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輪廻の風  作者: 夢氷 城
最終章
114/158

星屑の逆襲


五日前、モスキーノとマルジェラは昏睡の淵から奇跡的に目覚めた。


医師が匙を投げ、希望の光が閉ざされた病床で、ヴェルヴァルト冥府卿の禍々しいオーラが彼らの魂を揺さぶった。



全身の細胞が警鐘を鳴らし、遺伝子に刻まれたヴェルヴァルト冥府卿への根源的な恐怖が、二人を死の淵から引き戻したのだ。

不幸中の幸いとも言うべきか、彼らは生還を果たした。


王都バレラルクが破壊される直前、マルジェラは生物の本能で危機を察知した。


瞬時に巨大な白い鳥へと姿を変え、モスキーノを背に乗せて大空へ飛び立った。


こうして二人は壊滅を免れ、命を繋いだ。


その後五日間、隠れ家を転々としながら療養し、討ち入りの機を伺った。


体調がほぼ万全に戻った今、彼らは燃える闘争心を胸に、魔族の根城へと向かった。


道中、運命の導きか、エンディとカインに遭遇した。


マルジェラは二人を背に乗せ、再び王都を目指した。


だが、雲一つない漆黒の空から突如、雷が落ちた。


マルジェラを狙ったその雷は、間一髪で躱されたが、四人は即座にその主を悟った。イヴァンカの仕業だ。


地上には、不敵な笑みを浮かべるイヴァンカが立っていた。


「私も連れて行け。君達だけではあまりにも心許ない。」


その高圧的な言葉に、マルジェラは激昂した。


かつて片腕を斬り落とされたこの男と手を組むなど、死んでも受け入れがたい。


だが、エンディが軽やかに言った。

「いいじゃん、マルジェラさん。あいつがいれば相当な戦力になる。」


カインも当初は反対だったが、「エンディがそう言うなら…良い。」と渋々同意した。


マルジェラは葛藤した。


火急の事態とはいえ、イヴァンカへの憎しみは消えない。


だが、エンディとカインの過去を思い出した。


イヴァンカによって一族を虐殺され、心に深い傷を負った二人が、なお共闘を選んだのだ。


それに比べれば、片腕の恨みなど些細なものかもしれない。悩み抜いた末、マルジェラは渋々イヴァンカを乗せた。


一方、モスキーノは無関心だった。


イヴァンカの同行などどうでもよく、ただ魔族へのリベンジに心を燃やしていた。


奇しくも、この五人の討ち入りは、ロゼたちの決戦と時を同じくしていた。


魔界城の「獄門」前で、ロゼ一行とエンディたちが再会した瞬間、仲間たちの絆が再び結ばれた。


「お前ら!生きてたか!良かった!」


「ったく、遅えんだよ!」


ロゼとノヴァの声には、心からの安堵が滲んでいた。


ラーミアはエンディの顔を見るや、感極まって涙を堪えた。


カインはマルジェラの背から飛び降り、妻子のアマレットとルミノアに駆け寄った。


「アマレット!ルミノア!無事だったか!」

この五日間、カインは妻子の安否を案じ、気が気でなかった。


無事を確認し、胸を撫で下ろした。


「おい…ところでよ、アマレット。なんでこんな危険な場所に来てるんだよ!?ルミノアまで連れて!!」


「危険な場所?今この世界に安全な場所なんてないでしょ?どうせどこにいたって危険な事に変わりないなら、私はみんなと一緒に戦うわ。」

アマレットの強気な言葉に、カインは気圧された。


「いや…確かにそうなんだけどよ…でもルミノアまで連れて来ることはないんじゃねえの??」


アマレットは優しく微笑んだ。


「ここは敵陣のど真ん中だけど、私にとってはある意味世界一の安全地帯と言えるわ?だって…カイン、貴方が居てくれるから。私たちのこと、護ってね?」


ルミノアはカインを見て無邪気にはしゃいだ。


その信頼の言葉が、カインの心に火を点けた。


「はっ、あまりめえだろ!全く、流石は俺の妻だぜ!」


アベルは微笑ましく呟いた。


「愛妻家で子煩悩…全く、随分と単純な男になったものだね。まあ、そんな兄さんも嫌いじゃないけどね。」


その瞬間、マルジェラは獄門へ突き進んだ。


エンディは重厚な門を見据え、風の力を右手に纏わせた。


凄まじい豪風が獄門を直撃し、木っ端微塵に吹き飛ばした。


「嘘だろー!?獄門が!!」


「あの分厚い門をたったの一撃でぇー!?」


魔族とナカタムの魔法戦士たちは驚嘆した。


「よーし!突撃だあー!!」


エンディの号令で、マルジェラはエンディ、モスキーノ、イヴァンカを乗せ、獄門を突破。


「エンディ達に遅れをとるな!」


「突入だぁー!!」


4000人の魔法戦士が「うおーーーっ!!」と叫び、魔界城へなだれ込んだ。


10万対4000。


兵力差は歴然で、無謀な戦いだった。


だが、ナカタムの魔法戦士たちの目は死んでおらず、士気は燃え上がっていた。


魔界城の一階は広大で、黒い壁に蝋燭が揺れる不気味な空間。


一万体の魔族が待ち構え、外の一万体もなだれ込んだ。


エンディたちは完全包囲された。


「道を開けろぉ!俺が通る!!」

エンディは両手を翳し、豪風を放った。


「うわあぁぁぁ!!」


2000体の魔族が宙を舞い散った。


イヴァンカが舞い降り、剣を一振り。


「奴らを殺せー!!」


「雷帝レムソフィア・イヴァンカ!討ち取ったりいぃぃっ!!」


青光る稲妻が場内を駆け、3000体以上が絶命。


「華麗なる復讐劇の幕開けだ。今のはほんの余興。さあ魔族の諸君…終劇までの間、とくと楽しんでくれ給え!」


モスキーノは笑顔で飛び降り、「2人ともしっちゃかめっちゃかにしてくれちゃって…美しくないよ!戦い方が!!それにイヴァンカ!幕を引くのは俺だからね!?」と叫び、表情が冷酷に変わった。


魔族たちは寒気を覚え、2000体近くが凍結し、氷の彫刻と化した。


「つ…強えぇぇぇっ!」

「な、なんだよこいつら!?」


エンディ、モスキーノ、イヴァンカは一瞬で7000体以上を一網打尽にした。だが、魔族は5000体近くが残り、闇の破壊光線を放った。


それをカインの豪火が相殺。


「道を開けろっつってんだよ。相棒が通れねえだろ?」


だが、魔族の精鋭が現れた。


ルキフェル閣下、ジェイド、メレディスク公爵が天井を破壊し、一階に降り立った。


モスキーノはルキフェルを睨み、「会いたかったよ!ルキフェル閣下ぁ!!」と狂気を帯びて叫んだ。


イヴァンカは冷静に再戦を望み、ジェイドは「イヴァンカは譲りますけど…エンディちゃんとカインちゃんは俺にぶっ殺させてくださいねえ!閣下ぁ!!」と懇願した。


一方、ロゼ一行40名は獄門前に留まり、焦っていた。


五日かけて練った作戦は、40名で魔族を倒す一か八かの策だった。


だが、4000人の連合軍の出現と、エンディたちの突入は想定外だった。


「おいおい!あの馬鹿ども、中に入っちまったぞ!?」


「こりゃ大番狂わせだな…。国王、どうしますか?」エラルドとノヴァが慌て、アズバールは苛立ちを募らせた。


ラーミアとアマレットは呆然とエンディたちを眺めた。


「エンディ…。」


「どうしよう、カインも中に入っちゃったよ。」


エスタが「おいロゼ、黙ってねえで何か指示を出せよ。」と偉そうに言うと、ジェシカとモエーネが「ちょっとエスタ!そんな言い方ないでしょ!」「そうだよ!こんな状況で国王様を急かさないで!」と注意した。


ロゼは沈黙を破った。「…作戦は当初の予定通り、滞りなく実行させる。ヴェルヴァルトは俺たちだけでぶっ倒すぞ…!」


バレンティノが不敵に笑った。

「フフフ…そうこなくっちゃねえ。俺もそうするべきだと思っていましたよ。ある意味、エンディ達は良い陽動になってますからねえ。」


アベルも冷静に言った。


「エンディ達を一時的に閉じ込めちゃう事になるけど、仕方ないよね。元々僕達だけでケリ付けるつもりだったし。」


「よし!ラーミア!アマレット!急いで準備を整えろ!気張れよてめえら!作戦開始だ!!」

ロゼの号令で、五日間の策が動き出した。


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