【書籍2巻発売記念SS】オリビア、プレゼントを選ぶ(2/3)
本日2話目です。
エリオットとオリビアが百貨店に到着したところから話が始まります。
「ここですね」
2人は目的地である大きな百貨店に到着した。
元は食料品店だったのだが、色々な物を扱ううちに、どんどん大きくなった店で、巨大な建物の中には小さな店がたくさん入っており、多くの人で賑わっている。
2人は入り口から中に入ると、大きな階段の横に立ててある立派な看板を見上げた。
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1階 婦人もの売り場
2階 紳士もの売り場
3階 子ども、雑貨
4階 レストラン
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エリオットに「どこに行きますか」と尋ねられ、オリビアは考え込んだ。
本来であれば、2階の紳士もの売り場に行きたいところではある。
でも、エリオットは頭が良いから、
『紳士もの売り場に行きたい→男性へのプレゼント→来月自分の誕生日→もしかして自分?』
という感じで、誕生日プレゼントを買おうとしているのがバレてしまう気がする。
せっかくの初の誕生日プレゼントなのだ。
やはりサプライズを貫きたい。
考えた末、オリビアは厳かに応えた。
「3階に行きたいわ」
「分かりました。行きましょう」
エリオットと階段を上りながら、彼女は考えを巡らせた。
3階には、雑貨や小物がたくさん置いてある。
男女は関係ないものが多いから、そこで何か欲しいものがないか探ろう。
そして3階に到着し、彼女は目を見張った。
「すごい! 素敵!」
フロアには、雑貨を置いてある小さな店がたくさん並んでいた。
王都で人気のある文具の店や、異国風のランプや置物が並んでいる店もある。
2人は店の間の通路を歩き始めた。
「こんなにいっぱい雑貨店があるなんて知らなかったわ」
「つい最近リニューアルしたと聞きました」
キョロキョロと楽しそうに目を輝かせるオリビアを、
エリオットが楽しそうにながめる。
そして、雑貨や文房具、財布などの小物を一通り見てまわり、
彼女は、困ったわ、と頭を抱えた。
(エリオットが欲しいものが分からない)
店を見て回っても、欲しい物を見つけるのはオリビアばかり。
エリオットは一緒に見て、楽しそうにコメントはしてくれるものの、欲しがる様子がまるでない。
(やっぱり2階の紳士もの売り場に行った方がいいかもしれない)
きっとここには好みのものがないのだ。
紳士ものが揃った2階に行った方が確実だ。
そして、エリオットに「次にどこに行きますか?」と尋ねられ、
オリビアは覚悟を決めた。
サプライズにはしたいが、このままだと何も分からないまま終わってしまう。
もうバレてもいいから、ちゃんと目的を言おう。
「ええっと、わたし、2階に行きたいわ」
エリオットが、「2階ですか」と意外そうな顔をした。
「2階は、男性ものしか置いていませんよ」
「ええ、実は、来月誕生日の人がいて、その人へのプレゼントを買いたいの」
そうだったんですね、と、エリオットがうなずいた。
「ゴードン大魔道具店の方ですか?」
「……いえ、何て言うか、その、もっと若い人」
オリビアが、しどろもどろに応えると、エリオットが首をかしげた。
「若い……、何歳くらいですか?」
「……あなたと同じ年くらいよ」
気まずげに目をそらしながら答えるオリビア。
不思議な沈黙が2人の間を流れる。
ややあって、エリオットがゆっくりと口を開いた。
「……一応確認なのですが、その方は、男性、なのですよね?」
「ええ、そうなの。だから、同じ男性であるエリオットの意見が聞きたくて」
もうこれはバレたなと思いながら、足元を見つめるオリビアの前で、
エリオットが、考えるように黙り込む。
そして、彼は読めない笑顔を浮かべると、上品にうなずいた。
「分かりました。では、2階に行きましょう」
明日3を投稿します。
そして、書籍第2巻、本日発売です!
今回もかなり加筆を加えております。
・結婚式までのアレコレ
→エリオットとのシーンに加え、ゴードン大魔道具店の様子、パン屋のおばさんから見たオリビアとエリオットの様子など
・結婚式会場での騒動
→より詳細に義妹や元婚約者、会場の様子などを書き加えております!
・エリオットの武闘派家族
→拳で語るフレランス公爵家のお父様とお兄様に登場頂きました!
ぜひお手に取っていただければと思います。(*'▽')




