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後編

アリアはレリーナに最低限のマナー教育を学園の授業が終わった後に、行う事にした。


歩き方、お辞儀の仕方、食事の仕方、会話の仕方。

貴族としてのマナーがなっていなかったレリーナも、教育するにつれて大分、様になってきた。


アリアは満足げに。


「これならば、側妃として申し分ありませんわ。」


「有難うございます。」


「でも…、もし、側妃が満足できないと言うのなら、素敵な方を紹介いたしますわ。

ほら、隣国のフィルネオ皇太子殿下。お妃様を探していると言っておりましたのよ。」


「ええ?あの素敵なフィルネオ皇太子殿下が?」


「そう。ですから、わたくしから、貴方をご紹介して差し上げても。今の貴方なら、どこへ出しても恥ずかしくないわ。わたくし、貴方に幸せになって欲しいから。」


「嬉しいですわ。ぜひとも紹介を。あちらは大国。お金ももっと自由に使えますわね。」


心から嬉しそうなレリーナの様子に、アリアは、にっこりと微笑む。



若い人が集まるパーティに、さっそくレリーナを連れて行って、フィルネオ皇太子に紹介した。


「明日、国に帰ってしまうんだが、最近、会えなくて心配していたんだ。アリア。学園でも忙しそうで。避けられているみたいだったし。」


「今日はフィルネオ様に紹介したい御令嬢が。こちら、レリーナ・ダビン男爵令嬢ですわ。」


「レリーナ・ダビン男爵令嬢です。よろしくお願いしますわ。」


優雅にカーテシーをするレリーナ。


フィルネオ皇太子は驚いたように、


「君は私に心が無いというのか?」


「わたくしは、やはりこの国が好きです。ですから、リード王太子殿下の妻になり、この国の為に尽くしたい。そう思えたのです。ですから、こちらの令嬢は、身分は低いですけれども、それはしかるべき高位貴族の養女になって貰えば解決する問題です。わたくしがマナーを教育した、自信を持って勧められる方ですわ。お付き合いを考えて下さいませんか?フィルネオ様。」


フィルネオ皇太子は、引き受けるはずだ。

生贄は誰だっていいはずだから…。


「解った。君がそう言うのなら、レリーナ。私と付き合ってくれないか?いや、私は明日国に帰ってしまうが、近いうちにまた訪れよう。美しいレリーナ。一目見て私は君を気に入ってしまったよ。」


「まぁ、嬉しいですわ。フィルネオ様。お会いするのを楽しみにしています。」


フィルネオ皇太子はレリーナの手を取ってダンスフロアの中央へ進み出る。

ちらりとアリアの方を見たが、アリアは優雅にカーテシーをし、背を向けた。


胸が痛む。

だが、これで良かったのだ。

後は、卒業パーティで、リード王太子に婚約破棄されなければ、運命に勝つことになる。





月日が経った。

アリアはリード王太子との仲を深めるよう、努力に努力を重ねた。

そして、卒業パーティ。


リード王太子は美しく着飾ったアリアの手を引き、入場する。


そして宣言した。


「卒業と同時に兼ねてから婚約関係にあった、アリア・グリニス公爵令嬢と私は結婚する事とする。皆、祝ってくれ。」


卒業生全員から拍手を受ける。


それからリード皇太子は、隣国のフィルネオ皇太子を紹介して、


「そして、フォルネオ皇太子殿下はレリーナ・ダビン男爵令嬢と婚約する事となった。」


皆、ザワザワとする。レリーナと言えば、リード王太子と仲が良かった令嬢ではないのか。

逆にフィルネオ皇太子と仲が良かったのは、アリア・グリニス公爵令嬢だったはずだ。

まぁ、ここ三月ばかりは、確かにその関係が変わったような感じだったが。

一体全体何があった?


アリアは、リード王太子にダンスフロアの中央へ導かれ、手を引かれながら、ダンスを踊る。


そう…


とある夜、夢に亡くなった祖母が泣きながら現れたのだ。


リード王太子殿下と婚約破棄をしてはいけない。

婚約破棄をした途端、運命は破滅へと動き出す。

アリアは婚約者となり、フィルネオ皇太子に連れられて隣国へ行くだろう。

そこで、善女のふりをした悪女にベリー入りのクッキーを食べさせられて、

階段から転げ落ちて死ぬだろう。

妹のレティシアは、悪女の手の者によって惨殺。

兄の一家はフィルネオ皇太子の手によって公開処刑。


孫たちをそんな悲惨な目に合わせたくはない。

だから、隣国のフィルネオ皇太子の婚約者の事を調べておくれ。


お願いだから…


そう祖母に泣きつかれたのだ。


あまりにも生々しい夢に、アリアは隣国の友達に手紙を送り、

フィルネオ皇太子の婚約者の女性の事を調べて貰った。


幼い時からの婚約者リンディアナ・ハーベイ公爵令嬢は、フィルネオ皇太子殿下の事を愛しており、二人の仲はとても良いとの事。リンディアナに他に好きな人がいるようには見えないとの事。


それが本当の事ならば、自分が婚約者として隣国へ行ったら、リンディアナに殺される。


リンディアナはフィルネオ皇太子を愛している。自分が隣国へ行ったら、婚約破棄をされた恨みで殺意をアリアに抱くであろう。


頭に弾ける映像。


階段の下へ転げ落ちる。

後頭部に激痛を感じる。

何故?何故…転げ落ちた。

そう、眩暈がしたのだ。ベリーのクッキーを食べた後に眩暈が。


あの女が差し出したクッキーを食べた。

あのクッキーに毒が入っていたのだ。


ああ…わたくしは、何としても、リード王太子殿下から婚約破棄をされてはならない。

自分の愚かな行動のせいで大好きな兄や妹が殺される運命なんて、あってはならない。


お祖母様。有難うございます。


わたくしは…勝ちました。運命に。




アリアと結婚してから、リード王太子はアリアを大事にするようになり、

二人は仲が良い夫婦として世間に知られるようになった。


隣国へ行ったレリーナが、事故で亡くなったと聞いた時に、

祖母の墓参りをし、改めて感謝した。


そう、わたくしは、レリーナを生贄に捧げました。

フィルネオ皇太子は、リンディアナを愛するあまりに、わたくしを生贄にしようとしました。

リンディアナが嫉妬のあまり、わたくしを、妹を、兄一家を殺すたびに、自分への愛を感じて喜ぶ異常な男。


わたくしも悪女なのかもしれませんね。


今は…お腹にリード王太子殿下の子がおります。

それなりに幸せです。



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