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第2話 入学式前②

「ひ、久しぶり……」


僕は何とかそう返事を返した。

彼女とは本当に久しぶりの仲であった。出会ったのはたしか小学2年生あたりか。その時なんで仲良くなったかははっきり言って全然覚えていないが、その時から仲良くなり、数多く遊んだりもした。だが小学5年生の時に彼女の親の都合で引っ越すことになり、そしてその時から交流は途絶えた。

それが今日、まさかこんな形で再会するとは。


「ホントに、大地なんだ……えーっと、5年ぶりってことでいいのかな」


そういいながら彼女は僕の様子を見て、少し感銘を受けているみたいだった。上半身を少し傾けて僕の方をまじまじと見ている。一方の僕はというと体が固まったまま、何も言葉が出てこない。話したいことは色々とあるはずなのに、言葉が喉元で突っ掛かってしまう。


「……えっと、その」

「あーちょっと待って、今ラインで2人を呼ぶから……」


僕は何とか声を絞り出そうとするも、彼女は僕の声を遮り、スマホを取り出して誰かに連絡をし始めた。彼女は2人を呼ぶ、と言っている。ここで、僕の頭に1つの可能性がよぎった。


「……もしかして、3人とも同じこの学校に?」

「じゃなきゃ、今呼んだりとかしないよ。近くにいるだろうからすぐ来るはずだけど」


まあ確かに、と思う一方で、そのことは僕にさらなる衝撃を与えた。まさか3人とも同じ高校だなんて、本当にこんなことがあるのだろうか。


「……おーい、あの大地がいたってホント?」

「あー、本当にいるじゃん!」


彼女が呼んだ残り2人も、思っていたよりも近くにいたみたいですぐにこちらにやってきた。


「うわぁ、久しぶりー! 小学の時以来だよね? なんか雰囲気変わったよねぇ、大人びたっていうか……」

「まあ、4、5年経っていたらね。それに雰囲気が変わったのはお互い様なのでは?」


確かに、数年前に離れ離れになって以来1度も会ってはいないが、それでも彼女らが小学の時に分かれた3人であるということはすぐに分かった。ただ、当然ながら見た目は数年前と同じ、という訳ではない。身長も伸びてるし、顔も少し大人びている。胸も結構な……いや、これはやめておこう。

とにかく、パッと見た印象は数年前と全然違った。


「まあそうだねー。君の方が背、高くなってたりとか」

「え? ああ、そういえば小学の時は君たちの方が背、高かったね」

「そうそう、何でお前らの方が背がたけぇんだよって言われて喧嘩したこともあったよねぇ」

「あー、あったあった!」

「……僕は全く覚えていないんだけど」


僕はそんなしょうもない理由でキレていたりしたのだろうか。全く覚えていないが、彼女たちはそんなことがあったという認識でいるみたいだ。事実かそうでないかを確認する術はもはやないが、今の僕からしたらとんでもない話である。


「でも、私たちは君との出来事、色々覚えているよ。例えば私たちのことを最初のころは……」

「わかったわかった、昔話はまた今度ということで」


このまま話し続けていたらろくなことを話さないだろう。ここはうやむやにするのがいい。何とか別の話題へと移らないか、僕はそう試みることにした。


「えーいいじゃん今やっても……あそうだ。私たち3人の名前、ちゃんと覚えてる?」

「……あー……」


話題は代わった。しかし正直に言って、かなり返答に困る質問へと変わった。日本語は英語などと比べ、相手の名前を言わなくてもうまく会話を続けることができるということを聞いたことがあるが、流石にこの状況をごまかせる日本語を僕は知らなかった。


「えっと……ちょっと申し訳ないんだけど……」

「えー、忘れちゃったの?」

「まあ、5年もたってるしね……」

「いや違う違う。実里と香里と汐里。ちゃんと3人の名前、覚えているよ。ただ……」


3人が少し悲しげな表情をしてしまったので、僕は慌てて否定する。彼女らの名前はしっかりと覚えている。ただ、名前は覚えていても、僕は彼女らの名前がわからないのだ。


「僕には、誰が誰なのか見分けが付かないんだよ」


僕の前には、全く同じ顔が3つ。彼女らは、3つ子の姉妹なのだ。

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