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300年引きこもり、作り続けてしまった骨董品《魔導具》が、軒並みチート級の魔導具だった件  作者: 空地 大乃
第一章 フォード領編

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第八十五話 予定外の結果

いつも誤字脱字報告や感想を頂きありがとうございます!

「クソ負けた!」

「はは、勝ってしまいました……」

「フレンズ、お前、空気読めよ――」

「ふむ、私は2位だな」


 ゲームが終わった。終わったのだが……なんというか、フレンズと私で1位と2位になってしまった。ちなみにドイルは3位、つまり肝心のガイアクはビリだ。空気読めと言ってるわりにお前もしっかり3位は死守してるじゃないか。


 しかし、自分で作っておいてなんだが、これは中々熱中度が高い。やってるとついつい熱くなってしまう。


「……ドイル、貴様、途中で私を裏切ったな?」

「い、いやいや! あれは戦略的撤退というもので決してガイアク卿を裏切ったわけでは!」


 ちなみに途中、ドイルとガイアクが同盟を結び、私を狙ってきたがこちらはこちらでフレンズと協力関係を築いたりで迎え撃ったりした。その結果途中でドイルが戦闘を放棄して逃げ出したわけだが、それを言っているんだろうな。


 まぁとにかく、相手を立てるなんてことも一切なくゲームが終わってしまったな。一応私も少しは遠慮しようと思っていたのだが、フレンズも一緒だろう。だが、終わってみればフレンズの圧勝だった。


 てか作った私が負けた。気にしてないけどな!


「お、お前たちも大人げないぞ! 少しは相手の顔を立てるなりそういう愉しませ方をだな!」

「私はそういう接待プレイみたいな真似は嫌いだ」

「はは、全くですね。いや、本当勝負というのは常に真剣勝負。わざと負けるなんて行為は逆に失礼に当たります」


 見事なまでの二枚舌を披露してくれたなこのドイルも。


「ちなみに先程のプレイにしても当然、真剣勝負と思えばこそ! あの場は裏切り、ガイアク卿の戦力を減ったのを確認してから攻め込んだのです。真剣勝負だからこそ!」

「裏切りはもっと嫌いだ私は!」

「ですよねぇ~勿論知ってましたよ私は。だからこそそんな真似をしたらいくら真剣勝負が信条のガイアク卿でも怒るに違いないと思い、一旦退いて後から助けに参ろうと」

「もういい!」


 語れば語るほど深みにハマってくな。そもそも話に無理があるし。しかし、ガイアクもゲーム自体は楽しんでいたと思うのだが、負けて気分は流石に良くないか。


「……ところで、結果はどうだったかな? 自分で言うのもなんだが、これはかなり画期的なチェスだと思うが」

「な、何を馬鹿な! こんな物で!」

「ドイル殿も随分とハマっていたように見受けられましたが?」

「う、ぐ……」


 フレンズの指摘にドイルが喉を詰まらせた。確かに途中まではブツブツ言っていたが最終的にはノリノリでプレイしていたからな。


「だ、だがこれはどうみてもチェスじゃない! 新しいというよりもはや原型を留めてないではないか!」

「それは特に問題ない。確かにルールも大きく異なるが元のチェスの戦略性をより広げてくれたという意味でもまた最大で4人で楽しめるという点でも実に画期的で斬新なチェスと言えるだろう」


 ガイアクがそう評した。どうやら負けはしたがゲーム自体は正当に評価してくれたようだ。それはそうだろう。一度プレイすればハマることうけあいだからな。


「ではガイアク卿、どちらのチェスが面白かったかについては?」

「うむ、そうだな。双方のチェスについては――どちらとも契約するとしよう。優劣はつけず引き分けだ」

「……は? 引き分けだと?」


 今の流れなら、私のチェスを選ぶだろうと思っていたが、まさか両方とは。フレンズも渋い顔を見せている。


「ひ、引き分けですか?」

「そのとおりだ。だから今後もフレンズ商会ともドイル商会とも取引は続けよう。それが一番ベストな選択だ」

「ま、待て。つまりあの魔導具と言えないようなチェスを契約し今後も続けるということか?」

「当然であろう? それにあれはあれで面白いのだ。確かにお前の用意したチェスも面白かった。画期的であったし、これまでのチェスの常識を覆す素晴らしい代物だ」

「それなら!」

「だけどなぁ。あのチェスには足りないものがあるのだ」


 ガイアクは顎を擦りながらそんなことを言ってのけた。足りないもの? 一体なんだ……いや、確かに細かい点を言えば改良すべき点は出てくるかも知れない。だがあんな悪趣味なチェスに負けるようなことは……。


「それはな、痛みだ」

「……痛みだと?」

「そう。駒が傷つけられた時に見せる苦痛に満ちたリアルな表情! 剣で切った時に流れる血! それはお前の用意したチェスでは味わえん!」

 

 な、そんな理由で、こいつは引き分けにしたというのか……。


「私のチェストラテジーもユニットがやられれば血が流れ、リアクションだって見せるではないか!」

「ふむふむ、確かにあれも見事なものだ。だが。結局は偽物。本物ではない。一方ドイルの用意したチェスで見られる痛みも血も、それらは全て本物だ」


 当たり前だ。そのチェスは駒として人を使ってるのだから傷つけられれば痛みに悶えるし血だって流れる。だが、そんな真似を続けさせたくないからこんな茶番に付き合ったというのに。


「そういうわけだ。ふむ、そう考えたらまたドイルの用意したチェスがやりたくなってきたぞ。また出来るか?」

「そ、それは勿論! すぐにでもプレイ出来るよう準備を」

「待て……」


 ガイアクはまたあのチェスをやる気だ。こいつはどうしようもない奴だ。恐らく私のチェスも楽しむ気だろうが、こいつが奴隷が痛がるのを見て楽しむのは今に始まったことでないのだろう。それをチェスとしてやることで新たな楽しみができた程度に考えているに違いない。


「何だ? まさかまだ自分の用意したチェスが優れているとでも言うつもりか?」

「勿論、私にだって魔導具師としての意地はあるからな。負けたなどとは思っていないが……これまでの話を聞いて逆に興味が湧いた。ドイル商会が用意したというチェス、それほどまでに面白いというのなら私にも試させてくれないか?」

「な! 本気ですかエドソン!?」

「勿論本気だ――」


 口ではこうフレンズに答えたが、目で違う意図があることを示す。フレンズはどうやら何かあると気がついたようで、それ以上は何も言わなかった。


「それはつまり、お前が私の相手をするということか?」

「そうだ。これでも私はチェスを嗜む方でな。うちのメイドにもよく相手してもらった」

「ふん、あの綺麗なメイドか。だが、メイドとプレイした程度でガイアク卿の相手が務まるとは思えんけどな」

「はは、まぁ良いではないか。だが、そうだな。ただチェスをしてもつまらない。どうだ? どうせなら何か賭けないか?」

「賭ける、か。なるほど、それは盛り上がりそうだ」


 これは……願ったり叶ったりだ。まさか向こうから持ちかけてくるとはな。もしそうでなければ私の方から言うところだった。


「……しかし、賭けると言っても何を賭けられるおつもりで?」


 フレンズが問う。そこは私にとっても一番大事なところだ。


「ふむ、それならメイドでどうだ?」

「な、何?」

「どうした? いるのだろう綺麗なメイドというのが。正直金を賭けるなどというゲームは飽き飽きしていてな。どうせならお互い大事なものを賭ける。その方が盛り上がるではないか」

「ちょ、ちょっとお待ちを。その、メイドですか?」


 すると、ドイルが慌てた様子でガイアクに迫った。そういえばこいつもメイに興味を示していたな……。


「勿論本気だとも」

「で、ですがガイアク卿には既に多くのメイドがいますし、敢えてメイドを増やすような真似をなさらなくても」

「はっはっは。問題ないさ。メイドなど幾らいても良い。それに必要ないものは売ればいい」


 ……とことんゲスな考え方をしている男だな。フレンズも困り顔だぞ。奴隷の件があってから険しい顔を見せることが多いところを見るに、奴隷をこんな風に扱っているとは知らなかったようだが。


「しかし、その、確かに普通よりは多少綺麗ですが、よくよく考えたらそこまでではなかったかも……」


 どうやらドイルはメイを賭けさせたくないようだな……勿論そこには別な意図があるのだろうが、しかし、この男に言われると気分は悪い。


 しかし、これは困った。流石にメイがいないところで勝手に決めるわけにはいかない。確かにメイは私が作成したアンドメイドだが、人と変わらない心を持っているし、私も人と思って接している。この男のようにモノ扱いなどしたくないのだ。


 そんなことを考えていたその時だった。


「旦那様、ただいま門の前にそこのエドソン殿のメイドだと名乗る少女がやってきてるのですが――」

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