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中学三年の始まり

今回の話は第一話プロローグからは離れますがこれからまた挙げてきますので是非愛読いただけると嬉しいです。


 時は遡る。俺こと風見理央はどこにでもいるようなオタクかぶれのちょい真面目系学級委員だった。自分で言うのもなんだが中1で男女の距離感が他の男子と違うことで「女たらし」と言われてしまったかわいそうな一般男子だ。優れたルックス・類い稀なる運動神経・頭脳明晰そんなものひとつも持っていないごく平凡なメガネ野郎。これから話すのはそんな平々凡々な俺の身に起こった奇妙な恋愛劇だ。



桜も散り始める4月の初め。3週間もないほどの春休みが明け、夏ほど高くない青空の下、中学最後の学年がスタートした。

 都会とも田舎とも言えない良くも悪くも絶妙な埼玉に生まれてから住み続け、中学受験をして家からほど近い自称進学校の呼び声高い永藤(ながふじ)中学・高等学校に入学してはや二年。俺は晴れて中学最高学年である三年生になった。今日は今年度の新入生の入学式の行われる前日の土曜日。在校生の始業式の日である。


「さて、と。俺のクラスはどこだろうか。」


俺はこのクラスが成績順の自称進学校にほぼ最下位で入学したものの二年生になっていきなり8クラス中上から2番目のクラスに上がるという快挙を成し遂げた。しかし、二年生に上がり苦手な英語が途端に難しくなり成績も急降下。それが故に自分の中でクラスを落とされることが確実視されていた。


「俺のクラスは、4組か。実質上から3番目だな。」


クラスの順位は今年度は1組が学費免除のある1番トップその下に2組そして3.4組がその下に均等に並び、そこまでが特進コース。それ以外の4クラスが通常クラスで3.4組の下に均等という編成だった。


(同じクラスのやつも気になるけどとりあえず教室に行くか。座席表でわかるだろ。)


そう考えながら下駄箱付近で靴をビニール袋に入れ上履きに履き替えた。教室に向かうとドアに座席表が張ってあり俺の席は黒板に向かって右からも前からも3番目という微妙な位置だった。


「お、理央おんなじクラスじゃん。よろしく~。」


「なんだよお前も一緒かよ、まぁよろしくな~」


そんな会話を数回繰り返し自席に着く。クラスには他にも中一の時に同じだった面々が数人いた。去年同じだったやつもそれなりにいたのは多少なりとも驚きだった。


「お前の席、俺の隣だぞ。」


始業ぎりぎりに入ってきたのはこの学校で唯一、同じ小学校から中受しこの永藤に入ってきた奥山だった。


「今年もお前と一緒なのか。まぁ修学旅行孤立しないからいいか。小テストの時ヨロ。」


そう軽口をたたきながら席に着いた。やつはこう悪態をついているが俺のことが嫌いなわけではない。ツンデレというわけでもない。昔なじみのノリというやつだ。こいつも俺もあまり友達がいなくお互い話すのに遠慮がいらないということで結構話すことが多かった。そんなことがありながら始業式も終わり、担任の発表も終わり、今日は幕を閉じた。俺は自転車帰宅勢のため奥山と二人だけで帰路に着いた。この学校は私立ということもあり電車通学者が9割以上だった。



俺は毎朝始業の1時間前には学校に到着していた。早く来ていた連中で雑談をするのだ。


「この曲よくない~?」


「あーそれ猫さんも歌ってたよね~」


「俺もそれ聞いたわ~。俺はカルティスさんが歌ってるほうがよかったな。」


そんな会話をしているのはテニス部低身長女子の谷口梨花と陽キャ代表アーチェリー部山内紅葉とサッカー部器用人古川翔だった。毎朝朝早く学校に来てはこんなくだらない話をこいつらとしている。この3人のほかにも数人で雑談をしている。

谷口はテニス部でありながら身長が低いがテニス部のエース的ポジにいる。とても明るくこいつも男女分け隔てなく話してはいるが男子とも女子ともうまくやっている。古川はサッカー部の中でも圧倒的な器用さで優れたドリブルをするチームの要である。体育の授業で敵には回したくないサッカー部員断トツの1位だ。こいつは決して不細工ではなくむしろ少し可愛げのあるカッコよささえ感じる。そして極めつけには器用で大抵のことまでできるときた。山内はこいつの元カレである水野と俺がそこそこ仲が良く、水野と俺が先生が間違えるほど似ているらしく三年生になる少し前からお互い知っており、同じクラスになったことでトークアプリでもよく話す間柄であった。山内は運動部ということで運動もそこそこでき、容姿も可愛いほうに分類されるのではないのだろうかという、こいつもまた女子の中で人気があった。

そんな奴らと毎朝話していた。うちの学校はオタクが他より断然多く、自称にしても進学校だからなのか、お互いが寛容だからなのか、スクールカーストと言われるようなものは俺の知る限りなかった。だから友達の少ない俺でもこんな奴らと話ができるのだ。


「そういえば、来週文化祭じゃん?理研は今年どんなことやるの~?」


そう聞いてきたのは谷口だった。理研というのは俺が所属し、部長を務めている理科研究部の略称である。


「うちの部は例年通り、実験発表、今年は下級生が多いから去年ほどやばくはならなそうかな~」


去年俺は同じ部の奴と2人で文化祭期間2日間、11時間のうちの10時間同じ実験を同じ場所で立ったままし続けるという所業を成し遂げていたのだ。

まだ始業式が終わってから1週間程度しかたっていない。それなのになぜこんなに早く文化祭の話になるかというと、うちの学校はなんと他の学校との差別化を図り、6月の第2週の土日で文化祭を行うのだ。


「毎年思うけど、文化部って大変そうだよね~。高校入ったらうちらも出店やるんでしょ~?」

山内は楽しみそうにしているが文化祭にあまりいい思い出のない俺はもちろんあまり乗り気ではない。しかしうちの学校の理研は発表する機会は少ないためやらないわけにはいかないのである。


 この年の文化祭は特に何事もなく終わりを迎えた。まだこのころの俺は部活一筋、実験の発表練習に時間を割いていた。ましてや彼女などできるとも微塵も思っていなかった。文化祭が終わると2週間で体育祭である。運動部ではないが運動が苦手でもないので特段嫌ってもいない。そんな何でもないイベントが何に繋がるというのだろう。

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