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ひとまず、おつかれさま。

 

 5年間、続けたね。


 本当は去年辞めるはずだった習い事。



 辞める話をしに行くって言っといて、見事に先生にまるめこまれて、「辞めない! 続ける!」って帰ってきたときは「うっそーん……」って思ったけど。


 毎日練習する! がんばる! ってすごい気合入ってた割に、次の日にはすぐに通常モード。


 まあ、わかってたけどね。


 怒ってないよ。

 責めてるわけじゃない。


 こどもなんてそんなもん。

 私もよくさぼったし。


 私が子供の時よりよっぽどちゃんとやってると思う。偉い偉い。


 だから別に気にすることなんかないよ。



 100%好きなんて、あり得ないんだよ。

 それが普通。


 好きな部分もあるけど、嫌な部分もある。


 日によってその比率は変わるし、嫌で嫌でしょうがない日もあれば、いざ辞めようと思うと、なんか惜しくなってしまうこともある。


 揺れるよね。


 まあ、大人になっても、だいたい毎日そんなことの繰り返しだよ。

 



 大切なのはね。

 自分で決めることだと思うんだ。


 親に言われたから辞めるとか続けるとかではなくて。



 続けることも、辞めることも。


 自分で考えて決める。

 それが大切。



 自分で考えたことなんだから、自分の考えが変わった時点で、その考えを(くつがえ)してもいいんだよ。


 決めるのは自分。




 習い事で得た技術や知識なんかより、

 自分でどうしたいかちゃんと考えて、


 辞めようと思ったことを辞めてみたり、

 辞めようと思ったことを辞めたことをまた辞めてみたり、


 その過程が大事なんだと思うんだ。



 大変だったよね。

 人に決めてもらったほうが楽だよね。わかるよ。


 でもね、悪いけど、あなたは私の子だから、

 残念だけどそこは甘やかしてはあげられないんだ。


 あなたが自分の意志で決断できる人になってほしいから。



 いっぱい悩んだね。

 大変だったね。苦しかったね。

 たくさん泣いたね。



 辞めたい気持ちと辞めたくない気持ちと、たくさんこんがらがって大変だったね。



 大丈夫。

 辞めたからってね、失うわけじゃないんだよ。



 辞めたら最後

 そんなことはない。



 もう一度挑戦するって思えば、いつだってまたやり直せる。

 やる気さえあればね。



 私もね、剣道をね、いっぱい辞めたんだよ。


 中学の時は、人間関係で辞めて

 高校の時は、顧問とケンカして辞めて

 大学の時は、事故で竹刀が持てなくなって辞めて

 社会人の時は、道場主に吐くほどしごかれて辞めて……。

 最後のがトドメだったね。

 さすがに燃え尽きたよ。



 抜刀にも手を出してたんだけど、それも通うのやめちゃった。


 本物の刀がね、本当に怖かったんだ。


 鉄の重さも。

 刃の放つ光も。

 怖くてしょうがなかった。


 刀を持つことで、臆病な自分と向き合わなくちゃいけなくて。

 自分の弱さに勝てなくて、刀を振るう自信が持てなくて。

 すごく刀が怖かった。


 というよりも、刀を持ってる自分が怖かったんだよね。


 だから、向き合えずに逃げちゃった。


 何年も経つけど、未だに刀を持つのはまだ怖い。


 刀とは、もしかしたら一生向き合えないまま終わるかもしれないなぁ。



 定年を迎える頃には、今よりもう少しメンタルが強くなって、バッサバッサ斬れるようになったりするかなぁ。どうかなぁ。


 

 と、まあ。

 こういう人間もいるんだ。


 まあ、私の話はさておき。



 だからね、辞めたら終わりなんてことはないよ。



 辞めてみて、惜しいなって思えばまたやり直せばいいんだから。



 辞めてみて、楽になったなって思えば、今度は全然違うものに挑戦するのもいいと思う。



 あなたは自分で一生懸命考えて、一生懸命答えを出した。


 がんばったね。



 おつかれさま。




 あなたに素敵な新しい出会いが訪れますように。


 今年は久しぶりに、ゆっくり夏休みが過ごせそうだね。


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