七話 なんか険悪な雰囲気です
七話 なんか険悪な雰囲気です
能と一緒に風呂から出てきたエスパーダはパジャマを着ていた。この前作って貰ったパジャマとは別の物だ。
「お風呂いただきました」
さっぱりした顔で、エスパーダは才に言った。
才は複雑な表情を浮かべている。
その態度を見て、要は不機嫌になる。
「エスパーダ、帰ろう」
「え? お風呂に入ったばかりだよ」
「泊まるわけにはいかない。寝てる時にコバンから守れないし」
「そうだよね」
エスパーダだけではなく能もガッカリしていた。
「おせち食べていけば?」
「良い。帰る」
要はエスパーダに手を伸ばした。しかしエスパーダは逃げる。
「要、なんか怖い」
怒っているので、優しくしなきゃいけないことまで雑になっていたようだ。でもこの怒りは正当なもので、そしてそのことをエスパーダには話したくない。だが共感を得られない怒りは孤立を生む。
だからエスパーダは、
「残って能ちゃんと話す。後おせちも試してみる」
と言って居残りを選んだ。置いて帰ってまたコバンに襲われたら困るし、能が不届きなことをしないとも限らない。それに才もエスパーダに嫌味を言う可能性もある。
「分かった。どうなっても知らないからな」
要は冷蔵庫へ直行し、発泡酒を持ってきた。酒で怒りを封じ込めるのだ。
才も要もこたつから動かないので、能がエスパーダをもてなすことになった。おせちの入った重箱を持って来た。
「お雑煮食べる?」
「餅は死ぬ自信があるからパス」
「喉ちっちゃいもんね。オッケー」
代わりにおちょこと発泡酒を持ってくる。
「酒ならいけるっしょ」
「まあね」
おちょこに注がれた酒を優勝力士のように一気に飲み干してみせる。
才がさらにガッカリする。
「能ちゃんは?」
「お義姉様を送ってくから飲まないようにしてんの」
「要、重いよ」
「いざとなればお義姉様だけ連れてけば大丈夫。コバンはお兄ちゃん襲わないし」
「そっか」
エスパーダは安心したようで二杯目に取り掛かった。