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2話 あらためて

平凡な村に住むペタルダは森の奥地で白い球に乗った少年フォルと出会う、行き場のないフォルを連れて村に帰ろうとするも迷子になり途方に暮れている2人は体長3メートルの足の長いカバに出会う

〈アフリカで危険な動物と言えば?〉

と質問された時あなたなら何と答えますか?ライオン?ワニ?それとも毒ヘビ?

様々意見があると思うが一番人を殺しているのはカバである


そうカバ


牙の生えたでっかい口でバクっと嚙みつかれてお陀仏、逃げようにも時速30キロを超えるスピードで追っかけてくる、恐怖でしかない

そんなカバが殺傷力を持ったまま、足が伸びてより素早くなったらどうだろう


「」


「何アレ?カバ?」


フォルはここに来たばかりでその魔物がどんな生き物か知らない、ただわかるのはふと頭をよぎった[カバ]という単語と如何にも重量級な見た目の顔のでかい生き物という事だけ


「アイツのこと知ってるか?」


ペタルダに問い掛ける


「しらなーい」


あまり村の外に出たことが無いペタルダもどんな魔物かよく分かっていない


「じゃあ危険かもしれないということでは!?早く逃げないか!?」


先程から恐怖で威厳を保った喋り方ができなくなっている


「キエェェェェェェェェ!!!!」


白い鳥が発した甲高い奇声が森中に響き渡る


「次は何ーー!?」


頭を抱えるフォル

どうやら肉食種の鳥類キルケトロスがそこの[カバ]ヒポトロスを次の獲物にするようだ


「ここあぶなそうだからあっちににげる?」


「逃げるぅーーー!!」


この世界では人間を含むほぼ全ての生き物が体内に魔晶石を有しており、争いに魔法が使われる事があった場合激化しやすい

よって近くで見ていたわけではないが逃げる判断に至ったのだろう

そんなこんなで逃げる2人にはお構いなしに2匹の魔物は一歩も譲らぬ戦いを繰り広げる


「グオォォォォ!!!!!」


ヒポトロスは背中の魔晶石から無数の水球を生み出し渦のように回転させキルケトロス目がけて打ち出す


「キエェェェェェェ!!!!」


キルケトロスは翼の付け根に生えた魔晶石から風を勢い良く吹き出し素早い方向転換で渦の合間を縫って残り1メートルまで接近し至近距離で風を巻き上げ球状にしてヒポトロスにこれでもかと打ち出す


「グオォォン!!!」


ヒポトロスは打ち出された球を水の質量で減速させていくが無数に放たれた風の球全てを防ぐことは出来ず着々ダメージを負っていく


「グオォォ....」


ヒポトロスがよろけて下を向く、追い討ちをかけるようにキルケトロスが突っ込んだ瞬間、2本の大きな牙が生えたその大きな口で嚙みつこうとするヒポトロス


「キェェ!!」


不意打ちを避けるように羽を大きく広げ付け根の魔晶石から風を逆噴射し逃げようとするキルケトロス


「キエェ!?」


が後ろには水の壁が立ちはだかる、ヒポトロスは放った水球にあえて魔法をかけたまま放置しキルケトロスが突っ込んできたタイミングで集めて背後を水で覆わせたのである


「キェェ!」


逃げ場が無いキルケトロスは風を纏い水の壁を強引に突破しようとするが減速してしまう、俊敏なヒポトロスがその隙を狙わないはずがなく


ガブッ!!!


がっしりと噛みつかれてしまう


ボキボキボキッ!!!


反撃ができないよう相手の骨を確実に折っていくヒポトロス


「キェェ....ェ....」


「....」


ぐったりとするキルケトロス


「グオォン!!!」


シュッ


バキッバキッドカーンッ!!


「うわっ!?」


これ以上戦闘は続かないと判断したのかキルケトロスを遠くに飛ばして

ヒポトロスは森の奥へ消えていった。


一方で自然界の争いに巻き込まれまいと逃げていたペタルダとフォル、後ろで鳴っている戦闘の轟音が小さくなった事に安堵したのも束の間、2人の真横を1つの影が物凄い速度で通り過ぎる


「うわっ!?」


その影は直線上のモノをへし折りながら飛んでいき先の方にある幹太い木で止まった


「し、死ぬかと思った....今の何???トリ??怖すぎだろ。」


一瞬の出来事に心拍数が上がり、やや興奮状態のフォル


「.....」


先を静かに見つめるペタルダ


「お、おい少年?どうした?失神したか?おーい!聞こえるかー!」


顔の前で手を振り意識があるか確認する


「いってくる」


何を思ったのか手を避け走り出す


「え、ちょ、ま、待って、置いていかないでぇー!」


張りつめた顔で使命感を感じたように走り出す、焦っているのか途中でコケて泥だらけになりながら


「ちょっと、待って、待ってよー!あ、コケたし、ほらーそんな焦って行くからー」


ペタルダの体を持ち上げ体勢を立て直す


「ありがとう、でもはやくいかなきゃ.....」


顔を上げ、前を向き走り出す


「ッ!!」


飛んできた影の惨状を目の当たりにしたフォルは思わず息を吞む、そこには翼の付け根が左右でズレて青白く変色し、魔晶石も亀裂が入り、身体中あちこちの傷痕が血で滲んでいる、呼吸もか細く今にも死にそうだ。


「.....」


ペタルダは魔物の前で立ち止まる


「少年、その生き物はもう長くない全身の骨が砕け散っている、人為的な救命活動を行ったとしても成功の確率は極めて低く設備も必須だ、諦めて村に向かうことを推奨する。」


実際この魔物を助けるには体内で砕け散った骨をつなぎ合わせて神経の通り道を作り、魔晶石から肉体に神経の修復を促し回復させる必要がある。


「.....」


黙って目の前の魔物に近付くペタルダ


「.....もう一度、分かり易く言うぞ、その生き物は助からないと言っている。知識を持った大人が道具を使って治して成功するかどうか分からない、子供の君には無理だ。」


魔物に向かう少年を諭す


「かみさまっていってたよね、どうにかできないの?」


魔物の容態を観察しながら問い掛ける


「.....出来る、出来るがその生き物は戦って負けた、これ以上は運命に関する内容だ。神は運命に干渉してはいけない、だから助けることはできない。」


それを聞いたペタルダは小さく息を吐き魔物に向かって手を向ける


「ッ!!」


精一杯の力を込めて魔晶石に魔法をかける


「無理だって言ってるのに.....ん?」


すると見る見るうちに亀裂が塞がっていく


「.....それでも延命措置をしただけで苦しみが長くなるだけだよ。」


魔晶石の修復は簡単で大量の魔法かけて亀裂を塞ぐだけ、亀裂が塞がれば魔晶石が持つ再生の力で細胞の修復を促進させることが出来る。だがフォルの言う通り、これは止まっていた再生能力を元に戻しただけの延命措置でしかなく、砕けた骨を何とかしなければ死んでしまう。


「ねぇ...もう諦めよう?子供なのに魔晶石直せたのは凄いし、出来ることはしたよ...」


そう言って慰めようとした瞬間


パチッ


目の前の魔物が瞼を開き勢い良く飛び上がった。


「キエェェェ!!!!」


先程まで戦っていた為、まだ興奮状態の魔物が今助けられた存在に向かって威嚇する


「だいじょうぶだよー」


尻もちをついたペタルダが片手を振り敵意が無いことを示す


「・・・・」


興奮状態にあった魔物はしばらくペタルダを見つめた後、高度を上げどこかへ飛んで行ってしまった。


「なんだよお礼とかないのかよ、少年もなんか言ったら?こんだけしてやったのに何もなしとか最悪だろ」


ペタルダの努力に見合わぬ結果にフォルは不快感を示す


「おぉ...で、できたぁ、な、なおせたぁ...」


一方で無理だと言われた治療を成功させたことに昂揚感を隠せていないペタルダは脱力して大の字になっている


「.....お前はそういう人間なんだな」


一瞬驚き、安堵とも諦観とも取れるような溜息のあとペタルダの横まで移動する


「改めて自己紹介を、僕はフォル。君名前は?」


少しくだけた優しい声色で問い掛け手を差し伸べる


「え、ペタルダ。いってなかったっけ?」


差し伸べられた手を取る


「言ってなかったぞペタルダ、あとさっきの治療中に村らしきモノを見つけたから行こう。」


「うん!」


今度こそと村に向かって歩き出す。空が焼けてきた。

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