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輪廻の風  作者: 夢氷 城
最終章
105/158

不屈の闘志と無敵の大魔王


王都の空は黒く濁り、灰が血のように降り積もる。


魔法戦士や一般市民の無数の死体ら瓦礫に埋もれ、風が絶望を運ぶ。


ヴェルヴァルト冥府卿が屹立する。


赤紫の巨体は闇を纏い、瞳なき眼が魂を抉る。


エンディは風を纏い、叫ぶ。



「うおーーー!!」

隔世憑依の力が体を包み、空を裂いて冥府卿へ突進する。


だが、近づくほどに重圧が心を押し潰す。


恐怖が骨を震わせ、叫びは自分を誤魔化すためのものだ。エンディにその自覚はなかった。


ヴェルヴァルト冥府卿の顎を渾身の拳で殴る。

風が唸り、大気が震える。

両拳に力を込め、胸部、腹部を何度も殴打する。


一撃ごとに波動が大地を揺らし、瓦礫が舞う。


だが、冥府卿は動かない。

血一滴流れず、呻き声すら漏らさず、無抵抗。


エンディの目が揺れる。

不気味だ。

右脚に風を纏い、頭頂部へ踵落としを叩き込む。


衝撃が空を割り、灰が渦を巻く。それでも足りない。


ヴェルヴァルト冥府卿の角を掴み、地上へ引きずり下ろす。大地が悲鳴を上げ、隕石のような亀裂が生じる。


ヴェルヴァルト冥府卿は地面に深くめり込み、仰向けに沈む。


エンディは浮き上がり、雄叫びを上げる。


「うおぉぉぉ!!」

巨大なカマイタチが冥府卿を斬りつけた。

刃のような風が連なり、砂埃が空を覆う。


ヴェルヴァルト冥府卿の姿が消える。


「おいおい…ちょ〜っとやりすぎじゃねえか?まあ…やりすぎくらいが丁度いいか。」ロゼが苦笑する。



「流石に魔族の王といえど、これじゃ影も形も残らねえな…。」ノヴァが呟く。



「どうだかな…そんな甘い相手じゃねえと思うけどな。」カインが眉を寄せる。


バレンティノとイヴァンカも同じ予感を抱く。


闇の魔法族を従える存在が、こんな簡単に倒れるはずがない。


エンディが攻撃を止め、地上へ降りる。



砂埃が薄れるのを、緊張した顔で待つ。


巨大な影が現れる。

エンディの息が止まる。


ヴェルヴァルト冥府卿が無傷で立つ。


それも涼しい顔で、まるで何もなかったかのように。


「嘘だろ…なんで…?おまえ…おまえ一体何者なんだよ!!??」エンディの叫びが灰を震わせる。


ヴェルヴァルト冥府卿は答えない。

 


その無言がエンディを苛立たせる。


「これで終わりだぁ!!」

竜巻の力を右腕に纏い、真正面から殴りかかる。


ヴェルヴァルト冥府卿がエンディに人差し指を向けた瞬間、カインの背筋が凍った。



「エンディ!よけろ!!」叫びは届かない。


爪先から衝撃波が迸る。

ビュンッと空を切り、エンディのみぞおちを貫く。



激痛が体を裂き、エンディは膝をつく。


腹部を見ると、拳大の風穴。血がドクドクと溢れる。


吐血し、うつ伏せに倒れる。  



「エンディーー!!」

ラーミアの叫びが空気を刺す。


だが、エンディは顔を上げ、ヴェルヴァルト冥府卿を睨む。不屈の瞳が燃える。


カインが動く。


ヴェルヴァルト冥府卿の全身が炎に包まれる。


だが、豪火は効かない。骨すら焼き尽くす炎の中で、ヴェルヴァルト冥府卿は悠然と立つ。


「なんなんだよ…こいつ…!!」カインが慄く。


「脆いな…お前たち天生士(オンジュソルダ)は。昔も今も。」ヴェルヴァルト冥府卿が呟く。


鋭い眼光が閃き、炎が消滅する。


エンディは患部を押さえ、立ち上がる。

肩で息をし、意識が揺らぐ。それでも拳を握る。


ヴェルヴァルト冥府卿が動く。


人差し指と親指でエンディの頭を掴む。


「なにすんだ…離せよっ!」

エンディが足をバタつかせる。


「飛べ…地の果てまで。」冷酷な声が響く。


エンディが放り投げられる。


「わああぁぁぁぁぁ!!」

絶叫が遠ざかり、数秒で姿が消える。

 


「エンディー!!」「おい…うそだろ…?」

ロゼとノヴァが凍りつく。


アベルとアズバールは言葉を失う。


カインが吠える。


「てめえー!この化け物がぁ!!」

顔面を蹴るが、ヴェルヴァルト冥府卿は動かない。


イヴァンカが背後から首を斬りつける。


「頭が高いぞ、魔族の王よ。」

剣が閃くが、傷一つない。


皮膚の硬さか、攻撃を無効化する力か。


答えは見えない。


ヴェルヴァルト冥府卿が掌を向ける。


「お前達も飛ぶか?」


カインとイヴァンカが宙を舞う。


一瞬で視界から消える。


外傷か、生死か、誰も追えない。


天生士(オンジュソルダ)最強の三人が、あっさりと大敗してしまった。


ラーミアが震える。

恐怖が喉を絞め、言葉が出ない。


ヴェルヴァルト冥府卿が近づき、足音が大地を軋ませる。  



「扨…ラーミア、お前はもう"用済み"だ。肉片一つ残らない、残酷な死を与えてやる。」

500年前、ラーミアと同じ力に封印された記憶が、狂信的な憎悪を燃やす。


ロゼの目が鋭くなる。"用済み"という言葉が胸に刺さる。何かを見抜こうと、眉を寄せる。



強すぎる冥府卿

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