エピローグ
最終話です。
ダレガスでの騒動が終わった数か月後。
透き通った水色の空に、霞のような雲がたなびく春。
色鮮やかな花が咲き乱れるダレガスの街にて。
青い服を着たオリビアと、グレーのジャケットを身にまとったエリオットが、カーター魔道具店の前に立っていた。
「本当に、本当に戻ってきたの?」
自分を見上げる青い瞳を見つめながら、エリオットが微笑んだ。
「ええ。もちろんですよ。この店はあなたのものです」
店を見上げながら、オリビアは目を潤ませた。
(ああ。やっと戻ってきたのね)
不当に取り上げられたものとして、自宅とカーター魔道具店が、オリビアの手に返って来たのだ。
さあ、どうぞ。と、エリオットに促され。
オリビアは緊張しながら鍵を鍵穴にさした。
聞きなれた、カチャ、という音を聞きながら、ゆっくりと扉を開く。
そして、薄暗い店内を見回して、彼女は目を見張った。
「まあ、キレイだわ!」
「調査のためとはいえ、騎士団員が踏み荒らすことになってしまいましたからね。人に頼んで綺麗にしてもらったのです」
以前見たホコリとガラクタだらけの店内から一転。
床は丁寧に掃き清められており、家具には埃を被らないようにと白い布が被せてある。
カーテンの隙間からは磨かれたガラスが光っている。
感極まったように立ち尽くすオリビアを見て、エリオットがそっと声を掛けた。
「私は少し外を見回ってきますね」
「ええ。ありがとう」
きっと気を遣って一人にしてくれたのだろう、と感謝するオリビア。
店の中に入ると、そっと空気の匂いを嗅いだ。
(ああ。懐かしい木の香りがする。戻ってきたのね)
ぼやける視界もそのままに、カーテンと窓を開けると、暖かい日の光と共に、春の香りのする風が入ってくる。
外から聞こえてくる楽し気な鳥の声を聞きながら、オリビアは傍にあった白い布の一つをめくった。
(設計机だわ。お父様が魔道具を設計する時によく座ってたっけ)
(こっちは魔石入れね。ここに魔石を並べて、お客様に選んでもらっていたわね)
(そこの天井にはたくさんのランプが吊り下がっていて……)
懐かしさに泣きそうになるのを堪えながら、布をめくったり、上を見上げたり、店の中を見て回るオリビア。
外から戻って来たエリオットが、その様子を目を細めて見守る。
そして、店内の確認が一段落して。
エリオットが尋ねた。
「オリビアは、この店をどうするつもりですか?」
そうね。と、考えるように目を伏せるオリビア。
「まずは、月に一回、数日営業してみようかと思うの。魔石宝飾品を持ってきて並べようと思うわ」
きっと人が集まるでしょうね。と、エリオットが頷く。
「それが軌道に乗ったら、人を雇おうと思っているわ。ジャックにも声をかけてみるつもりよ。ゴードンさんも協力してくれるって言っていたし、何とかなると思うの」
正直なところ、どこまで上手くいくか分からない。
でも、この魔道具店を昔のように、来たお客さんが笑顔になって帰る店にしたい。
「オリビアならきっと出来ますよ」
私も力にならせて下さいね。と、微笑むエリオット。
オリビアは彼に近づくと、その優しい紫の瞳を見上げた。
「ありがとうね。エリオット。あなたがいなかったら、私、ここまで来られなかった」
「何を言っているんですか。あなたが頑張ったんですよ」
微笑み合う二人。
春風に揺れる白いカーテン。
その隙間から差し込む暖かな春の光の中、
二人はそっと口づけを交わした。
これにて完結です。
長い間お付き合い頂き、ありがとうございました。
※2024年5月14日追記
お陰様で、本作の書籍版2巻が【6月10日】に発売されることになりました!
出版社はマッグガーデンノベルズ様、コミカライズも予定されております。
そして、中身の方ですが、こちら、超加筆しています。
その量、約2倍。Web版ですでに読んだ方でも、読む価値があると胸を張って言える超加筆です。
内容は、Web版公開のときに皆様から頂いた意見を参考に、主に下記を大幅加筆しています。
・結婚式までのエリオットとの交流を深めるところ
・ダレガスに到着してからの怒涛の展開
・拳で語るフレランス家のお父様とお兄様
→最後に不敵な感じにご登場いただきました!
そして、挿絵がめっちゃいいです!
↓表紙をご覧になって分かる通り、神です!
ぜひお手に取っていただければと思います。(*'▽')




