最終話 みんなで話し合いました
最終話 みんなで話し合いました
要は能にエスパーダを任せて、一緒に要の家に帰る。酔っているため要は力加減が出来ないからと能にキツく言われたからで、実家からエスパーダに触れていない。
「ごめんね、お義姉様。お母さんがあんなだとは思わなかったよ」
「だから帰ろうって言ったんだ」
要はイラついていた。エスパーダや能に当たるのはお門違いだが、攻撃対象から離れていっているのでこうなってしまった。
「言えば良かったのに」
「エスパーダを傷付けるだろ。俺から言ったら俺が悪者になる」
「要……」
エスパーダは能がどてらの代わりに着た、ブルゾンのポケットから顔を出していた。要のポケットと違って、横向きに付いているので居辛そうだ。
「それに能がモテないと言わなくちゃならなくなるからな」
「言い返せないのが余計に腹立つ。お兄ちゃん誰か紹介してよ」
「今フリーなのは師匠とアックスくらいだな。想には都がいるし」
「小人限定かあ」
能はガッカリしていた。
「小人族はイヤ?」
エスパーダが能に聞いてくる。
「うーん、私は興味ないってだけ。お義姉様のことは外国人くらいの認識だし」
「私、コロンビア出身だから外国人でもあるよ」
「へえ」
能の認識はあまり変わっているようには感じなかった。
「俺はエスパーダのこと好きだから! 結婚したいって思ってるから!」
酔いが回っているのか、要は大きな声をあげた。幸いにも元旦なため聞いているのは能とエスパーダだけだった。
「恥ずかしい」
エスパーダはそう言うとポケットの奥に逃げた。
「お義姉様は照れているから、その辺でやめておきなよ。お兄ちゃん」
「だけど俺は……」
「気持ちの押し付けは良くないよ。お母さんみたいだから」
「お前だって、お年玉が欲しいって気持ちを押し付けて来たろうが」
要はお年玉を払わされたことを蒸し返す。
能はため息をついた。
「家族ってことだね」
今度は要がため息をついた。
能は要の部屋までついて来た。その事を非難すると、このまま実家には帰り辛いと言い出した。
「今日は泊めて」
「寝袋しかないぞ」
「なんで客用の布団買っておかないの?」
「出来ればエスパーダと二人だけで暮らしたいからだ」
「酔ってるとのろけが半端ないね」
「そうだね」
テーブルの上に下ろされたエスパーダは顔を赤くしていた。嬉しいけど恥ずかしいようだ。
「明日は帰れよ」
「えー、やだ」
「じゃあ父さんのところでも行けば?」
「イヤだ。タダでエスパーダの服作るからしばらく居させて」
タダという言葉が強欲な能から出るということは相当追い詰められている。
味方をしてくれたし、エスパーダのために怒ってくれた。だから能を助けてやりたいが、酔った頭では決断を下すまでには至らない。
「うーん」
考えているとエスパーダが言った。
「要、能ちゃんにいてもらおう」
「良いのか?」
要としては二人きりではなくなるのがイヤなのだが、エスパーダは頷いてしまう。
能に対する情も何割かあるため、要は能を受け入れた。
「よし、ゲームやろ」
エスパーダと能はスマホを取り出してゲームを始めた。正月は振袖キャラが排出される。また課金するかもと要は気が気でなかった。