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XX~4回目あるいは……


「どうですか、森川の様子は」


 宮本は神妙な面持ちで訊く。相対する白衣姿の男はカルテを見ながら、


「安定はしてますな。彼は今、現実と妄想の狭間を彷徨っているんです。現実の常識と妄想世界の常識。その両方が混ざった状態でいる。ゆえに、なんでもないものがありえないものに見えてしまったりする」


 ここは森川の入院している精神病院である。


「最初はクスリをやってるんじゃないかと疑っていたんですが、どうもそれにしては落ち着いてるなと思って、やっぱり精神病だったんですね」


「誰かに監視されているように感じるというのは統合失調症の典型的な症状です」


「殺される、とも言っていました」


「今でも時折おかしなことを突然口走ったりしますが、それ以外は全く正常な思考ができています」


「治る見込みは?」


「薬物療法と支持療法を並行して行っていきます。なぁに、彼のような患者は何人も診てきたのです。安心してください」


「森川のこと、よろしくお願いします」



* * *




「そうか、そうだったんだ」



俺はようやく真実に気づいた。



俺を殺し続ける殺人鬼の正体に。


「お前だったのか、ようやく見つけたぞ」


「はいはい、森川さん、今日の分のお薬ちゃんと飲めましたねぇ」


「違うんだ看護師さん。俺はやっと気づいたんだ」


「はいはい。じゃあ何かあったらここのボタンを押して呼んでくださいねぇ」


「嘘じゃないんだ、話を――」


「はいはーい」


「あ、ちょっと待って……行っちまったか」


俺はベッドに腰かける。


「わかったんだよ。俺を殺し続けるのが誰なのか。今、俺は興奮していると同時に冷めてもいる。そして何より、恐ろしい」


俺は首を曲げる。


憎き犯人の指先へ。












































「お前だよ。画面の前の、この小説を読んでいるお前に言ってるんだぜ。お前がページを切り替えるたびに、タブを閉じるたびに、この世界は一度消え去り、俺という存在は死んじまうんだ。なぁ、俺はいったい何回死んだんだ? お前なんだお前が――






















なあ、それでもこのページから移動しちまうのか?





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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白く、そして最後には背筋がぞわっとした、いい作品だなと思いました。 [一言] もっと評価されるべきだと思う
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