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300年引きこもり、作り続けてしまった骨董品《魔導具》が、軒並みチート級の魔導具だった件  作者: 空地 大乃
第一章 フォード領編

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第九十六話 悪魔のガイアク

「よっしゃいくぜ!」

「アンジェリーク参る!」


 アンジェとハザンが飛び出し、迫る触手が二人の光り輝く刃で切り裂かれていく。ハザンも弾で属性を切り替えたな。あの属性は悪魔には効果的だ。触手もボトボトと切断され落ちていく。


 私もマイフルで応戦する。光の帯は途中で拡散し数十本の触手が灰燼に帰した。メイもやはり魔法を行使。両手に光輪を出現させ投げつけて触手が切り刻まれていく。なんというか触手に対して徹底して切り刻んでいる気もするが……。


 勿論攻撃は触手だけに行っているのではない。私の魔弾は触手を貫通しながら本体にも風穴を空け続けている。


 メイの魔法も本体にダメージを与えていた。だが、妙だな。何かがおかしい……。


「チッ、埒が明かねぇぜ。兄弟! 俺が直接ぶった斬ってやる!」

「待て、一人で突っ込むのは危険だ」

「おっと、貴女に心配されるとは。だがそれが寧ろ俺の力になる!」


 アンジェの制止も聞かずハザンは突き進み迫りくる触手を排除しながら本体に近づいていく。


「お、おお。凄まじいなあの男は」

「新しい装備を与えたからな。だが、さっきからあの男は一体何を言ってるんだかな」

「相変わらず御主人様は鈍いですね」

「はい?」


 メイがため息まじりにそんなことを言った。それこそ一体何の話なのか。


 しかし、ハザンも妙に張り切っているな。触手の数は多く、時折捌ききれず口のように開いた触手がハザンに噛み付いてくるが障壁を上手く使ってそれらを寄せ付けない。


 大したものだ完全にあの装備を使いこなしている。今回は私も無茶だと止めたりせず、あの身体能力を信じた。


「ウォオオオラァアアアァア!」

「す、凄いあんな武器は初めてだ」

「うむ。私の指導でアレクトが作成した剣だ」

「御主人様の鼻が随分と伸びてます」


 アンジェが驚いているので答えたんだが、メイ別に鼻など伸びてないぞ!


 ちなみにハザンに驚いているがアンジェの腕もかなりのものだ。ハザンが捌けなかった触手はアンジェが後ろでカバーしている。


 そしてハザンが光の刃を更に伸長させ、ガイアク本体を一刀両断にした。おお、恐らくクリティカルを発動する魔弾も併用したな。通常の強化より威力の高い一撃を放つ魔弾だ。


 しかし、あそこまで伸ばすか。特に限界を教えたわけでもないが、ハザンは完全に感覚で物事を捉えるタイプだな。


「やったぜ兄弟! 貴女も見ていてくれましたか?」

「え、あ、あぁ。凄まじい威力だな」


 ハザンが私とアンジェに聞いてきた。なんでアンジェに聞く時いちいち頬が赤いんだ。


「あぁ、よく倒したもの――いやまだだ!」

「何だって?」


 とりあえずハザンの力を認め答えたが、異変に気が付き注意を促す。


 ハザンが首を傾げたその背後で、両断された肉体が再び合わさり再生するガイアクの姿。そうか、違和感の正体がわかった。こいつ――


「お、おいおい。まだくたばってなかったのかよ」

『グォオオォオオォオ!』


 伸びた触手の先にこれまでより更に大きな口が現出した。ハザンに食らいつくつもりか? いや、触手が何かを吸い上げるように膨らんでいる。かと思えば先端の口からドロリとした液体を吐き出した。


「チッ、こんなもの障壁で――」

「駄目だハザン! それは避けろ!」

「なッ!?」


 私の声に反応し、ハザンがとっさに横に飛ぶ。ターゲットを見失った液体はそのまま地面に浴びせられ、一直線に地面が溶け割れ目のような穴が出来上がった。


「ひぇ、なんだこれは?」

「溶解液だハザン、とにかく一旦戻れ」

「わ、わかったぜ兄弟」


 ハザンが疾駆しこちらに戻ってくる。しかし危なかったな。ハザンの鎧に発生する障壁は一瞬のものだ。あの手の液体は残るから例え防げても障壁が解けた瞬間に液を浴びることになる。


「ハザン触手が追いかけてきてるぞ!」

「おいおい、まじかよ糞が!」


 アンジェが叫びハザンが剣を伸ばして触手を切った。だがそれがいけなかった。アイツさっきと違って触手に常に溶解液を満たしている。つまり切った瞬間に吹き出した溶解液がハザンを襲った。


「危ない――」

「メイさん!」


 しかしそのハザンを救ったのはメイだった。地面を蹴りハザンの頭上に飛び出し自ら盾となって溶解液を浴びたのだ。アンジェの叫び声、ハザンも動揺していた。


「そ、そんな俺の代わりに、彼女が、畜生なんでだ畜生! こんなことで犠牲になるなんて!」

「……勝手に殺さないでもらえますか?」

「へ?」


 全くハザンも慌てものだな。メイとて何の考えもなしに飛び出したわけじゃない。何せ私の創ったメイド型ゴーレムのメイドロイドだ。


 普通の人間ならひとたまりもない溶解液もメイなら全く問題ない。溶解液を浴びてしゅ~しゅ~と煙に包まれているが、煙が晴れたときには五体満足な、うん? 煙?


「私なら大丈夫です。ご安心を」

「おお、流石メイさんだ、無事に、うぉおおおぉおおおおお!」

「な、め、メイ! 待て待て! 服、服!」

「服?」


 くっ、なんてことだ。うっかりしてたが例えメイ自身が無事でも服は別なのだ! あのメイド服はそんな特別なものでもない! だから溶けて煙を上げた。


「子どもには目に毒では」

「うぉ!」


 そしてアンジェが私の両目を手で塞いできた。


「おお、こ、これは何だ女神か?」

「ていっ!」

「ぐやぁぁああぁあああ! 目がぁあああァ! 目がぁああぁああァ!」


 ハザンの叫び声が聞こえた。アンジェの手で見えないが、ハザンは何だ? 目をやられたのか?


「御主人様」

「あ、安心しろ! 私は見てないぞ!」

「はい。しっかり塞ぎました!」


 メイは確かに私が創ったが精巧に作りすぎたからかその体は人の女性と変わらない。それどころか考えうる限り最高のボディを構築したつもりだ。例えアンジェがいなかったとしても恥ずかしくて目を開けてられなかっただろうな。


「御主人様なら見られてもいいのですが」

「い、いや! 私はそういうのは教育のためにもいかんと思うぞ!」


 アンジェが慌てたように叫ぶ。いや、教育って……


「め、メイとにかくこれを!」


 私は替えのメイド服を腕輪から取り出した。


『グォオオオオオオ! 女ーーーー!』


 すると今度はガイアクの声が聞こえた。しまったメイの体に興奮を覚えたのか!


「メイ、早く着替えるんだ! あいつは興奮している!」

「な、なんてスケベな化物だ」

「もう着替えました。そして触手が襲ってきてますが、問題ありません」


 もう着替えたのか。アンジェの呆れた声も聞こえたが、私が目を開けると、触手を魔法で切り刻むメイの姿。溶解液が掛からない距離からしっかり処理している。


「うぅ、全く目潰しとはな。だがそれも悪くない!」

「お前、何を言ってるんだ?」


 よくわからんが、とにかくハザンは無事なようだ。


「全くこれだから男というものは……」

「え? い、いやこれは違うんだ! た、確かについだが本能みたいなもので! 勿論そこに貴女の裸があったら寧ろ俺はそっちを!」

「お前は何を言ってるんだ?」


 ハザンがわけのわからんことを言っている。アンジェが少し引いてるぞ。


「それにしても――あの液体を浴びても無事とは……一体何者……」


 アンジェが何か一人呟いているな。メイの丈夫さに驚いているのは何となくわかるが。


「ところで兄弟。あれは一体どうなってんだ? 一刀両断にしたってのによ」

「あぁ、私もうっかりしていたが、あれは再生特化型だ」

「再生特化型?」

「自己再生能力が異様に高い悪魔のことです」


 そうメイの言う通り、ガイアクが化した悪魔は例え負傷してもすぐに再生するようなタイプだ。まぁ面倒なタイプだな。


「再生能力が高いって、そんなの倒せるのか?」

「あぁ問題ない。むしろ好都合だ」

「好都合?」


 ハザンの問いかけに答えると、アンジェがどういうことなのか? といった顔を見せた。


「あぁ、あいつは再生に特化している分、他が弱い。本体の動きも鈍く自分では殆ど動かず触手頼みだ。それに攻撃も単純だ。触手を伸ばすか叫んでの衝撃波、あとは溶解液ぐらいだ」


 ついでに言えば魔法も使ってこない。知性も弱い証拠だ。


「なるほど――ですが再生だけでも厄介では?」」


 アンジェが眉を寄せ聞いてきた。再生する相手を倒せるのか? と単純な疑問を抱いたのだろう。


「再生と言っても不死身じゃないさ。確かに再生に特化はしているが、こっちはそれを上回る攻撃で消し去ればいい」

「おいおいそんな事出来るのか?」

「可能だ。倒すだけならいくらでも手はある」


 ハザンが目を丸くさせている。再生を上回ると聞いて簡単ではないと思ったのだろう。


「勿論、だからといって何でもいいってこともない。一番簡単なのは戦略兵器級の魔導具でこの辺り一帯をふっとばすことだが」

「何か恐ろしいことを言っているぞ!」


 アンジェがギョッと目を見開き叫ぶ。まぁ勿論私とてこれが最善策とは思っていない。


「流石にこのあたり一帯を吹っ飛ばすのは考えてないから安心したまえ。奴を倒す代わりに土地が使い物にならなくなっては意味がないだろう?」

「正直今の手段は冗談だと思いたいが、確かにそれは困る」


 アンジェが眉を顰め答えた。本当に吹っ飛ばせるかどうかについては半信半疑なようだな。まぁそれは実際可能だがややこしいことになりそうだし、これ以上言わないでおこう。


「まぁ、今ある武器とメイの魔法の組み合わせで十分だろう。私はマイフルの最大出力で発射する。メイは聖魔法だ」

「私は何かあるかな?」

「俺は、俺にも何か出来ることあるか?」


 アンジェとハザンが聞いてきた。


「アンジェはここからの攻撃は可能か?」

「魔力込めればある程度斬撃を飛ばせる」

「すげぇぜ! 流石だ!」


 ハザンがアンジェをやたらと持ち上げている。しかし何気ないようで結構凄いかもな。


「それならアンジェもここから斬撃を飛ばして欲しい」

「兄弟俺には何か無いのか! かっこよいなにか!」


 ハザンが鼻息を荒くさせた。いや格好よくって……


「出来るどころかハザンはかなり重要だぞ。もう一度さっきの魔弾を使え。そしてロウのマイフを圧縮して放つんだ」

「は? 圧縮して、放つ? 何だそれ? どうやるんだ?」

「それはな」

「それは?」

「気合だ。気合を入れて相手に光の剣を打ち込む気持ちで放つんだ」


 私はハザンにそう説明した。かなり無茶な言い方にも思えるが。


「そうか気合か! それなら任せとけ兄弟!」


 うむ、どうやら理解したようだ。ハザンはやはり細かく説明するよりこれぐらいで感覚的に理解させるのが早いな。


「よし行くぞ! 全員構えろ!」

「おう!」

「わかった!」

「はい、御主人様――」


 私はマイフルを構え、ロウの魔弾を最大出力で放つ。


「うぉらぁあ! サウザークリティカル!」

「ホーリーイレイザー――」

「え? えっと、こ、光斬撃!」

『グォオオオォオオオオ!』


 そしてハザンの剣から光線が、アンジェも光の斬撃を飛ばした。そして何故か照れくさそうだ。皆に合わせて技名を叫ばないといけないって気持ちになったのかもしれないが、そもそもサウザークリティカルってなんだよ。


 そしてメイの魔法でも光の波動が一直線に飛んでいき、そこに私の魔弾が連なった。私達の攻撃が重なるのとほぼ同時にガイアクもこれまでで最大量の触手を伸ばしてきた。まるで津波のように迫る。


 だが私達の放った光線は絡み合うように融合し、触手の波を凌ぐ程の巨大な光の帯となり触手とガイアクを一瞬にして呑み込んだ。

 

『グォオォオオ、ソンナ、ソン、ナ、コノ、ワ、タシ、ガ……』


 そして最後にそんな言葉を言い残し、悪魔と化していたガイアクは完全に消滅したのだった――

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