【5】自称天使の名前
「あー美味しかった!ご馳走さまでした」
目の前にいる自称天使は、パフェが入っていた2つのグラスを食べ残しがなく綺麗に完食をして、笑顔でそう言った。
「天使さんさぁ……」
「はい?何ですか?」
天使は『私の行動がどうかしましたか』と言ってるような口ぶりをしつつ、わざとらしくキョトンとしたような表情で首を傾げていた。
「何ですかじゃなくって!確かシェアをするために2つ頼んだよね?俺1口も食べてないんだけど!さっきからドリンクバーだけなんですけど!」
―てか美少女から人生初のアーンとかもちょっと期待したりもしたんですけど……。
「私が言うシェアってのはこう言うことなんですよ!もちろん私は天使でもあるんで、一口ぐらいは分けて差し上げようとは思ったんですけど、貴方は私から食べさせてもらうのは不満みたいだったので!」
「別に君自身に不満なんてことは一言も言ってないんだけど……」
「おなじですー!女の子はねちょっとしたことで傷つく繊細な生き物なんですー!ちゃんと反省して下さいよ」
「はい……わかりました」
頬をわずかに膨らませている彼女を見ながら反省をしつつ、さっき会ったばかりの見ず知らずの美少女にお説教をされているこの状況っていったい?と疑問にも思っていた。
「それに、さっきからちょくちょく言うその『君』って言うのもやめてもらえますか?なんか私の上司みたいな感じで嫌なんですけどー」
自称天使は長い綺麗な髪を指でくるくると弄って話していた。
「いや、だって君の名前まだ知らないし。他に呼びようがないじゃん」
俺の中では自称天使だけど……それじゃあ長いし自称をとって天使とか?
それだとこんな場所とかでは呼びにくいしなぁ……。
とりあえず、すんなりと名前を教えてくれたら良いんだけど。
「まぁ、それもそうですね。でも普通は男から率先して名乗るもんですよ!ここも減点ですね」
「はぁ……」
俺はこの子の点数ではマイナス何点になってるんだろうと疑問に思った。
「えっと、名前はさっきからもちょくちょく言ってますが『天使』と言います」
「・・・・・。」
俺は目の前にあったドリンクのコーラを一口くちに含んだ。
「いや、ちょっと!何で黙ってるんですか!私の名前に文句でもあるんですか?」
「べ、べつに文句はないけど。それ本当に言ってる?」
「疑ってるんですか?私だって冗談でこういうこと言いませんよ!」
可愛い『自称?天使』ちゃんの顔が眉間にシワを寄せて強張って言ってるのを察知したので「わかった、わかった。それで、天使さんは名字になるの?それとも名前?」と、とりあえず納得することにした。
「名前ですよ!天使ちゃんと呼んで下さいね」
「あっ...…そうですか。天使ちゃんよろしくね……」
「はい、こちらこそ!」
笑顔で微笑む自称天使さんのお名前は天使ちゃんだった。
俺はこの時、この子と関わってしまって良かったのかと酷く後悔していた。