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第3話 部室での告白①

「……入学したての時の話をし始めたと思ったら、それか」


彼女が昔話をし始めたかと思えば、僕が今彼女が誰なのかわからないのが、高校に入学した時と同じ状況だとからかってきたみたいだ。

確かに、目の前にいる彼女が誰なのかはわからない。が、全く同じ状況かというとそんなことはない。


「えー、同じようなもんだよ。ほらほら、私の名前、覚えてないの?」

「僕が聞いたのは覚えていないからじゃなくて、どれだかわからないからだよ」

「同じようなものじゃない?」

「まあ、でも君らにとっては割とよくあることでしょ? それに小学生の時は一回会うたびに名前が何か聞いていたし、別にいいかなって」

「高校で会ってからはそんなことないじゃん。そんな昔の話されてもなー。あ、でも再開してすぐはわからないときもあったっけ? 何回か聞かれた覚えが……」


確かに、再会して最初のころは中々見分けられなかったり、どの名前なのかが分からなくなったりして苦労したというのは間違いなかった。が、それも昔の話である。


「……別に再開してからずっとそうと言うわけではないよ。今はもうちゃんと見分けられているし」

「えーそう? 今でもごっちゃになったりするんじゃないの?」

「そんなことないよ……多分」


多分、というところは小声で言い、彼女には聞こえないようにした。本当はたまにどの名前を言えばいいのか一瞬迷ったりすることもあるのだが、それは心の中に秘めていたほうがいいだろう。


「それに、君は僕が誰なのか見分けられない、というのをわかってるんじゃない? 髪を下ろしたりアクセサリーを外したりしているし、そっちも誰なのかわからないように意図的にしているよね」


彼女はわざと僕に誰なのかわからないようにしている。それは間違いない。3人は3つ子なので当然顔や声などは同じなのだが、装いまで同じという訳ではない。

例えば、髪型。3人は髪は同じ長さにしているらしいが、普段は別々の髪型にしているのだ。長女の実里はいつも髪をポニーテールにしているし、次女の香里はツインテールに、三女の汐里はサイドテールにしている。

他には、3人とも同じようなブレスレットをつけているのだが、紫、緑、金と、それらも色違いだ。ついでに言うと大体長女は学校指定の紺のハイソックスだし、次女は黒のタイツかニーソックスだし、三女は白のハイソックスをくるぶしにして履いたりしている。

これらの差異があるのは好みの違いか、それとも他の人に見分けが付くようにとの配慮か。少なくとも、それらの違いがあるおかげで僕は3人の見分けが付けられていた。

一方で、目の前にいる彼女は髪はストレートロングだし、アクセサリーも何もつけていない。唯一靴下は紺のハイソックスだが、これは学校指定のものだから次女も三女も、式典の時とか、それ以外の時でも学校指定の紺のハイソックスをしっかりと履いていることも間々ある。現に今日は3人ともこの靴下だった気がする。それだけで特定することはできない。

あれだけ見分けられるようになったと思っても、それは服装のおかげだということに改めて気づかされた。

僕はそれを指摘すると、彼女は待ってましたと言わんばかりの表情をした。


「いやぁ、よくわかったねぇ。見分けが付かないようにしているって……」

「いやいや、流石にそれくらいはわかるよ」

「ふーん。それで誰なのかわからないから、私に名前を聞いてると」

「……悪いけど、僕はひよこのオスメスがわからないように、君たち三つ子を区別するなんて無理だよ。服装や髪形、喋り方を同じにしていたらね」


ひよこどころかにわとりのオスメスの区別もできないかもしれないが、とにかく彼女ら3人を顔だけで区別するというのは無理な話だ。


「それで、君は3人のうちの誰なんだい。答えてほしいんだけど」

「うーん。ナイショ」

「……内緒って……」


その答えを全く予想していなかったわけではない。現に僕にわからないようにしているのだから、わからないようにしたい事情があるのかもしれないと。それでも、僕はその回答が来たことにわずかながら驚いた。


「君は私が誰なのか、わからないままでいいの」

「いやそんなこと言われても。そもそもなんでそんなことしてるの? 僕が3人の見分けがつくか試しているのかい?」


正直、彼女が僕に見分けが付かないようにする理由なんて全く思いつかない。今僕は3人にからかわれているのか、もしかしたら勝手に何か試練を与えられているのだろうか。そんな気がしてきた。多分先ほどの告白は嘘なんかじゃないと思うのだが、たまに僕のこと3人でからかってきたりしてるし、今回もそうなのかもしれない。


「うーん、ちょっと違うかなぁ……まあ、わからない方が好都合なんだけどね。理由もナイショで」


その理由も教えるつもりはないらしい。どうも彼女は、なぜわからないようにしているかを知られたくないみたいだ。乙女心を理解することは難しいとは思っていたが、この理由は到底理解できそうになかった。

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