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マスカレイド・マイノリティー  作者: 槻坂凪桜
2/2

『普通が一番』なんて笑う人が多くいるけど、一体何を基準とした『普通』を指しているんだろう。

 千篇一律?異口同音?個性なんて押し殺した、量産型の生き方?


 …何が面白いんだろう。男尊女卑も軽減された現代…『十人十色』の方がずっと有意義だと思うのに。

 なんて愚痴を零せば、フェンス越しに校庭を見下ろした隣の男は「まあ確かにな」と小さく息を吐いた。




「この国は『昔ながら』を重視するからな。それが良い方に転ぶ事もあれば、『新しさ』を求める人間を縛り付ける事もある」

「結局悪い方向じゃん。…変なの、いつまでも過去に囚われたままなんて」

「知らねえよ。崩壊しつつある現状を認めたくないんだろ」

「なら尚更新しい体制に入れば良いのに。…おかしいと思わないのかな。勝手な拘りが自分の首を絞めてるの」

「…」

 黙り込んだ私達を、強くも優しくもない六月の日差しが小馬鹿にするように空で笑う。

 無言でフェンスから手を離した男は、私の隣に腰を下ろすと…ふと「…お前、それ誰に言ってんの?」と随所に雲の残る青を仰いだ。

「何、この国に決まってんじゃん」

「嘘つけ、お前自身にも重ねてた節あるだろ」

「…そんな事言ったら燕にも当てはまるじゃん」

「ハッ、逃げは良くねえぞ」

 薄く笑った男の言葉にむうと頬を膨らませると、「燕のバカ」と彼から身を離すように立ち上がる。

「つれねえな。…一応付き合ってるってのによ」

 寂しげに紡がれた隣の言葉には、聞こえないフリをして。



 横山綾架よこやまあやか夏咲燕なつさきつばめ、私達は付き合っている。

 アセクシャルとトランスジェンダー…社会に認められないからと互いの傷を舐め合う、都合の良い間柄として。

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