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第一話 損な出会い

僕は今一人暮らしをしている。自分でも言うくらい普通のフリーターです。


仕事は派遣業で主に工場内作業をこなしています。


住まいは6畳一間の何処にでもある木造アパート。家賃は6万円で、毎月なんとかやりくりしながら、過ごしています。


僕はその日も、いつも通り夜6時に仕事が終り、コンビニで夜食を買って、自宅に帰りました。


鍵を開け、部屋に入り、電気を点けると、僕は生まれて始めて普通の人とは違う体験をしたのです。


ベットを見るとそこには、10cm程の汚い野ネズミが、僕のベットで、大の字で、寝てるじゃありませんか!


僕は思わず、「ひえっ。」っと女のような声で、奇声を上げてしまいました。


するとネズミも、ビクッっと飛び上がり辺りをきょろきょろして、僕を見付け、僕と目線が合い、少しの沈黙の後「えっ?何?どなたですか?」こう言ったんです。ネズミがしゃべったのです。

僕は頭が真っ白になってしまい、「あっ、すいません。間違えました。」と言うと、慌てて部屋を出て、ドアを閉めました。


しばらく僕は部屋の外で、起こった事実が飲み込めず、ぼんやりしていました。


部屋番を確認すると、もちろん僕の部屋番、いやいやなんで言葉しゃべったの? ネズミが、僕のいない間に勝手に部屋を借りた?


いやいやそもそもネズミはアパートを借りれる側の生物じゃないじゃん!


僕は頭の整理がつかないまま、もう一度ドアを開けようとすると、うおっ!鍵掛けられてる!!


えっ?自分の鍵は?ない! さっき部屋に置いたまま出てしまった!


ってかネズミってそんなに悪知恵働くの?


何度もチャイムを鳴らし、ドアを叩いても、出てこない・・・居留守? どんどん腹が立ってきて、「すいませ〜ん!住人の者ですけど〜。」と怒鳴り、ドアを叩いてみた。恥ずかしさはあったが、頭に血が登っていた。


反応がない・・・少し時間を置いて、ドアの前で考えてみた。部屋に入れない→帰る場所がない→追い詰められているのは俺?


瞬く間に血の気が引いて、それってやばくない?ってことに気が付いた!やばいやばいとうろたえていると、天使の助けのようにゆっくりドアが開い・・・完全には開かない。チェーンをしてネズミが足元に顔を出した。


ネズミはまた言葉をしゃべった「あのーすいません。隣人に迷惑なので、早く帰って貰えませんかね?」


僕は部屋に入れないことより、やっぱり言葉をしゃべるネズミが気になった「すいません。あの〜なんで言葉しゃべれるんですかね?」


ネズミは、はっ?と僕を怪しい人間のような目で見ながら「なんで日本語をしゃべるんですか?ってことですか?」と聞いてきた。


僕は「そうです。そうです。なんで言葉をしゃべれるのかな〜っと思いまして。」


ネズミは愛想笑いを浮かべながら「日本生まれで、育ちも日本だからですかね。」


んっ?話しが噛みあっていない!ネズミが言葉を続けた「あっでも顔が日本っぽくないって、良く言われます。よくアメリカ系の顔だって、ほら、鼻が高いからね。」


あれれ〜なんかどんどん僕の質問がずれていってるよ〜!!


「あはは。冗談ですよ!では!」そういうとネズミはドアを閉めようとするので、慌ててドアに手をかけた。


「いやいや僕の部屋ですから!」そう言うとネズミがいきなり怒り出し「あんたね〜、俺はあんたが住む前から空家の時からこのアパートに住んでんの!先に見付けたの!そこにいきなりあんたみたいな奴が勝手に入り込んで来たんじゃないか!それをあんた、いきなり僕の部屋ですなんて、とてもとても通らないでしょ!」


「いやいやでも大家さんに話し通してないでしょネズミさん!僕は毎月お金払って住まわしてもらってるんです!」


「出た!お金の話し!じゃ〜何か?金がなけりゃ住んじゃいけないの?俺らネズミに住む権利なんてないの?」


「基本的に住む権利ないんです。」


ガビー−ン!そんなリアクションを見せながらネズミはうろたえた。


「人権無視か?」


「いや、ネズミさんは人ではないので。」


ドキ−−ン!!


「格差社会か?」


「いや、ネズミさんは格差の社会にも入ってないです。」


ズキュー−ン!!


ネズミはガクっと肩を落とし少し黙っていた。するとフルフルと肩を震えだし、また怒った!

「わかった!この部屋は俺の砦だ!これからこの部屋に篭城して社会にネズミの権利を訴えてやる!格差社会の一員になれるまで!」

僕はキョトンとしていた。

「ありがとう青年、君のおかげで目が覚めたよ。俺がんばるよ。」

そう言うとネズミさんは僕にニカっと笑い、またドアを閉めようとするのでまた慌てて、ドアに手をかけ「すいません!僕はただ中に入りたいだけなんですよ!」


「なに!仲間に入りたい?」


「は?いや、中に・・」


「もしや志願者かい?」


「違うんですけど、住居志願者です。というより、住居者です!」


「同じじゃないか〜!我が同志よ!共に暮らし、熱く語り会わないかい?」


「開けてくれるならもうなんでも良いんですけど。」


「良しそれなら君は我が家族だ!入りたまえ!」


そう言うとネズミさんはドアを開けて僕を入れてくれた。


「少し散らかっているが、気にしないでくつろいでくれ!」


いや僕の部屋なんですが・・・


気が付くとネズミさんの方が立場が上になっていた・・・


こうして、ネズミさんと僕との不思議な共同生活が始まった。

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