第7話 レトルトカレーを食べるな!
それから2〜3日経ち、好物のインスタントカレーをお湯で温めようとした。
今度はレトルト自体が噛み千切られていて、中身を喰われている。
僕はため息を吐き、ネズミさんに聞いた。「なんで勝手にレトルトカレー噛じって食べるんですか?」
ネズミさんは怒った表情で僕に向かって来た「ネズミの目の届く所に置いてる方が悪いんですー!そんなもん、お前ね、目の前にエロ本、いや、丸裸の女性が」
「それ前言いましたよ」僕は口を挟んだ。
「えっ?女性がカモ〜ンっていうやつ?」
「ええ聞きました。」
「あっ・・・・そう・・・んーじゃそういうことなんじゃない。前話した通りです」
僕はため息混じりに「あんまり説得力ないですね。」というと
「まぁ。うん。そうだね。説得力とかそういう低い次元の話とかでいうと、説得力はないよね。まぁ・・本当に。勝手に喰ってごめん。」
初めてネズミさんが謝った!
僕は少し調子にのり、ニヤニヤしながら「今回はその謝りに免じて許してあげますけど、もうこれからは僕の物食べないで下さい」
そういうとネズミさんが、息を吹き返したように「うわ!出た!出た!自分大好き!エゴの塊、エゴ人間!うわーーーー出ぇまぁしぃたぁーーー!!」
僕は驚き「はぁ?さっきまでネズミさん僕に謝っていたじゃないですか?」
ネズミはニヤニヤしながら「そのことはもう謝ったじゃん!俺がいいたいのはね、自分のだから食べんなって言った事に対して文句があんの。」
「はっ?普通じゃないですか?」
ネズミがまた熱く語りだした。「あのね〜、俺らネズミは生きるのに必死なの!人間みたいに
ハローワークなんて便利なものないの!求人広告ないの!就職先ないの!
毎日が生きるか死ぬかのサバイバルなの。それをお前みたいなレトルトを1日2日食べなくても平気な奴が、よくのうのうとそんなこと言えますね?
ネズミはね、それで家族養わなきゃいけないの!明日まったく食べ物がなくなってしまう恐怖と戦いながら、家で待ってる嫁と無駄に増える子供のために、ネズミは盗みだってなんだってやっちゃうの。愛のために!
そう!愛のために!!
そんなことも考えられない平和ボケした人間が気安くネズミに文句たれんじゃねーー!!」
ドンッ!!とネズミさんは熱くなり床を叩いた。
僕はその熱弁に圧倒され「す、すいません、ネズミのこと少しも考えないで!」
「分かってくれればいいんだけどよ!」ネズミさんは肩で息をしながら答えた。
「質問いいですか?」
「おう、なんでもこいよ!」
「ネズミさんって家族いましたっけ?」
「えっ? まぁ〜 でも 俺にいるかいないかって言う質問自体が今の話しの流れからするとナンセンスな感じじゃない?」
「独り身・・ですよね?」
「まぁ・・・はい。そうっすね。欲しいですね嫁。」
「僕いつもメシ・・食わしてますよね?」
「まぁ・・・はい。有り難く頂いてます。」
「なんで僕のレトルト食べたんですか?」
「やっぱりーー、そうっすね〜〜。ネズミとかも〜やっぱり〜平和ボケとかすると飽食になるんじゃないっすかね?やっぱり。」
僕は冷ややかな目でネズミさんを見ていた。
ネズミさんがうつむきながらぼそっと・・「俺のことについてはもうさっき謝ったし・・・」
「はぁ?なんですか?」
冷めた時間が流れる・・・・・・・
「・・・・ぁさぃ。」「はい?」僕は強く聞き返した。「ごめんぁさぃ。」
「もうレトルト食べない?」
「はい。もう食べません!すいませんでした!」
ネズミさんが頭を深々と下げた。
初めてネズミさんとのやり取りで僕が完全勝利を治めた。