後日談1 ◆
あの日から僕とニーナはもっと仲良しになった。
僕がニーナに気持ちをつたえると、彼女は僕をやさしく抱きしめて、僕の気持ちを受けとってくれた。
とても大きな月がでていて、夜なのにニーナの銀色の髪がきらきら光ってまぶしくみえた。そして、彼女は月よりも、もっとずっときれいで……。彼女に抱きしめられて名前を何度も呼ばれると、彼女の気持ちがつたわってきて、僕も気持ちを伝えたくて何度もニーナの名前を呼んだ。あのときの馬車の中と同じで、それだけで彼女の気持ちが伝わってきて、でもあの時よりずっと苦しくて……。そして、彼女は僕の顔にきれいな手をあてて、きれいな顔を近づけてくれて……。そのあとも何度も、やさしく――――
ニーナは、そんなに多くはないけれど前よりは、よく笑ってくれるようになった。それまでも、おはようやおかえりを言うと笑ってくれていた。けれど、何も言わなくても、いつの間にか僕を見て微笑んでくれるようになった。僕は、それがとてもうれしくてずっとみていたいけれど、彼女はときどきしかそれを見せてくれない。それが少し残念で、僕はその笑顔がとても見たくて、彼女のことを盗み見てしまう癖がついてしまった。
ニーナが仕事に行っていても、寂しく感じることはなくなった。かわりに彼女のことを考える時間が増えてしまった。ニーナが仕事の時は、僕はいつもの大きな岩の下に座って、ニーナのことばかり考えている。
帰ってきたらおかえりを言おう。そうしたらきっと笑ってくれる、一緒に夕飯を食べたら、一緒に後片付けをできるはず。また後ろから抱きしめてくれるだろうか。彼女の体にこっそり自分の体をくっつけに行きそうになるのを我慢しないと。それから、それから―――――
寝る前に、僕はいつものようにニーナの髪をさわらせてもらう。彼女の濡れた髪は、いつも暖かくて触れているだけで手があつくなってしまう。彼女は僕の好きにさせてくれて、でも僕は夢中になってしまっていて、彼女に手を取られるまで時間を忘れてしまう。
ニーナが僕をやさしくベッドに寝かせていつものように手を握ってくれる。僕は、いつも寝てしまうまで彼女の青い眼をずっと見ている。でも、その日はまた丸い月が出ていて、あの夜のことを思い出してしまって、彼女の唇から目が離せなくなってしまって……。
するとニーナは僕の視線に気づいたようで、僕の眼を見る。僕はあわてて目をあっちこっちそらしてしまった。でも、やさしい彼女は僕のしてほしいことを分かってくれて……。
ひんやりとした手を僕の顔にあてると、青い眼で僕の眼をみながら顔を近づけてくる。僕はそれが分かって、とても緊張して恥ずかしくて、眼を閉じてしまった。でも、そのせいでニーナの息と柔らかさが、もっとはっきり分かってしまって…………。
ニーナが次の日も仕事があるのはわかってたから、僕は早く寝ないといけないのはわかってた。でも、僕は体が熱くなって、もう一度してほしくて仕方がなくて、彼女から眼を離せなかった。するとニーナが笑ってくれて、そして――――
僕は体の熱があがりすぎて頭がぼうっとしてしまって、よく覚えてないうちにいつのまにか寝てしまったのが残念だった。