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プロローグ
「育て方を間違えた」
孫の顔を見る事が出来ない。『普通』じゃない子に育ててしまった。
こんな娘を産んだ覚えは無い。これも全部あの人のせい。
泣き崩れる母親の姿は、今でも私を戒めるように瞼の裏に蘇る。
『無性』。他人に恋愛感情も性的欲求も持たず、自らの性別も『無』であると認識する人間。
自らの性別について打ち明けたあの時…女手一つで私を育ててくれた母との十四年間が、ガラガラと音を立てて一瞬で崩れ去った。
「…一緒だな。お前も俺も」
__そんな時だよ。私と貴方が出会ったのは。