Happy Bird
父さんが見た夢の話をしよう。
聞いてくれるかい?
ほら、ときどき散歩に出かける道があるだろう?
そう、あの小さな本屋と帽子店のあいだの、ゆるやかな坂道になっている。
ちょうど雨が上がって、湿り気をおびた空気が心地よくて、鼻歌まじりに歩いてたんだ。
そうしたら、ふいに足元に鳥がいるんだ。
小さくて黄色くて、可愛らしい。
でもボサボサなんだ。
ちょうどブナの木が三本並んでる辺りだよ。
その鳥がね、僕が歩くとついてくる。
すぐ後ろをちょんちょんとついてくるんだ。
すぐそばに鳥の巣のカケラみたいなものが落っこちていたから、僕がこわしたんじゃないかと疑っていたのかもしれない。
でもね、せめるような様子もなくどこまでもついてくるんだ。
やがてほら、丘が見えるひらけた場所に出るだろう?
そこまで来てとつぜん、黄色い鳥は飛んで行ってしまうんだ。
なんのまえぶれもなくね。
ただ、それだけなんだ。
それだけなんだけど、なんとも心に残ってね。
飛び立つとき、鳥はもうボサボサじゃなくなって、黄色くてきれいな羽をまっすぐに伸ばしてたんだ。
眠りから覚めて、父さんはこの黄色い鳥を幸せを運ぶ鳥だと思うことにしたよ。
そのほうが、ほら、ちょっとわくわくするだろう?
うん、そうだね、幸せの鳥は青。
でも何色だっていいじゃないか、みんなそれぞれ好みの色はちがうんだ。
きみも好きな色に決めればいい。
おお、なるほど、いい色だね。
せっかくだ、きみの心の中に住まわせて時々話しかけてみるといい。
存外、頼れる相棒になるかもしれないよ。
迷った時、悩んだ時、心の中で問いかけてみる。
そうすればきっと、きみだけの小さな鳥が幸せへと続く答えに導いてくれるさ。
父さんが見た夢の、あの黄色い鳥のようにまっすぐに羽を伸ばしてね。