六話 能ちゃんとお風呂に入りました
六話 能ちゃんとお風呂に入りました
要はエスパーダと一緒に風呂へ入る気でいたが、能に止められた。
「実家でイチャつくとか信じられない」
風呂イコールイチャつくの概念は要にはなかったが、冷静に考えるとそう見えるかもしれないと納得した。それに風呂上がりの後に実家の空気が悪くなる予感がしたし。
「さあ、お義姉様。一緒に入りましょうね」
能がエスパーダを連れていってしまう。コバンといい、エスパーダは高星家に人気がある。
「要、エスパーダさんのことで話があるの」
母、才も同様らしい。
「何?」
「家ではどんな風なの? やっぱり小人っぽい格好とかしてるの?」
まだ夢を捨てきれていないようだ。
「普通にパジャマとか着て、ゲームしてる」
「ゲーム……」
また母親の夢を打ち砕いたようだ。
「家事は?」
「俺がしてる」
「それ一緒にいる意味ある?」
身内であるがゆえにオブラートに包まないむき出しの本音に一瞬詰まる。悪意はないのだろうが、聞き捨てならない言葉だ。
「あるさ。好き同士だし、付き合ってる」
「でも一生なわけじゃないでしょう? 結婚して、子供だって欲しいでしょ?」
「確かにエスパーダに戸籍はないけど、事実婚てのがある。子供は無理かもしれないけど」
「孫の顔を見たいと思っちゃいけないの?」
「俺がダメでも能がいるだろ」
「あの子のどこに男にモテる要素があるのよ」
なかなか厳しいことを言う。
「私は反対よ。小人と付き合うのは」
「なんでさ。エスパーダと仲良く出来そうだったじゃんか」
「だって借り暮らしじゃないのよ。期待してたのに」
どうやら才はエスパーダが自分の抱いたイメージと違ったことを根に持っているようだ。
「父さんならそんなことは言わない」
「なんであの人のことを持ち出すのよ。あの人は家族よりも変な研究を取った人よ」
才は怒り出した。要も詳しくは知らないが、たしか父親は超能力の研究をしていたはずだ。そして今はどこでどうしてるのか分からない。
「母さんがエスパーダを認めないからだ」
「認めないわけじゃないわ。結婚はダメと言っているだけ」
「それは認めてないことになるだろ」
才と要の意見は平行線をたどり、どちらも折れることはなかった。