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300年引きこもり、作り続けてしまった骨董品《魔導具》が、軒並みチート級の魔導具だった件  作者: 空地 大乃
第一章 フォード領編

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第九十三話 荒ぶるガイアク

「貴様、この私にこんなことしてただで済むと思っているのか!」

「そうだそうだ! ガイアク様を誰だと心得ている!」

「「「「「「メイ様! どうか私達をもっと虐めてください!」」」」」

「何言ってるのお前ら!?」


 ガイアクとドングラとその他大勢は念の為、縛って一箇所に纏めておいた。すると暫くして目が覚めたわけだが、途端に揃ってわめき出した。そんなズボンを湿らした状態でよく威張れるなこいつも。


 そしてメイにやられたその他大勢は、どうやらメイにやられてなにかに目覚めたらしい。何をしたメイ。


「何を言い出すかと思えば、人を殺そうとしておいてどの口が言う?」

「ふざけるな! 私達は化け物を殺そうとしただけだ!」

「私やハザンにも武器を持って仕掛けてきておいて何を言ってるんだか」

「お前がその化け物を庇ったりするからだ! 何が悪い!」

「おいおい、そりゃ通じない話だぜ。ガイアクよ、あんたが弓で射った時、既にバズは元に戻っていた。普通に話してもいたんだからな」


 ハザンの言うとおりだ。悪魔化しているか人に戻っているかなどひと目見ればわかることだしな。


「だからどうした! そんなものまたいつ、その、悪魔というもんになるかわからんだろうが!」

「貴様と一緒にいない限り大丈夫だ馬鹿」

「な、なな! ば、馬鹿だと! 貴様、よりにもよってこの私を馬鹿だというのか!」

「馬鹿で不満でしたら屑、汚物、塵、蟲以下の吐き気をもよおすほどの下劣な愚か者、どれでもお好きな方で、全部ですかそうですか」

「何も言ってないだろうが!」


 メイも辛辣だな。蔑むような目で汚物を、いやガイアクを見ているし。そしてその他大勢がそんなメイの視線に興奮している。大丈夫かこいつら?


「ふ、ふん、まぁいい。私の屋敷にここまでのことをしておいて、絶対にただでは済まさんからな!」


 ふむ、改めて見てみると、屋敷だった物は黒焦げで見る影もない。完全に全焼している。まぁ自業自得だが。


「しかし、兄弟、実際大丈夫か? こいつ、随分と自信あるようだし町でも大体悪い意味だが有名な奴だぞ?」

「悪い意味はそうだろうな。奴隷の件もそうだが、叩けば埃がいくらでも出そうだしな。そうだろう?」

「ふ、ふざけるな! 私のような清廉潔白な人間を捕まえておいて!」


 凄いな、まさにこの男と真逆の言葉が飛び出てきたぞ。一体どの口が言っているのか。


「ふん、ハザンといったな。お前はどうやらわりと有名な冒険者なようだが、だったら覚悟しておくんだな。私は冒険者ギルドのマスターにも顔が利く。小僧! 貴様もだ! 私はやろうと思えば商業ギルドだって動かせるし、なんなら領主に頼んだっていいのだからな!」


 商業ギルドが今更こんな奴の味方になるとは思えないが……それに領主? 何でここで領主が出てくる?


 領主と言うと私が最初に助けた馬車に乗っていた娘たちが領主の子どもたちであった筈だな。


「とにかく、貴様らが何を言おうと私が罪に問われることはない。むしろ貴様らの方が纏めてひっ捕らえられることになるだろうよ!」

「さて、それはどうでしょうか?」


 強気な姿勢を崩さないガイアクだったが、そこで私もよく知る声が背後から届いた。


「あ! ジャニス様!」

「シーラ、良かった無事だったのですね」

「ジャニス、だと?」

「お久しぶりですねガイアク」


 振り返るとシーラがバズの手を引いてジャニスに駆け寄っていたところだった。

 

 そしてジャニスは兄妹が無事だった事を知り、安堵の表情を浮かべシーラを撫でた。奴隷商だった男だが、奴隷とは言えガイアクのように横暴な真似はせず、奴隷のことをしっかり考えて商売していた男だ。


 だからか奴隷商でありながらも奴隷からの信用は厚く、またもともとそういったカリスマ性があるのだろう。シーラもすっかり懐いているようだ。


「き、貴様! 勝手に人の奴隷に触れるとはどういう了見だ!」


 すると、ガイアクがまたわめき出した。それに眉を顰めるジャニスであり。


「人の奴隷? さて何のことでしょう? シーラはチェスの勝負でエドソン様が引き受けた筈です。もう貴方のものではないでしょう?」

「そんなの私は、私は、糞! 何故否定できん!」


 契約は絶対だからな。奴がどう思おうが受け入れるしかない。


「ジャニス氏、それでバズについては大丈夫かな?」

「はい。勿論シーラと一緒にうちで働いてもらおうとは思ってます。勿論本人がそれを望むならですが」

「え? 僕が働く?」

「そうだよお兄ちゃん! お兄ちゃんも私と一緒にね、奴隷じゃなくて働けるの!」

「ほ、本当に? それなら是非!」

「馬鹿いうな! 何をフザケたことを!」


 妹と一緒に働けると知り喜ぶバズだが、予想はしていたけどな。やはりガイアクが異を唱えてきた。


「そこの餓鬼は私の奴隷だ! 所有物だ! その娘は百歩譲って認めたとしても、そいつは許さん! 絶対にだ!」

「残念ながらそれは通じませんよ」

「何? 貴様何を言っている!」

「そうだ。ガイアク様は何も間違ったことなど言ってないだろう!」

「何も? よくそのような事が言えたものですね。バズの体を見ただけでわかる。これは日常的に暴行を受け続けたことで出来てる傷ですね?」

「それがどうした! そいつは私の物だ! 私が私の物をどうしようと勝手だろうが!」


 こいつ、少しはごまかすかと思ったが、そこは全く悪びれることもなく正直に言うんだな。まぁ本人が当たり前と思っているからなのだろうが。


「愚かしい、本当に愚かしい。だから私は決して貴様とは契約を結ばなかった。奴隷は物じゃない。本来なら最低限の人権も保証されている。意味もなく痛めつけるような行為は当然認められず契約解除の対象となる」

「はっはっは! 馬鹿だな貴様は! そんなものは奴隷を1匹買うのもやっとな貧乏ったらしい連中にだけ適用されることだ。私が幾ら金をつぎ込んだかわかるか? 奴隷1つをとってもそういうことが許されるようになってるんだよ」

「さて、それはどうかな?」

「な、何? なんだ貴様その顔は! 腹立たしい!」


 ふむ、私が指摘すると顔を歪めて怒鳴り散らしてきたな。


「メイ、今、私はどんな顔をしているのだ?」

「とても悪い顔をしております」

「はは、そうか」


 ま、こんな相手だからな。こっちも多少は悪くならないとやってられん。


「ガイアク、お前がどう思っているか知らないが、もう貴様は終わりだ。そろそろ来る頃だろうしな」

「来るころ、だと?」

「「「「これは、一体どうなっているんだ?」」」」


 おっと、ジャニスも言っていたがいよいよやってきたようだな。振り返ると数人の兵の姿。全員シドの町からやってきた兵だ。


「貴方はエドソン殿。やはり貴方が関わっていたのですか……」

 

 そしてこれは驚いた。ハリソン家に仕えている麗騎士アンジェリークも一緒だった。


「これは、屋敷が跡形もないな……」

「うっ!?」


 アンジェリークが屋敷をマジマジと見つめながら怪訝な顔を見せる。それはそれとして、何かハザンが妙な反応を見せてるな。


「おお! よく来てくれた!」

「うん? そこに縛られているのは?」


 アンジェリークが目を向けるとガイアクがまるで砂漠でオアシスを見つけたかのように顔を綻ばせた。


「そう、私だ! ガイアクだ! 良かった助けに来てくれたんだな! 早く解放してくれ、そしてその連中を捕まえろ! 私にこんな真似をしたのはそいつらだ!」

「そうだ! そこの餓鬼とあと、そのハザンという冒険者もだ! 後メイドも!」

「「「「「「いえいえメイドはご褒美です」」」」」」

「この馬鹿!」


 やれやれ、ガイアクやドングラが囀りだしたな。その他大勢は、まぁこいつらはいいか。


「ふむ、これをエドソンたちが?」

「そうだ! その連中だ! その連中が我々を縛ったのだ!」

「こう言っているが本当ですか?」

「あぁ、暴れたり逃げられたら厄介だと思ってな」


 アンジェリークに問われたがそれについては素直に答えた。それを聞いて何が嬉しいのかガイアクが醜悪な笑みを浮かべて叫んだ。


「は、認めおったぞ! 馬鹿め! 何が逃げるだ、私に逃げる理由などないぞ!」

「なるほど。それはそれは、ご協力感謝する」

「そうだ! ご協力感謝、は? ご協力?」


 アンジェリークがうなずき、私にお礼を述べてきた。ガイアクがまるで勝ったかのように浮かれているが、アンジェリークの様子に表情を一変させた。何がなんだかわかってないのだろうがな。


 そして衛兵たちが縛られているガイアク達に近づいていき厳しい顔つきで口を開いた。


「ガイアクだな?」

 

 アンジェリークがガイアクの前に立ち険しい目つきで問いかける。ガイアクは目を白黒させてそれに答えた。


「そ、そうだが、貴様、一体何を言っているのだ? 協力? 意味がわからんぞ!」

「残念だが領主である伯爵からのご指示でもある。ガイアク、貴様には所得隠し、奴隷に対する不当な暴行、奴隷殺しその他諸々の容疑が掛けられている。ドングラやそこに縛られている連中もそれに関与した疑いありだ。よって、これより貴様らを連行する」

「……は?」

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