姉妹なだけなのに
人間「やーい、ケモしっぽ〜」
寂滅「…………」
寂滅には狼のような尻尾が生えていた。故に毎日周りから揶揄われていたのだ。
叡智「おい」
人間「げっ、姉貴が来たぞ」
人間「にげろー!」
叡智「………チッ。寂滅、何かされたか?」
寂滅「ううん、まだ。ねぇ、姉さん。私の尻尾ってそんなに変なのかな?」
叡智「ははっ! 何言ってんのさ、狼の尻尾とかめっちゃかっこいいしもふもふで良いじゃない。私はそのままの貴方が好きだよ、だから気にしないで」
どうしてこの子の魅力を皆わかっていないのか。
でも大丈夫、お姉ちゃんだけはわかっているから。
周りに何と言われようとも、私だけは褒めるから。
そのことがこの子にとって私が何よりも大事な存在であることの証明。
そう。産まれた時からずっと一緒に居たし、この子の味方は私だけ。
私は寂滅の一番なんだ
これからもずっと―――
寂滅「……あっ、姉さんおはよう!」
叡智「………え………な、な、なんで……なんで尻尾がないの……?」
蒼冬「おっ、さっそくやったんだ」
寂滅「あ、蒼冬ちゃんだ」
叡智「は?」
蒼冬「いや、私が言ったんだよ。『そんなに煩わしく感じる尻尾ならいっそのこと千切れば』ってね」
叡智「なっ……それだけで……? たったその一言で……私は……私は……」
寂滅「もちろん姉さんが庇ってくれたのは嬉しかったよ。でもみんな尻尾生えてないじゃない、だからやっぱり私も同じになりたくって。そうすればみんな振り向いてくれるかなーって! 尻尾が無いとバランスとりずらいけどいずれ慣れるだろうし」
叡智「……バカバカしいにもほどがある!!」
寂滅「?」
叡智「同じ姿にならないと振り向かないような目腐れ野郎になんの価値がある!? 私なら……そのままの貴方を愛しているのに!!」
寂滅「えっと……蒼冬ちゃんは揶揄われている時一切笑わなかったし……そういう人と同じになりたいなーって」
叡智「それは私だって同じだろ!? それどころか私は貴方を庇ってた!! そいつはただ見ていただけじゃないか!!!」
蒼冬「な、なんで怒ってるんだ……?」
叡智「どうして私じゃダメなんだ!! 私はずっと貴方を見てきた!!! 貴方の恋人は私が一番―――」
だって姉さんは姉さんじゃん。
叡智「な………」
蒼冬「寂滅殿、購買行かないか?」
寂滅「あ、そうだね。ごめん姉さん、もう行くね」
叡智「待っ……」
どれだけ愛していても
どれだけ愛されていても
『姉妹』ってだけで
貴方の1番にはなれないの……?
叡智「う……あああああああああ!!!」
私はこの日ほど自分があの子の姉であることを恨んだ日はなかった。
こういうのはやっぱりこの二人に限る