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後日談4 ◆

 その日はニーナは休みだったので、僕たちはゆっくり起きだした。


 僕はニーナが起きると一緒にベッドから出るようになった。彼女が朝食を作るのを一緒に手伝うためだ。ゆっくり眠れなくなるけれど、その分彼女と一緒にいられる時間が増えるから、全く嫌ではなかった。


 ニーナが丸いフライパンのような――というより、フライパンそのものに見える――ものに油らしきものをひいて朝食の肉と卵を焼き始めた。


 こちらでも、料理するときに使うコンロのような道具がある。

 まな板のような固そうな板の真ん中に黒い石がついていて、それにいつもの緑の石を近づけると火が出てくるようになっているみたいだけど、どういった仕組みかはよくわからない。


 火の調整をする道具は別にあって、両端に石がはめこまれた細い棒でしていた。それを板の黒い石に近づけると火が大きくなったり小さくなったりしていた。僕は自分では、火をつけて止めるまでしかやったことがなくて、その棒の詳しいことはわからない。最初は不思議だったけど、しばらくするとすぐに見慣れてしまった。


 僕は、料理をしているニーナの隣に立って、ときどき彼女を盗み見る。

 ニーナは火をつかう時は、銀色の長い髪をポニーテールにして後ろでまとめていた。何回も見ているはずなのに、いつも僕はその彼女が新鮮に感じて、彼女から目が離せなくなる。


 火の勢いが強いときは、ニーナは汗をかいていることがある。僕が手ぬぐい両手に乗せてさしだすと、彼女は料理をする手を止めて、体をまげてそれに顔をおしつけてくる。すると、彼女の白い首をすぐ近くで見下ろすようになってしまう。僕は、見ていけない気がしておちつかなくなって、でも目がはなせなくて……。ニーナが料理をしているときは、僕は特に手伝うことがなくても、彼女の隣から離れたくなくなってしまった。


 朝食を一緒に食べおわると、ニーナは青い石のついた服を渡してきた。この服はニーナの家に来た日に着ていたもので、それから一度も着たことがなかった。それに着替えると、彼女も着替えてフードつきの上着を片手に持っていた。だから、今日は外出なのかなと予想できた。


 外に出てると、門のところに馬車がとまっていた。ニーナに手を引かれてそれに乗りこむと、着いた場所は、なんだか大きい建物がいくつかならんだところだった。そのうち一つの建物の前で馬車はとまって、降りると、金髪の迫力ある女の人が僕たちを出迎えていた。その人の顔は、眉が太くて、顔のパーツがいちいち大きくて、すごい迫力で少し怖い。その前のニーナの休みに家に来ていたので、僕は実はそんなに怖くなさそうだと知っていたけれど。


 その建物の一室につれていかれて、そこにいた男の人に僕は何か調べてられていたようだった。いろいろされたのだけれど、ちょっと長くて僕は疲れてしまった。この世界にも健康診断はあるのだろうか。少し不安だったけれど、ニーナがそばにいたので、たぶん大丈夫だろうと思えた。


 そこでの用事はそれだけだったようで、終わるとまた馬車に乗って家に戻った。

 途中、一度馬車がとまって、ニーナに手を引かれて下りた。道の両脇にそって、大きな布で場所とりをして、そこに物を並べている人がずらっと並んでいた。道には人がたくさんいて賑わっていた。道に立っている女の人が、道のわきの人から、丸い果物のみたいなものを受けとって、かわりに片手で何かを渡していた。どうやら物を買っているみたいで、そういう光景があちこち見られて、どうやら市場みたいなところみたいだ。


 彼女が僕の手を引いて歩き出すと、ある露店で足を止めて布に座っていた人と話しはじめた。何か買っているようだ。僕は、ふと隣の露店に目をやった。親指くらいの大きさのきれいな青い石が置いてあって、ニーナの目のように見えて気になったからだ。それをじっと見ていると、ニーナにつないでいた手を引かれた。


 彼女は薄いパンのようなものを買っていたようだった。

 ニーナと僕はそれを二人で分けて食べながら歩いた。ちょっと固いホットケーキみたいなそれは、なにもかかっていないのに甘い味がして美味しかった。彼女が自分のかじったところを差し出してきたので、何ともないふりをするのが大変で……。そのあとから味はよくわからなくなってしまった。


 しばらくすると、もとの馬車のところに戻ってきていた。

 ニーナとそうして歩いた時間はそんなに長くなかったと思うけれど、僕は彼女とデートできたようで、とても楽しくて、ずいぶんはしゃいでしまった。

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