表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/53

後日談9

 ニーナが帰ってきてお帰りを言うと彼女は笑顔をみせながら、僕を抱きしめてくれる。

 僕も手をまわして彼女に抱き着く。そして彼女の手を引いてお風呂に向かう。きれいに掃除しておいたそこを見せると彼女は僕の頭をやさしくなでてくれた。


 ニーナは僕に家のことを少しずつ任せてくれるようになった。掃除の仕方を教えてくれて、僕はニーナのいない間にやることができて、岩に行く時間が減っている。

 一階のよく使う場所の掃除の仕方は一通り覚えることができた。今は食事を作る手伝いをしながら、やり方を教えてもらっているところだ。


 ニーナは僕に言葉と文字もどんどん教えてくれるようになった。

 夕食を食べ終わると、後ろから抱きしめられながら、いっしょに食器を洗う。そのあと毎日彼女と一緒に絵本と紙をつかって、言葉の勉強をする。僕は、早く彼女の言ってることがわかるようになりたくて、彼女が出かけているときに何度もそれを繰り返している。


 ある日、彼女の銀色の髪をとかし終わると、彼女は僕の手の平を上に向けさせて、そこに金色のコインをのせてくれた。僕はそれがお金だと教わっていた。でも、彼女の意図がわからずに、なんだろうと思って彼女の青い目を見返した。すると、彼女は僕の手をやさしく包んでお金を握らせてくる。それで僕は、それを僕にくれるのだろうと気が付いた。


 その日から、ニーナは僕に毎日少しお金をくれるようになった。僕は、お金がほしくてやっているわけじゃなかったけれど、とてもうれしかった。ニーナが僕のやっていることを、喜んでくれているのだと伝えたいのだと思ったから。


 ニーナと外出することも多くなって、あの市場にも何回か行っていた。ニーナとデートするのはとても楽しい。僕は彼女の手を引いて、何か買うわけでもないけれど店をのぞいて彼女に覚えたての言葉で話しかけたりする。すると、彼女は笑ってくれる。ときどき食べ物をかってくれて、それを二人でたべて歩いた。


 あの青い石はまだ同じ場所にあった。何回か見るうちに僕はそのうち、それがいくらするのかを知った。ニーナに文字とお金を教わっていて、値段が書かれた紙の上に乗せられているのに気が付いたから。

 今日、市場に行ったときまだ残っていて僕は喜んだ。やっとお金がたまっていたから。僕はいそいで小さな袋からお金を渡して青い石を受け取った。ニーナに隠すことを忘れていたけれど、彼女は特に何もいわなかったから大丈夫そう。


 こちらで初めての買いものだったけれどちゃんと買えたことが、なんでもないことのはずなのに嬉しかった。それに、今日どうしてもこの石が欲しかったから……

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ