二話 おみくじを引いてもらいました
二話 おみくじを引いてもらいました
賽銭を投入して、二礼二拍手。要はエスパーダとの生活が続くようにと祈った。
他にも参拝客がいるためにすぐにはけて、おみくじの売り場にやって来る。巫女服を着た女性に二人分の金を払って、くじを引く。一人で二人分を買ったので、変な目で見られた。
要はエスパーダにおみくじを選ばせて、結果で対決しようと目論んでいた。しかし参拝客の多い神社ではエスパーダをポケットの外に出すわけにはいかない。
要は駅へ向かい、多目的トイレに駆け込んだ。簡易ベッドの上にスーツ姿のエスパーダを置いて、おみくじを彼女の前に置いた。
「どっちが良い?」
「左」
「じゃあ開けよう」
おみくじを開いた。大吉だった。
「エスパーダは?」
「吉」
要の勝ちは確定した。しかしエスパーダは悔しがった様子もなく、おみくじに目を通している。勝負事は同じテンションでぶつかり合わないと嬉しさが減るのだ。さらに相手が悔しがってくれるとなお良しである。
「家族間の揉め事に注意だって。これから会いに行くのに」
エスパーダは困り顔で要を見上げた。
「大丈夫。俺は大吉だから、良い方向に向かうように努力してみるさ」
「任せたわよ。能ちゃんの家には猫がいるって話だから」
エスパーダは首の辺りを触った。首には金属の輪っかがはめられていた。要には猫対策だと言っていたが、そこまで警戒する存在なのだろうか。まだまだエスパーダの事を完全には理解していないようだ。
要はエスパーダをポケットに入れてトイレを出た。そしてそのまま上りのホームに行き、ちょうど来た電車に乗って能の家のある駅へ行く。
後は徒歩で五分ほど。階段を登りに登った丘の上にあるアパートの一室だ。
チャイムを鳴らすと、ドアが開いて能がスウェットの上にどてらという姿で現れる。
「あけましておめでとう」
そう言うなり、能は要に向けて両手を差し出した。