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 ヴェルニーナとシンが二人で食事を楽しんでいるのと同じころ。


 テオの街の繁華街の一角にある、そこそこ評判の酒場では別の男女が食事をしていた。

 男の名はジェイク、女の名はディーネといった。


 二人はすでに食事を終えて、今は仕事の疲れをそれぞれの好みの酒で癒しているところであった。ジェイクはややぬるくなった金属製のジョッキをあおりながら身を乗り出すようにした。


「ところで、面白そうな話をしいれたぞ」


 わざとらしく声の調子をおとしてひそひそとジェイクが話題をふった。ディーネはすこし上気した顔を傾けて太い眉をひそめる。


「聞かないほうがいい気がする」

「そういうなよ。おどろくぜ」


 もったい付けた男のいいぶりに、ディーネは男をじとっと見ながら、肘をついて手首だけでグラスを振り先を促した。


「ヴェルニーナがまた奴隷を買ったらしい」

「え!」

「な?面白いだろ」


 おどろいた様子のディーネに満足げに眉をくいっと動かして男はいう。

 ちっとも面白くないわよ、と彼女は思ったがたしかに聞き捨てならない話であった。


「サーリアはしってるの……っていまジュネの街か」

「そうだな、ちょっと長引いてるらしいから戻ってくるのはまだかかるんじゃねーか」


 いろいろとまめなジェイクは情報通だった。

 前回のヴェルニーナに起こったことの顛末を把握している二人であったが、またヴェルニーナが奴隷を買ったのは予想外であった。


「で、ヴェルニーナのことだが、呼び出して話きいてみようぜ」

「面白半分に首をつっこむ話じゃないでしょ」


 眉をいからせてディーネはジェイクをいさめる。


「別にからかうわけじゃねーよ。酒のみながら話きくだけだ。心配だろ?」

「それはそうだけど……」

「サーリアがいればそっちに振るんだがな。まだしばらくかかるだろうし、困ってたらお前が助けてやれよ」


 ディーネは迷いつつも、一度確認する程度ならいいかと思いつつあった。二人はヴェルニーナの数少ない友人であり、ジェイクも一応気にかけている様子だった。


「まあそれくらいなら」

「よし。じゃあちょっと予定合わせてみるわ」

「ほんとに話きくだけよ。ぜったいに余計なことはしないでね」

「わかってるって。俺にまかせたまえ」


 軽い調子で安請おいするジェイクに、ディーネは大丈夫だろうかと不安をおぼえつつも反対まではしなかった。

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