【3】美少女の正体
「そう言う訳にいかないってどういう事?」
いま俺は好きな人にフラれて足早に帰ろうとしていたところを校門前に居た謎の美少女に文字通り掴まっていた。
「はぁ……。貴方には伝えとかないといけないですよね」
俺の腕からスルリと手を離し、自身の長い髪を耳に掛けゆっくりと話し始める彼女。
「私、実はですね……」
「ゴクリ」と唾を飲み込んで深刻な表情で話す彼女を見つめる。
「天使なんですよ」
「・・・・・」
俺と美少女、二人の間にしばらく沈黙の時が流れた。
「……はい?」
この子は何を言ってるんだろう?こんな清楚でしっかりとした話が出来る子なのに……やっぱり俺はからかわれているって事なのかな。
「はい?ではないですよ。そんな沈黙の時間を作るから女の子に好かれないんですよ!」
そう言いながら、左手を腰にあて右手の人差し指を上げながら前屈みになる美少女。
何このポーズ!神ですか~!!
と、少しテンションが上がったものの、この何か考えがずれた美少女を何とかしないといけないと平然を保とうとした。
「いや、まぁ確かに沈黙の時間を作るのは良くないとは思うけど……でも、君が天使とかよく分からないことを言うから」
「……確かに信じられないのは無理ないですよね。でも本当なんですよ。私は天使なんです」
「……あっ、そう。まぁ仮に君が天使だとして―」
「―あっー!その反応信じてないですね!私本当に天使なんですからー!」
「はいはい、君がその天使だとして白い羽根でも生えてくるの?それに天使だと髪が金髪ロングのイメージでもあるんだけど……」
「金髪ロング=天使は偏見ですね。天使だって髪の色は好みによって変えますし。あと、私は白い羽根は生えないですね」
羽根も生えない天使って、ただの人間じゃん。やっぱりこの子は俺の事をからかってるって事だよなぁ……。
「そっかそっか、分かったよ。俺も生きてる間に天使に会えてよかったよ。それじゃあね」
俺はもう一度わけの分からないことを言う謎の美少女の前から立ち去ろうと歩き出した。
「だ・か・ら!待って下さいよ!」
今度は俺の両腕を掴んできた天使さんだった。
「待つって、俺は別に天使さんには用事はないの。それとも俺を天界にでも連れて行く気?それでも別にいいよ。どうせ何をやっても上手くいかないなら天界でもどこへでも連れて行ってくれても」
「あぁもう!何なんですか!貴方はそんな言い方しか出来ないんですか?そんな貴方でもね私の協力をしてもらわないといけないんですからしっかりとして下さいよ!」
謎の自称天使に協力?
どうやら知らない間にややこしい事に巻き込まれ始めているようだった。