【8】天使ちゃんとの同居せいかつ
「うわー、おばさんが作ったお料理はいつ食べても美味しいです!」
「もう。天使ちゃんは昔からいつもそうやって褒めてくれるわよね。それに比べてうちの男どもはご飯が出てくるのが当たり前だと思ってるから―」
そう言って俺の母が普段の不満をわざとらしくぶちまけているのを尻目に俺達は夕食を食べていた。
我が家の食卓に何も違和感なく馴染んでいるさっき出会ったばかりの少女。
こう見ていると本当に何も違和感が無く、昔から天使ちゃんがウチに居たのでは無いかと錯覚をするような俺の家族とのやり取りだった。
だけど……。
本当に俺はこの子とさっき初めて会ったはずに決まっている。
こんな可愛い美少女がウチに昔から何度も入り浸っていたなんて記憶忘れようがないからだ。
ということは……昔から体型が大きく変わったとかなのか?
そんな失礼なこと女の子の前で聞くわけにもいかないし……。
それに、天使と言うこのインパクトのある名前……。
そう簡単に忘れるものなのか。
自分の記憶に対して自問自答を繰り返しながら俺は夕食を食べ進めていた。
すると母が俺に話しかけてきた。
「あっ、そうそう。天使ちゃんのお部屋あんたの部屋の隣の物置部屋を片付けて使ってもらうことにしたから」
「あーあそこね……。って、えっー!?部屋を使うってどういう事?この子まさか今日ウチに泊まるってこと!??」
俺は驚きのあまり喉を詰まらせかけ、目の前にあったお茶を含みながら言い放った。
「何を今さらそんな驚いてるんだ。前から決まっていたじゃないか。今日から天使ちゃんが高校を卒業するまでウチで面倒を見ることになったってずっと言ってきただろう」
父も俺の反応に対してふざけているのかと言うような反応で平然と返してきた。
いや、驚くでしょ!
こんなさっき初めて顔を合わせた子がウチにしばらくの間一緒に暮らす―つまり同居することになるなんて!
「いや……高校卒業までって……。後1年以上もあるじゃないか!って事は……同じ高校に卒業まで通うってこと!?」
「だから前からそう言ってるじゃないの。こんな可愛い子と高校生活を送れるなんて幸せだと思いなさいよ。今日あんたの通う学校に転校手続きを行って、週明けから一緒に通うことに正式に決まったんだから色々と教えてあげなさいよ」
「えっ……ちょっとそんな話し本当に―」
「―おばさん心配いらないですよ!今日も帰りにファミレスで色々と奢ってもらって学校のこと教えてもらったんで。こんなとぼけた態度を取ってても昔から優しいの知ってるんで」
戸惑う俺を尻目に自称天使ちゃんは自身の存在を正当化しようとしてるように俺は感じた。
いったい今日出逢ったばかりの不思議なこの子は本当に何者なんだろうか。
親達はどうやって俺の知らない記憶を植え付けられているのか?
それとも……逆に俺が彼女の存在の記憶だけを忘れてしまっているのか。
俺が自称天使ちゃんに聞かないといけないことがまだまだいっぱい残っていた。