ。


だが、アマレットが彼女の腕を掴み、強引に走らせた。


「離してアマレット!みんなが死んじゃうよ!」

ラーミアの泣き声に、アマレットは涙を堪えた。


「ダメよ、ラーミア…。ここで私たちまで死んだら、あの人たちの覚悟を踏み躙ることになるわ…?あの人達が繋げてくれたこの命…私たちは何がなんでも生き延びなくちゃいけないの!」


ラーミアは苦渋の決断を下し、アマレットと共に走った。


「よく頑張ったな!お前ら!」


「お嬢ちゃん達、後はおじさん達に任せろ!」


「必ずこの戦いに勝って、幸せになれよ!いいな?」


戦士たちは親指を立て、ジェイドに突進した。


だが、ジェイドの両眼が黒く光り、黒炎が戦士たちを包んだ。


12人の誇り高き魂は、骨すら残さず燃え尽きた。


「ヒャハハハハッ!バーカバーカ!」

ジェイドの嘲笑が響いた。


だが、彼らの数秒の抵抗は、ラーミアとアマレットを救った。


アマレットの瞬間移動魔法で、二人は二階の静かな一角に逃げ延びた。


ラーミアはアベルの治療に専念し、涙を流した。


アマレットはルミノアをあやしながら、周囲を警戒した。

未来は予測不能だったが、二人は生きるために何をすべきか、静かに模索した。




一方で玉座の間は、運命の頂点だった。


ヴェルヴァルト冥府卿の超速再生が戦士たちを絶望に突き落とした瞬間、数十体の魔族が雪崩れ込んできた。


「御闇〜!加勢に来ましたぜー!」

「オラァてめえらぁ!覚悟しやがれぇ!」

彼らの怒号が響いた。


「え!?どうなってんだ!?こいつら結界に閉じ込められてたんじゃないのか!?」エンディは混乱した。


「まさか…結界が壊されたのか!?」


「馬鹿な…あり得ねえ!あの結界は1時間は保つって聞いたぞ!?」


カインとノヴァも動揺した。


ロゼとエラルドも同じ恐怖に囚われた。

モスキーノはわざとらしく騒ぎ、イヴァンカは冷徹に静観した。


「結界が破壊されたか…そう考えるのが妥当だろう。」

イヴァンカの言葉が響いた瞬間、魔族たちの身体が爆発音と共に木っ端微塵に砕けた。


仕掛けたのはヴェルヴァルト冥府卿だった。


「誰が加勢に来いなどと頼んだ?余の戦いの邪魔をするなど、万死に値するぞ!」

彼の怒りは、味方すら容赦しなかった。


「しかし…貴様らとの戦いにもほとほと飽きてしまったのも事実。そろそろ潮時だな…。」


ヴェルヴァルト冥府卿は大口を開き、闇の力が凝縮された球体を形成した。


空と大地が震え、空間そのものが悲鳴を上げた。


「おい!これはやべぇぞ!!」


「うわぁぁぁ!!デカイのくるよー!!」

エラルドとモスキーノは慌てたが、モスキーノの声にはどこか芝居がかった響きがあった。


「これはアウトだろっ!」

カインは闇の球体の威力を察し、豪火を放った。


「うおおおおおお!!!」

エンディは黄金の風を全力で叩き込み、破壊光線を迎え撃った。


黒い光線と黄金の風が衝突し、大気に亀裂が生じたかのような衝撃が広がった。


エンディは一瞬、光線を押し止めた。


カインが豪炎を重ね、「こんな所で君達と野垂れ死ぬのは御免だ。」とイヴァンカが雷を加えた。


だが、光線の勢いは止まらず、増す一方だった。


「おい!このままじゃ全滅しちまう!ヴェルヴァルトの攻撃を相殺するのは不可能だ!だからこいつの攻撃をどこか遠方に受け流すぞ!」

カインの叫びに、エンディは「分かった!」と応じ、イヴァンカは「私に命令するな。」と不満げに雷を調整した。


三人は力を上空へ向け、光線を逸らした。


完全な上空には届かず、南東のギラトニル山へ直撃。

世界遺産の雄峰は跡形もなく消滅し、キノコ雲が空を覆った。


エンディ、カイン、イヴァンカは満身創痍で膝をついた。


「やべえだろ…異次元すぎるぜ…。」

「お前ら…よく止めたな…!」

エラルドとノヴァは絶句。

ロゼはギラトニル山の消滅に口をあんぐり開けた。


「くるしゅうない。お前達、よく生き延びたな。大したものだ。」

ヴェルヴァルト冥府卿は感嘆し、ズシンズシンと歩み寄った。


だが、エンディは突然、黄金の風を地面に叩き込み、玉座の間の床を砕いた。


カイン、イヴァンカ、ロゼ、エラルド、ノヴァは下階へ落下した。


「エンディ!何しやがる!?」


「エンディてめえ!何トチ狂ってんだ!?」


カインとエラルドが怒鳴った。


「お前らは下に加勢に行け!何があったかしらねえが…結界が破壊されたなら冥花軍の奴等も解き放たれた筈だ!ヴェルヴァルトは俺1人でぶっ倒す!だからお前ら、下は任せた!ぜっっったいに生きて帰れよーーー!!」エンディは落下する仲間たちに叫んだ。


「あの野郎…!」

ノヴァはエンディの決意に敬意と不安を感じた。


「下は俺が片付ける!そしたらすぐに加勢に行くからよ…お前、それまで死ぬんじゃねえぞ!」

カインはエンディに応え、仲間たちと共に下階へ向かった。


エンディは振り返り、ヴェルヴァルト冥府卿と対峙した。


「来いよヴェルヴァルト!例え刺し違えてでも…お前だけは絶対にぶっ飛ばす!!」

両拳を振り上げ、黄金の風を纏った彼の姿は、まるで星が地上に降り立ち、闇に挑む神話の英雄だった。

玉座の間は、孤絶の戦場と化した。

一騎打ち!

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