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300年引きこもり、作り続けてしまった骨董品《魔導具》が、軒並みチート級の魔導具だった件  作者: 空地 大乃
第一章 フォード領編

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第八十七話 チェスと仕掛け

いつも感想や誤字脱字報告を頂きありがとうございます!

 書面は交わした。後はチェスで勝つまでだがその前にだ。


「これでいいな? それでは早速勝負を開始と」

「待て、その前に一度チェスの駒となる奴隷をチェックさせてくれ」

「……チェックだと?」

「お前、いい加減無礼が過ぎるぞ! 大体あの首輪はうち専属の商人が調整したんだ。何の問題もない!」


 私を怒鳴りながら、チラチラとドイルがガイアクの顔色を窺っている。少しでもチャンスがあれば勝負を止めさせようとでも思っているのだろう。諦めの悪いやつだ。


「誰だろうと関係ない。こっちだって大切なメイドが掛かっているんだ。私は慎重だと言っているだろう? 駒は勿論だがマス目にしてもしっかり見ておきたいのさ」

「……ふん、わかった。好きにするといいさ。だが私はゲームに関してはいつでも真剣だ。不正なんてわざわざ楽しみを損ねるような真似してたまるか」


 やはり不機嫌そうではあったが、許可は得た。これで堂々と奴隷を見て回れる。


 私は中庭に下りて、メイと二手に分かれて奴隷たちを見て回った。マス目を見ると言った手前もあるので形だけでもそれもチェックするが、勿論私は本気で不正を疑ったわけではない。


 そもそもこんな大きなチェスで不正なんてしてもすぐわかるしな。それにあの男は私が用意したチェストラテジーにしても負けていても投げ出さず最後までプレイをした。ゲームに関しては真剣なのは確かなのだろう。


 尤もこのチェスに関してはプレイすること自体、褒められたものではないが。

 とにかく、私は駒となった奴隷をチェックしていく。一応ガイアクとドイルも下りてきて私たちの動向をチェックしているが、それでも問題ない。


 あの2人に気づかれず仕込むことぐらい私とメイなら容易い。奴隷は誰もが諦めたような目をしており、瞳に光を感じない。男だけではなく女のしかもまだ若い少女も混じっていた。

 

 全く本当に悪趣味だな。ただ1人だけどこか呆然とした様子を見せていた。この男、さっき七変化の小人たち(セブンチェンジドール)に回復させた男だな。


 きっといつの間にか怪我が治っていたから驚いているんだろう。あまり派手に騒いだりしないのは、それをやっても碌なことにならないとわかっているからなのかもしれない。


 ガイアクは男の変化に気がついていない。だが気がついたら何を言い出すかわからないしな。


「ご主人様、こちらは確認が終わりました」

「こっちもだ。問題なさそうだな」

「当たり前だ。私のやることに間違いなんてない」

「どうやら気が済んだようだな。ならば戻って早速ゲームだ」

 

 ドイルが自信たっぷりに言いのけ、ガイアクに促され私とメイは2階のバルコニーに向かった。


「さて、始めるか先行は譲ってやろう」

「いいのか?」

「構わんさ。年が上の分余裕をもたなくてはな」


 チェスは先行がかなり有利になる。それを取れた時点でかなりのアドバンテージを得たと言えるか。

 

 尤も私にとって大事なのはそこではないがな。さて駒を進めていき、相手が色々と細かい細工をしているのがわかる。なので最初にそれに乗りつつ、相手のポーンに攻撃を仕掛けるときが来た。


(聞こえるか?)


 そこで私は魔導具を使って攻撃を受けるポーンに念を飛ばした。すると相手がキョロキョロしだしたので落ち着けと宥め。


(無事ゲームを乗り切りたければ反応せず声だけ聞いておいてくれ。さっきお前たちを確認した時、私は1つ仕掛けを施した。結論だけ言うがその仕掛けでお前たちは一切ダメージは受けない。ただし演出で出血のような物は出る。ただしあくまで演出だ。だから攻撃を受けたら痛がるふりだけはしておけ。いいな? 痛がるふりだぞ?)


 そして私は攻撃の行方を見守った。案の定剣があたり派手に出血が飛び散った。勿論あの血は本物ではないがな。


 私とメイは奴隷をチェックした時相手に気づかれないようシールを貼った。マジックシールという魔導具で、このシールには単純な魔法の効果を乗せることが出来る。


 そしてこのシールに込められたのは相手の攻撃を防ぐ障壁。そして血飛沫を上げるという演出だ。勿論この血は本人のものではないがな。シールは小さく貼った後は不可視にできるから見つかることはない。そしてこのシールは効果が発動すると自然消滅する。つまり使い捨てだが、チェスの性質上一度だけ守ることが出来ればそれで事足りる。


 さて、後はやられた方の演技力だが……。


「あ、血、血が! ひ、ひぎいいいぃいいいい! いてぇ、いてぇよぉおおお! いってぇぇええよぉおおおお!」


 アチャーと思わず顔を手で覆った。くっ、流石にあれは大げさすぎだ。あんな今にも死にそうな演技は流石に怪しまれるか?


「ぶっはっは! いいぞ! それでこそこのチェスの醍醐味だ! はは、どうだ? あれこそが真のリアルよ。確かにお前の作った魔導具は面白い。だが、この血湧き肉躍るリアルな戦いには及ばないものもある。見ろ! 奴隷があんなにのたうち回っているぞ! あはは、いいぞもっと呻け! 叫べ! 泣け!」


 ……えぇ~。いや、こいつが嗜虐的でどうしようもない男なのはわかったが、リアルって、あれ演出だし、そもそも相手の演技もけっこうわざとらしくて心配になったほどなんだが……。


 ま、まぁ結果オーライか。


 そしてそれからゲームは進み、次第にガイアク側の方が優勢になってきたように、そう思える展開になったわけだが。


「死ぬ~おかあちゃーん」

「いった! これいった!」

「あいった~」

「あいった~」

「あいった~」


 こんな感じで、ま、まぁ急だったし仕方ないかも知れないが、何とも微妙な演技で倒れる駒が続出した。しかし最後の方あいった~だけで済ませ始めてるし、手を抜きすぎだ。注意をしておかないと。


 とは言え、ガイアクは手を叩いて喜んでいる。自分が有利なのも大きいか。それで上機嫌なんだろう。


 ここは作戦通りだ。下手に私が有利に進むと、下手な演技の方に目がいってしまうかもしれない。


「ふふ、いやしかし、ここまで来たらもう私の勝ちも同然だな。確かにメイドと引き分けたことがあるだけに多少はやるようだが、私の敵ではなかったようだ」


 勝ち誇ったようにガイアクが言う。やはりメイと引き分けたというのを聞いて負けるわけ無いと判断したのか。メイドにも勝てないようじゃ私の相手ではないとそう踏んだのだろう。


「さて、私の予想ではあと10手もあれば、お前をチェックメイト出来る。約束は覚えているかな? その自慢のメイドとも今の内にお別れを済ませておいた方がいいかもしれんぞ?」

「……勝負は最後までわからないさ。それより、お主の方こそ約束は忘れていないだろうな?」

「はは、勿論だとも。まぁここから逆転出来るとは思えないが、その時はリボンでもつけて奴隷を明け渡すさ」


 そして――そこから10手目が訪れたわけだが。


「ぐ、ぐぬぬ、ぐぅううぅうう!」

「いくら考えても同じことだ。チェックメイト――私の勝ちだな」


 私の目の前には歯ぎしりをし悔しがるガイアクの姿があった。何せ宣言した10手目に逆に負けが確定したのだからな。


「まさかあの局面から10手で逆転なさるとは……このフレンズの目を持ってしても読みきれませんでしたぞ!」

「信じられない……真剣勝負に置いて負け無しと言われたガイアク卿が、こんな子どもに――」


 フレンズには感嘆され、ドイルは信じられないような目を向けていた。そしてガイアクは往生際悪く中庭に出来た盤面をチェックし続けているが結果が変わることはない。


 だがこれも当然と言えた。ガイアクはメイに引き分ける程度と思ったのかも知れないが、メイは私が造った自慢のメイドロイドだ。頭の出来は人間と比べ物にならない。いや、あらゆる種族を集結させてもメイの頭脳には決して勝てないだろう。


 そんなメイはチェス1つとってもその強さは圧倒的だ。何せメイは瞬きしている間に100京オーバーの手を読むことが出来る。だからこそメイは引き分けたことのある私なら勝てると信じて疑わなかったのだろう。


 とにかく、これで勝負には勝ったわけであり。


「さて、約束は覚えていると思うが、しっかりあの奴隷たちを引き渡してもらおうかな。おっとリボンに関してはつけなくてもいいぞ。サービスだ」

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