3話 かえりみち
「はぁはぁはぁ.....」
息を切らし走るペタルダその横で叫び声を上げて飛んでいる
「ギャーーー!!何あの黒いの!?なんも言わずに攻撃してくるし、何なら爪とか僕の服を掠ってなかった!?犬っころの癖にふざけんなよ!!」
フォルを黙らせるかのように横の木が切り倒される
「犬っころとか言ってさーせんしたーー!!」
叫び声の数分前、ペタルダとフォルは談笑しながら歩いていた。
そんな2人の背後から黒い影が物凄い速度で迫る
バキッバキッバキ!!
フォルから見て右側の木が突如切り倒される
「......ッヘ?」
突然の出来事にひょうきんな顔をしている
「わあっ!?」
驚きながらもフォルの手を引いて逃げ出すペタルダ、見るからに対話不可能な黒い狼が威圧感を放ち攻撃してくる
バキッバキッバキ!!
進行方向を変えて隠れようにも先回りして塞いでくる、相手が逃げるのを楽しんでいるのか目と鼻の先まで近づいても直接攻撃はしてこなかった。
「ッ!!テロスむらだ!!」
赤い旗のかかった木の塀、近くには物見台が見える
「だれかー!!たすけてーー!!だれかーーー!!」
大声で助けを求める
「ん?何か声がしないか?子供の声。」
物見台で2人の警備兵が話している
「子供の声?そういやセルモさん家の子供が行方不明だって言ってたな...ん?おい!?あの子だ!叫びながら走ってきてるあの子!!」
眼の良い警備兵がペタルダを見つけたようだ
「マジか!?って何処だよ!??木でよく見えねえ!」
もう一人の視界は木で埋め尽くされている
「リュコス種に追われてる!!イドス!お前は梯子持って来い!!俺はあの子を助けに行く!!」
「り、了解!!」
一刻を争う事態と判断し塀から飛び降りペタルダの元へと向かう警備兵
「そこの君!名前は確か...ペタルダ!」
「ペタルダ!そのまま真っ直ぐ走ってこい!!」
警備兵は叫びながら左手を向ける
「その子から離れろ!!」
ビュオオオオ ザザァァン
魔法で小さな竜巻を操り、上から弧を描くようにペタルダの後ろに着弾させる
ザッザッ!
跳ねた土が落ちる前に駆け寄り素早く脇に抱える
「わっ!」
「少し我慢してくれ!」
ビュオオオオ
背中に風を当て塀まで走り抜ける
「くそっイドスはまだか!?」
塀に着くも梯子を持った警備兵がまだ来ていない
「ペタルダ、俺の後ろに」
「うん」
塀の方にペタルダを降ろし剣を抜く
「アイツどこ行った?」
塀に施された魔除けに慢心せず姿の見えない魔物に警戒する
カササァーカササァー
静寂に耐え切れなかったのか葉の擦れる音が鳴り響く
「おーい!!梯子持ってきたぞー!!」
息を切らしながら2人を探す
「こっちだ!!右!右だ!!こっちに掛けてくれ!!!」
2人の後ろに梯子が掛かる
カッカッカッドサッ
「よし、これで大丈夫!!ペタルダ、よく頑張ったな!!」
塀の上で優しく声をかける
「...ふぅ、かえってこれたぁ」
安心した口からは空気が抜け、疲れ切った顔を夜が迎える、揺れる光がペタルダの無事を村へ伝えに行った。