【1】きっかけは突然に
あーもう…またか。
―俺はこれまでの人生で思い通りになったことがない。
幼い頃からそうだった。
テスト勉強をしても自分の勉強したテスト範囲は全く出なかったり、仲良くなりたいと思い近付いた友達とは不運なことが重なりケンカ別れになったり……。
今もまさにそうだ。
高校受験に失敗してしまい、滑り止めとして入った高校で初めての恋―初恋―をしてしまったが……。
「……ごめん。俺、コイツと実は付き合ってるんだよね」
クラスの中で一番の巨漢である同級生が、汗まみれの手で好きな子の肩に手を回している姿が俺の目に焼き付けられていた。
『その子に触れるな!!』
そう言って俺は好きな子の肩に掛かっている汗まみれの手を振りほどき、彼女の手を掴んで駆け抜けていく。
―ラノベとかであるお約束の展開はそうであるはずだ。
……でも。この目の前に映る彼女の幸せそうな姿を見るとそんなことが出来るだろうか……。
例えやったとしても俺は彼女からすれば恋路を邪魔するだけの、ただの厄介者だ。
お互いに何の特にもならない。
それぐらいはぼっちで生きてきた俺でも分かる。
「あーそうなんだ。ごめんね、気づかなくて。お幸せに……」
適当にその場を取り繕って早くどこかに逃げたかった。
ようするに、この場で言う俺は―負け犬―だ。
例えどんなに、ルックスや中身であの男に勝っていようが、好きな子の彼氏はあの男であり、その現状に好きな子が満足しているのであれば俺にはどうすることも出来ない。
結局今日も思い通りにいかなかった俺は、校舎裏というベタな告白場所から足早に移動をして帰宅しようと校門前まで移動していた。
俺の努力が足りないのか何なのか…。
まぁ俺の努力が足りないからこうなってるんだろう。
でも、努力だけで全てをどうにかすることも出来ないと最近は少し思い始めてる部分はある。
世の中多少の―運―も必要だろうし、生まれ持った―何か―が必要なのも確かなのかもしれない。
「それじゃあ、その生まれ持った貴方に無いものをお裾分けしましょうか?」
「……えっ」
突如どこからか声が聞こえたので辺りを見渡すと……黒く髪の長いまさに―清純派美少女―としか言いようの無い同じ学校の制服をまとった女の子が校門前で立っていた。