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打ち上げ、そしてきっかけ

同日2話更新でございます!

一学期も中盤である。この年度も始まりクラスに慣れてきたころである。担任の指示で席替えをすることになった。やり方はもちろん定番のくじ引き。このくじから俺の人生は変わっていたのかもしれない…。

「俺の席は37番だから…。よし!一番窓側の前から3番目!」

小さくガッツポーズをして他の人が引き終わるのを待った。全員引き終わると席移動が始まった。

「隣お前かよ。」

俺が悪態をついた先にいるのは中一の頃同じクラスだったものの特に接点もなかった西沢志乃だった。

「いや、それ私のセリフだから。」

そう言って西沢はそっぽを向いて他の女子と話し始めた。そしてこの時幸か不幸か黒板に向かった時の俺の視界先には女子しかいないという謎状況が繰り広げられていた。


最初は険悪だった西沢との関係を取り持ったのは当時流行っていた「ホワイトプログラム」通称ホワプロである。初めはこのゲームで俺がピックアップの強キャラを出した、という報告メールからだった。西沢の親は厳しくトークアプリLIMEを入れてもらえないらしかったのでメールでの会話をしていた。


理央:「このキャラ出た↓画像」

志乃:「ウザいから絶対コンプする!!」

理央:「俺は次のイベント推しが出るらしいから貯めまくる」

志乃:「え、シノでるかな?そしたらもう引きたくないんだけど。」


最初はそんな他愛のないメールを交わしていた。他愛もないこのやり取りによって西沢とは学校でも普通に話す間柄になった。しかし学校に行くと俺は西沢のことをとことんいじりまくっていた。向こうの伸長が150㎝ないことと、自分が成長期であり、身長もそこそこあったことを利用してロッカーのカギを上のほうでプラプラさせてみたり、数学で向こうが解けない問題があったときに煽っていたりしていた。いじめという人もいるかもしれないが、俺が一方的なわけでもなく、向こうも面白がっている節があるので決していじめではないと言っておこう。



体育祭までは残り2週間も切っている。各競技に出る生徒たちも練習が始まってきている。

「風見は何出るの?体育祭」

「すごい興味なさそうに聞いてくるんだなお前。」

すごい興味なさそうに種目を聞いてくるのは隣の席の西沢である。

「別に暇だからいいじゃん。それで何に出るの?」

「俺はクラス対抗リレーと大縄跳びの回し手だな。お前は?」

「私は障害物競走の背中ボール運びだけ。てか前から思ってたけどほんとに文化部?w文化部の出る種目じゃないよね?w」

「文化部ですけど、なにか?w」

俺は小学生の頃にテニス・サッカー・水泳と習い事をしていたし、体を動かすのも好きな方ではあったため日平均ちょい上ぐらいには動ける。競技によってはあの古川にも勝るのではないだろうか。

「まぁ、1年の時から風見は動けたからね…。そういえば体育祭の後打ち上げやるらしいけど風見行くの?」

「行くけど。なんなら山内に半分感じの仕事押し付けられてるよ…。」

「ご愁傷様。」

うちのクラスは他のクラスから男女仲が良すぎてあのクラスはやばいといわれるほど仲が良かった。そこでクラスで打ち上げをやらないかと山内が立ち上げたのである。参加する人数は40人いるクラスの中で20人ちょい。約半分だった。この打ち上げを起点にいろいろ動き始めていたのかもしれない………。



 体育祭は学校ではなく少し離れた上尾にある陸上競技場で行われた。中学の競技はクラス選抜リレー・障害物競争・集団演技・大玉転がしというパッとしない競技のみだ。それでも体育祭は学年別クラス対抗戦なのでそれなりにもり上がる。うちのクラスは本番直前の練習で一度も飛べなかった大縄で本番直前から飛び始め、流れで始まった本番中もそこそこ飛び続け、なんと一位をとるという奇跡が起こった。(もちろんカウントは開始の笛からカウントされている。)クラス対抗リレーではなんと決勝まで進み、他学年もいる決勝で2位という成績を収めた。

そんなこんながあり体育祭もつつがなく終わった。成績は学年で2位とまずまずの成績だった。1位は1組で天は二物を与えずとは何だったのかといいたくなるような結果である。勉強もできて運動もできるだなんて運動も勉強もそこそこな俺からしたらだいぶ反則的である。


「じゃあ打ち上げは17時に新都心のお好み焼き本舗に集合で~。」

「「「「は~い。」」」」

そうみんなで確認して会場から皆散り散りに帰っていった。家が遠い人はどうやら直で店まで向かうらしい。

俺は家が近いこともあり一度家に戻ってから行くことにしていた。新都心は家から自転車をかっ飛ばして20分ほどでつくのでなんとか間に合う距離だ。

俺は家に帰り、汗を拭いて私服に着替え、自転車に乗って家を出た。時間ギリギリ、間に合わない可能性があった。連絡は入れてあるが、なるべく急いだ。到着するとうちの団体は既に席に割り振られていた。

「俺はどのテーブルにいればいい?」

「あぁ理央やっときたね~。どの机でもいいよ~。」

机の振り分けは男子が6人の机と男女半々で6人の机、女子4人の机、3人が立ってテーブルを転々としていた。男子のテーブルに行こうとしたもののそのテーブルはもう人が入りそうになかったし、そこには基本サッカー部の男子と仲のいいグループが集まっていたため、友達も少なく中学のスタートに失敗し、男子のグループに入ることができなかった俺には入る余地がなかった。。

「はぁ…。どこ座れってんだよ…」

そんな時後ろのテーブルから大きなはしゃぎ声が聞こえてきた。

「ねぇねぇ、あきな~もんじゃってこれでいいのかな?」

「いいんじゃない?わかんないけど。」

「うちもわかんないけどまぁ何とかなるでしょ。」

その声は女子四人のテーブルから聞こえてくる声だった。その席に座っていたのが西沢と同じ理研の部員の女子が一人。あとはあまり面識のない女子二人だった。

「あ、風見。これってこれであってる?」

その鉄板の上には悲惨にも具材ともんじゃの汁が分離して今にも汁が蒸発しきりそうな惨状が広がっていた。

「おいおい、これじゃダメに決まってんだろ。誰も来たことないのかよ!ヘラ貸せ!」

そう言って俺はヘラ(商品名は起し金というらしい)をとり、そこからもんじゃの形成に奮闘した。一心不乱に作っていたから時間は分からないがおそらく5分かかっていないだろう。もんじゃらしくなってひと段落すると後ろから谷口と山内がのぞいており、席の女子はみな拍手をしていた。

「理央器用だね~。お好み焼きよく来るの?」

「いや、全然?来たのは二度目で、何ならもんじゃ自分で作ったのこれが作ったの初めて。」

「初めてでそのヘラの動かし方はやばいわwww」

「いや、だれでもできるだろ。」

「いやいやそこまでキレッキレのヘラ遣いは無理ww」

そう言ってなぜかもんじゃを作っただけで驚かれてしまった。

「ねぇ風見、この席にいてみんなの分のお好み焼き作ってよ。」

「なんでだよ。それぐらい自分で作れっての。」

「いや~誰もできないんだよね~。みんな初めてらしくて~。」

そんな言葉に乗せられて。俺は女子四人の中に男子が一人という謎空間でお好み焼きを作る打ち上げを過ごした。

 途中で谷口が塾のために先に店を出たり、クラスで嫌われ気味な男子が来て俺に対応が任されたり、最後のお金の集計でおつりが合わなかったりと色々ごたごたはあったものの時間は早く過ぎていった。


 3時間ほど過ぎてきて外も暗くなってきたころ、そろそろ食べ放題の時間が終わりに近づき、帰り支度を始める時間となっていた。

「じゃあそろそろ食べ放題の時間が終了になるのでそろそろ解散にしましょうか!新都心から電車で帰る人は皆で固まって帰りましょ~。理央としーちゃんはどうする?」

しーちゃんとは西沢のあだ名で女子からは大抵そう呼ばれていた。

「俺は一緒に新都心までは歩いていくよ。」

「私も新都心まではいくよ。」

「じゃあ会計はさっき払ったのでみんな帰ろ~。」

そう山内が仕切り、さいたま新都心駅まで歩いてみんなで帰ることになった。みんなでがやがやしながら道を進んだのでここも全く時間を感じないほど楽しい帰り道になった。お好み焼き本舗から駅まではさほど遠くないのですぐに到着してしまった。

「理央としーちゃんじゃあね!」

「おう。俺は一応西沢送ってくわ。」

そう言って山内達クラスメイトはコクーンシティの建物の中に消えていった。後から聞くとそのあとみんなは少し店を見てから電車に乗って家に帰ったらしい。

「じゃあ、私帰るね。じゃ。」

「いや、送るって言ってんだろ。」

「いや、なんでよ。送られる筋合いないんだけど。」

「お前ひとりで帰らせるの心配なんだよ。」

もう時刻は8時を回り、あたりは駅の周りとはいえ日も落ちすっかり真っ暗である。そんな中、女子を一人で帰らせるわけにはいかない。そう思ったのだ。

「そう…ありがと…。」

西沢は顔を赤らめ少し口ごもったようにそう言った。ぼそっと言っていたため聞き取れなかったが聞こえた端々から考えられるにそう言っていたのだろう。しばらくすると自宅に近づいたのか西沢は言った。

「もうここでいいよ。ありがと。また月曜日ね。」

「おう。じゃあな。」

俺は自転車のテールランプをつけ、自分の帰路に着いた。


今回は正四面体の一片、西沢との出会いを書きました。いかがだったでしょうか?

これからもまだまだ出てきますので、良ければ今後も応援お願いします!

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